鳥取県教育委員 坂本トヨ子
先日の新聞記事に、「学校で排便しない子」「多くの子どもたちが便秘に悩んでいる」「子供たちの自宅は、洋式トイレが主流の為、和式トイレは苦手、悪臭、汚い等、戸惑うことで、便秘の悪循環に陥り、一生の問題にもつながる」という内容がありました。
また、聞くところに寄ると、日常生活で和式トイレに「しゃがむ」という習慣が無くなることで、足首が弱り、アキレス腱を切る子供や、股関節が弱い子供が増えているとのことです。
近頃、人間が近づいた瞬間、センサーが感知して蓋を開き、クラシック音楽が流れ、用が済むと自動で水が流れるようなトイレが売られております。
そしてほかにも、日本人の生活レベルがここまで上がったかと感心させられる例を、数多く耳にします。
このような、トイレのことだけでなく、様々な社会現象に直面する今、ハイテク技術の進歩により、清潔で便利な生活環境になった分、一方で人間の「心」と「体」を弱めていくのではないか、私は少し不安になりました。
将来、思い通りにならないこともあることを、子供のうちから教えてあげないと、何かあった時に困るのではないでしょうか。
筋力は、様々なトレーニングや、体育で鍛えることが出来ますので、これは予防の近道がありますが、やはりお腹のことに関しては、心身の発達に伴い社会的な経験が重要です。
小学校では、子供たちにトイレを綺麗に使う為の指導や、排せつの重要性を教え、環境改善もされていますので、設備を整えれば解決というのではなく、家庭の方でも基本的生活習慣に加えて、どのような場面でも適応できる「強い心と体」を日常の体験を通して養うようにお願いしたいものです。
トイレのことを身近な例として考えましたが、これから未来のある子供たちが、時代の変化と生活スタイルに左右されて、気づかないうちに適応能力や筋力を弱らせることのないよう、社会全体で、心を配りながら見守る責任を感じました。