教育委員 鱸 俊朗
サッカーワールドカップ・ロシア大会も後半に入り、日本は奇跡的にベスト16に滑り込んだ。ポーランドとの試合終了後に、メディアからのインタビューで、“攻めないという苦渋の選択”をした西野采配についての質問に対して、comfortable Englishで答えた本田圭佑選手に人間力と知性を感じた。
その内容を意訳すると、「世界のサッカーファンに対してある意味では申し訳なかった、しかし、監督の選択は目的(ベスト16)をめざした結果であり、一つの選択肢であった。目標目指して頑張ります」という内容であった。彼の英語力についてはいろいろな意見があると思うが、過去の外国でのインタビューのなかでも自分の言いたいことの最低限はすべて語りきっているのはすばらしい。
彼の英語スタイルを本田訛りと称し“ホングリッシュ” と呼ばれているようである。彼が長年、英語圏でない国際的な多国籍チームでプレイする中で、英語をコミュニケーション手段の一言語として使用し、ネイティブな英語環境ではなく、選手同士がプリミティブな英語でコミュニケーションしているところからこのスタイルが生まれたのだろう。
しかし、ホングリッシュスタイルを生んだ伏線は、心(勇気)身の強さに加え、幼い時から取り組んだサッカー人生の中でのモチベーションの高さ(意欲、夢)、挫折からの立ち直り、星陵高校時代のキャプテンとしての主体的なかかわり、サッカー競技に必要な協調性、対話力、責任感、コンプライアンスなどの取り組み姿勢など、彼が受けた教育の中での、人間力の醸成にあると考える。
近年、国際社会のグローバル化とそれを後押しするIT革命(AIなど)社会に適応するために英語教育の意義が問われている。小中高の学習指導要領改訂により、学校教育ではなかなか身につかなかった「使える英語力」をめざし、2020年から小学5〜6年生で「英語が教科化」、3〜4年生で「外国語活動」が開始される。一貫した方向性のもと、高大接続の流れで、英語力のある社会人が育っていくことが期待される。また、英語教育を媒体として、異なる文化や価値観を持った人々と交流し議論することで、知見を深め、国際感覚を得、同時にアイデンティティーの必要性が自覚されその結果、子どもたちの、人間性や国際的および自国、地域理解が育成されていくと考える。そのためにも、教科横断的な取り組みを含めたカリキュラムマネジメントが必要となる。
本田選手の英語力習得の成功例から考えても、より良い英語教育環境(教師の英語力向上、ICTの利用、教材の見直し、ALT活用、一貫した英語教育連携など)は考慮する必要はあるが、人間力の醸成を目指すバランスのとれた教育への取り組みと、一貫した英語教育の中で教科が嫌いにならない取組(自己肯定感と自己達成感)が必要と考える。