教育委員長職務代行者 松本 美惠子
研修や講演等を聞きますと、そのときにはわかった気がしますが、1週間後には、その内容の半分は思い出せず、更に、1カ月、2カ月立つと、ほぼ忘れ、1年後には、去年何の研修を受けたのか、そのテーマさえ思い出すのに苦労します。年のせいかとがっくりしますが、そのような忘却体験を何度も経験しますと、いやいや年のせいだけではなく、単に聞いただけでは、知識や考え方は真には身につかないものだとわかってきます。
ところが、実際の自分の仕事の中で必要となって調べ、書いてまとめたり、言葉に出し、あるいは人に教えたことは、なかなか忘れたりはしません。それでも、作成した書面を提出し終わるなど仕事が完了したら、そのとき得た知識は、1カ月後には生半可な記憶になってしまい、半年後に読み返したりしたときには、他人が作成した書面のような錯覚に陥ったりすることがあります。どうやら知識や考え方を自分の身となり肉とするには、反復して繰り返すなど、記憶の定着作業をする必要があるようです。
今、アクティブラーニングという授業・講義形式が盛んに言われ、実践されています。いままでの教師、講師による一方通行の講義型ではなく、生徒や聴講者も積極的に考え、議論し、そのことを発表し合い、互いに双方向で切磋琢磨しようという勉強方法です。子供たちに、考える力を身につけさせようとする手法です。しかし、ただアクティブラーニングの手法によって教えたから、より子供たちの学習成果があがると考えるのは早計です。
学習は、その方法如何に拘わらず、そこで学んだことを反復練習し、記憶として自分のものにする定着作業が絶対に必要です。素晴らしい講演を聞いたり、音楽を聴いたりするだけでも、その体験の積み重ねは、貴重ではありますけれど、そのときの感動や体験からもう一歩踏み出して、自分で調べたり、話し合ったりするなどの作業をすることでもっと身についたものになるはずです。その知識や体験などの定着作業の時間は、学校だけでなく、家庭でも、外出先でもいつでもできることだと思います。ぜひ反復作業を厭わずに実践してみて下さい。私は、教育学の専門家でも何でもありませんが、最近つくづく思っていることです。