防災・危機管理情報


  

コラム(中島委員長)


 鳥取県教育委員長 中島諒人

子どものためのお芝居を最近新しく作った。「すてきな三にんぐみ」という有名な絵本が原作。ラッパ銃、コショウ吹き付け、大まさかりを持った黒帽子の泥棒三人組。向かうところ敵なしの彼らは、略奪を繰り返し、財産をどんどんため込んで行く。ある時、親をなくした女の子と出会い、なぜか彼女と野蛮人三人が一緒に暮らすことに。美女と野獣ならぬ、子どもと野獣。
野蛮人の膨大な蓄財を見て、少女はその使い道をたずねる。三人からは答えがない。ただ収集が目的だったのだ。三人は少女に促されて思案し、身寄りのない子どもに住まいと食事を提供することを思いつく。

近代西洋文明の目指したのは、コレクション・収集だった。世界の財宝を集めた博物館、あるいは貨幣の際限のない収集をめざす巨大資本。集めることが目的、だから欲望に終わりがない。

私たちは、歴史の大きな曲がり角にいる。収集よりも、幸福になること、豊かに生きることを考えたい。幸福とはお金持ちになること?ある程度はお金もいるだろう。が、お金だけでは十分ではない。じゃあ何がいる?それはきっと、みんな違う。それぞれがそれぞれの幸せを考え、必要なものを必要なだけ手に入れればいい。その模索の過程を、技術的、精神的、具体的、抽象的に支援するのが教育の役割。

三人組が集めた子どもたちは、やがて家族を作り、町を作る。町の人々は、三人の功績を記念して、帽子型屋根の塔を三つ建てる。無敵の三人組が、すてきな三人組になった瞬間だ。誰かの幸せを助けること、これも幸せの一つのあり方なのかもしれない。

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