鳥取県教育委員会 委員 上山 弘子
「全国学力・学習状況調査」の結果の取扱い
「全国学力・学習状況調査」の調査結果の取扱いについては、県民の皆さんに多く関心を寄せていただきました。昨年の夏以降、その時々の状況によって賛成、あるいは反対と多くの方のご意見を頂きましたが、内容の多くは児童・生徒への配慮をお願いしたいというもので、結果の活用方法などその他の意見はほとんどありませんでした。
また、調査結果の開示・非開示の議論に終始し、結果をどう活用するかという議論がおざなりにされたとの報道もありましたが、開示・非開示の決着なくして次のステップに進むことは出来なかったのだと私は思っています。
この協議の間にも各市町村教育委員会・各小中学校においてもそれぞれデータの結果を解析し、課題を明確にし、保護者・地域に対して情報発信を行うとともに、課題の解決、改善等に向けて取り組まれています。私たち県の教育委員は、これらの取組をどういう形でバックアップしていくかを考えていくべきだと思っています。
幼稚園・保育所・小学校の連携
私は、地元で放課後児童クラブの運営に関わっている関係で、そろそろ新1年生の話題が聞こえてきます。このクラブでは、来年度は新1年生の約半数が入所予定です。児童の入所割合が増えてきており、年々指導員さんのため息が増えています。この地域では保育所と幼稚園(5歳児のみ)があります。幼稚園の意義を考えた時に、小学校への入学準備段階と考えて幼稚園に通園させたいと考えられる方も多いかと思いますが、幼稚園は、「降園時間が早い」「夏休みがある」等の理由で保育所を選択してしまう家庭が増えています。預かり保育もありますが、費用の面で考えてしまいます。
幼児教育に対する施策・支援は重要課題のひとつだと思います。管轄を超えての連携が強く望まれます。鳥取県教育委員会では、幼稚園・保育所・小学校の連携の重要性を認識し、教育局が「幼稚園教員・保育士の合同研修会」等を開催しています。この研修会は、国公立・私立また幼稚園、保育所の枠を超えた研修会として定着してきています。今後は、小学校教諭と幼稚園・保育所の教職員による合同研修会の開催などが必要ではないかと感じています。
ちなみに、平成19年度から小学校の教諭が幼稚園で長期社会体験研修を行い、幼児期から小学校へのスムーズな接続を探っています。今後の幼・保・小の連携の強化へ繋げて欲しいと思います。
今、県立博物館、県立図書館が面白い
これまで博物館に足を運ぶとこはあまりありませんでしたが、今の博物館の取組はとても充実していて、ワクワクしてしまいます。昨年の4月から美術部門の普及プログラムを土曜日に集中させた「サタデー・アート・フィーバー 毎週土曜日はアートの日」がスタートし、子どもから大人まで楽しんでいただけるようになっています。毎週土曜日に博物館にいけば、アートシアター・アートセミナー・ギャラリートークなどさまざまな美術関係のプログラムが提供されていて、多くの方に週末をアートで満喫してもらえるよう工夫されています。
また、夏休みを中心とした企画展には毎年多くの子ども達が訪れています。昨年の「ようこそ恐竜ラボへ」では我が子も恐竜の大きさに感動し、「発掘をしにゴビ砂漠へ行きたい!」と口走りましたが、解説員の方に「現地では3ヶ月はお風呂に入れません」といわれてあっけなく撤回しました。この企画展では来場者が2万人を突破し、PRの成果もうかがわれました。このほか移動博物館事業やアートグッズのレンタル事業では博物館が学校や地域に出かけて、鳥取県の自然や歴史などを学ぶために動植物の標本や歴史資料、美術品の提供や貸し出しを行っています。是非多くの学校・地域で利用いただきたいと思います。
ところで、県立図書館のホームページをご覧になったことがありますか。
トップページを見ただけで楽しくなりませんか。どこからクリックしようかと迷うくらいたくさんの情報が満載です。
図書館の事業の中で、県立図書館が実施した館内展示を、県内の公共図書館・高等学校図書館で巡回展示するという企画があります。そのメニューは文化、産業など様々な分野に及んでいますが、今度、私の娘が通う高校では、県立図書館のコーディネートにより犯罪被害者自助グループ「なごみの会」による、犯罪被害で亡くなられた方々からのメッセージを広く知っていただく巡回パネル展が開催されます。わざわざ図書館に足を運ばなくても(それはそれで意義があるのですが)日常の中で命や人権といったことを考える機会が増えることを期待しています。
『過去が咲いている今 未来の蕾(つぼみ)で一杯な今』
陶芸家の河合寛治郎の言葉です。
この言葉を皆さんはどう据えますか。
この前までは、「情報の共有」なんて考えてもみませんでした。
時代の流れは、変わっています。未来の蕾たちをどういう人に育てて行くのか。どういった教育をしていけるのか。注目を浴びている今、私たち教育委員や教育関係者だけでなく、県民の皆さんそれぞれにも子どもたちの教育について考えていただく時だと思います。