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新年、「途中を楽しむ」を大事にしたい

中島委員長 教育委員 中島 諒人

 物事を過程(途中)と結果に分けたとき、結果こそが大事であり、途中はあまり大切ではないと考えるのが古い学びの考え方。過程の時間は可能な限り短い方がいい、手段の効率化である。一方現在の学びは、むしろ過程で得られることに価値を置き、結果は必ずしも重視しないという方向に変わって来ている。

 プログラミングが学校教育に加わることが、ちょっとした話題である。IT分野での日本の国家的遅れを回復しGDPを上げるべく、グーグルやアマゾンなどに対抗できるグローバル企業を生むことを目指しての英才教育だ、と考える向きもあるようだ。が、間違っている。プログラミングは学びの道具でしかない。プログラミングを道具として論理的な思考を身につけることに意味がある。

 コンピュータは融通が利かない。やって欲しいことを適切な順序で、明確に伝えなければ、こちらの意図を実行してくれない。私は、ホームページのHTMLのコードを少し書いたり、その昔アップルのパソコンについていたハイパーカードというソフトで遊んだことがある程度である。が、相手(コンピュータ)にわかる言葉で、誤解のないように注文を伝え、それに相手が応答してくれると、相当にうれしいものだ。対話してる感もあるし、もっと他のこともやってみたくなり工夫の意欲も湧く。

 過程を楽しみ、ワクワクしながら工夫ができる。結果だけをただ暗記するのと真逆のこと。安定した状況の中、先例の形で目標があるなら、そこに向けて早く到達するには模倣が一番良い。二番手戦略では速さが重要。今、変化の激しい時代の中では、誰も課題解決のベストの方法がわからない。楽しみながら試行錯誤できる力が、結果的に一番早く成果につながる。

 平成最後の新年にさまざまに語られる国内外の展望を読んだり聞いたりした。困難な見通しばかり。言われていることに異論はない。ただ、私は悲観してはいない。困難だからみんながみんなシュンとして立ち止まるわけではない。困難な課題に向き合う時の方が楽しくなり、燃える者も多い。簡単なことなら誰にでもやれる。無理に見えることだからこそ、我こそはと気合いを入れて挑戦したくなる、そういう人間も多くいる。それは人間が本源的に持っている力で、それがなければアフリカで生まれた人類が、大海を超えて、あるいはより寒い地域へ拡散することはなかったろう。

 過去の日本の教育は、一人ひとりの多様で無限の可能性を伸ばすことよりも、型にはめ込み、限界やほどほど感を教えることの方に力を割いてしまった。それが子どもたちのストレスとなり、いじめの元凶となり、不登校などの原因ともなっている。変わるなら今しかない。ワクワクしながら難しい課題に向き合い、その奮闘の過程を楽しむ力。人間が本来持っているそういう力に栄養を与え、大切に伸ばしていくことが、今の教育で最重要。

 手間のかかる仕事だが、一つの学年が五千人の小さな鳥取でなら、それができるかもしれない。関係者が一人残らず危機感を持ち実践を重ねれば、挑戦は実を結ぶはずだ。他人事のように、一般論のように語っていてはいけない。変化に対応できなかったと歴史に裁かれるのも、新しい道を作ったという偉大な名誉に浴するのも教育に関わる人間だ。

 コラムを読んでくださっているみなさん、新年もともにがんばりましょう。ワクワクしながら、そして楽しみながら。

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