防災・危機管理情報


  

人(の言葉)に出会う楽しみが感じられる(佐伯委員)

 教育委員 佐伯 啓子

 放課後児童クラブに関わり小学校を訪問して様々な子どもたちに出会います。学校生活と異なり放課後という開放感があり、活動内容も自由度が高く、異年齢の児童が共に過ごす環境です。1学期は児童どうしの関係性が築けていないこともあって、刺激や予定変更に影響を受けやすく、人との関わりでコミュニケーションがうまくとれずトラブルが生じやすい児童の存在が、たいへん気になっていました。
 鳥取県通級親の会研修会で「これからの時代を生きる力をどう育てるか」~コミュニケーションの捉え方・伸ばし方~という演題で、島根大学大学院教授、肥後功一先生の講演を聴く機会がありました。次のようなことが心に残りました。
 現代は、障がいがある、ないにかかわらず「生きにくさ」がある。対人的な距離感が変化してきていて(例えば列車内で座席に座ったまま携帯電話で話をする、運動会の応援でグランド内に入ってビデオ撮影をする、エレベーター内で他の人の耳を意識せずに大きな声で自分たちの話を続ける等)、身体的なやりとり(コミュニケーション)の基礎が、脳神経学的な理由によってもともと困難な子どももいるが、そうでなくてもこうした身体的なやりとりが危うい時代である。
 生きる力としてのコミュニケーションが身についていく過程では、「かかわり」が大切。コミュニケーションにつながる言語力を育てる為には、人の話を聴いてわかろうとする(聴く側と話し手との関係で、相手の話を自分の身体に共鳴させて取り込む)、言葉に出会ってエネルギーを得るということが基礎になる。人の言葉に出会う楽しみがあって、それが勉強する力(学力)につながる。みんなで一つのことを話す楽しさが感じられるということ。こういう環境の中で、コミュニケーションする力が培われる。会いに来ることを楽しみにしている、そういう関係でないと子どもは伸びない。その子とベルトをかける、つなげるということ。人と一緒に過ごし個として存在することの価値を認め合うような関係の中で、本当のコミュニケーションが育てられる。

 また同日あった米子市立米子養護学校の開校記念祭で、毎年歌い継がれている曲「スマイルアゲイン」の全員合唱を、今年は米子管弦楽団の演奏と一緒に聴きました。『どんなあなたもみんな好きだから』という歌詞は、ありのままのあなたをすべて受け入れて認めるという姿勢で子どもたちに接していこうと考えている同校のあり方と重なります。心身症等で不登校を経験した子どもたちが、少しずつ自信を持って歩き始める、人とコミュニケーションすることが、苦痛であったことから楽しみへと変わっていく。そのために時間をかけてゆっくりと子どもとベルトをかけてつながっていくことをまずめざして取り組んでおられます。
 自己主張が強く、周りの人とのコミュニケーションに課題があって、集団生活に適応できていない子どもたちを目の当たりにして、見守る大人の関わりについて悩んでいました。対応法を検討し、学校や医療との連携等模索していましたが、肥後先生のお話と養護学校の子どもたちの姿に触れて、子どもと向き合う最も大切なことを改めて実感する機会になりました。出会うことが楽しいと思ってもらえるような、そんな関わり(言葉かけ)ができる大人として、子どもたちに接していきたいと、気持ちを新たにしました。

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