教育委員長職務代行者 松本 美惠子
去る1月10日、民間の児童養護施設などを運営する「鳥取こども学園」主宰の自主上映の映画「隣る人」(となるひと)を観ました。「隣る人」は、埼玉県の児童養護施設「光の子どもの家」の日々の生活を8年にわたり撮影したドキュメンタリーです。
「光の子どもの家」も「鳥取こども学園」も、事情があって親と暮らせない子どもたちを家庭にいるのと同じような環境で育てるとの方針の下、5人から8人程度の少人数の子どもと、保育士の担当職員1人ないし数人が、子どもの隣にいる人(隣る人)になって、普通の家の中で、ご飯を作り、洗濯をしたりと、家庭にいるのと同じような日常生活を過ごしています。
映画は、ナレーションも、説明文も、音楽もなく、たんたんと日々の子どもと職員との生活が描かれています。ときに泣いたり、怒ったり、甘えたり、寝る時には添い寝をして本の読み聞かせをし、子どもが安心しながら眠りにつくというような日常が描かれているのですが、一人一人の子どもは、ここに来るまでに親などとの関係で様々なことがあって、深く心に傷を負って来ていることが伺われ、施設での生活が明るく、わいわいと描かれているが故に、心に迫って来るものがあります。
そういう日々の中で、マイカちゃんの隣る人であったマキノさんが、施設を退職することとなりました。マイカちゃんは、数日間荒れに荒れ、マキノさんが施設を去る時には号泣し、いつまでも離れようとしません。マイカちゃんがどのような事情から施設に来たのかはわかりませんが、心から愛情をかけて貰っていたマキノさんをどれだけ慕っていたか、そのマイカちゃんの悲しみと、別離に抵抗する心の叫びが伝わり、涙が止まりませんでした。マキノさんはインタビューを受けて、「引き取ってもよいと思っていた。」とまで述べていました。
また、マリコさんが担当しているムッちゃんは、あるとき実の母の家に戻り一晩泊まってくるのですが、一晩であってもうまく行かなかったようで、お母さんが「もう会わない。」と、ぼそっとつぶやいた一言が親子だからこその難しさを感じると共に、親に見捨てられ、傷つく子どもの心境を思うと心が痛みました。
映画の最後に「鳥取こども学園」のプロモーションがあり、「子どものありのままを愛し、寄り添うこと。」の大切さが説かれました。子どもは、親に限らず、見守る大人の愛情を全身で感じ、受け止めて育つことの大切さを改めて感じた一日でした。