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コラム(坂本委員)

坂本委員 鳥取県教育委員会委員 坂本トヨ子

 「川端康成 珠玉のコレクション」展を、ひろしま美術館で観賞する機会がありました。
 ノーベル文学賞を受賞された際に東山魁夷(ひがしやまかいい)から贈られた作品や、ハワイ大学で公開講義を行う様子を平山郁夫が描いた作品、縄文時代の土偶から、国内外の巨匠の作品、文学全集の表紙絵原画や友人(太宰治、林芙美子など)からの手紙、そしてご自身の書家としての力作や、浦上玉堂(うらかみぎょくどう)と池大雅(いけのたいが)と与謝蕪村の国宝まで、書ききれない程の、まさに「珠玉のコレクション」でした。
 画家になりたかったという、彼の作品を見る目の確かさが強烈な方法で紹介され、これまで文学者としての川端康成のみを認識していた私でしたが、衝撃の時間を過ごすことになりました。
 「最高の美にただただ感動することが生きがい」と、説明文から始まり、奥深い美術と文学の融合が、ゆっくりと心地良い空間へと導いていくのです。
 彼は残念な最期を迎えましたが、健康なときには、後世に何を伝えたかったのでしょうか。

 今の時代、デジタルアートの流行により、プロジェクションマッピングやアクアリウムが、独特の芸術性で娯楽や観光に競うかのように人気を集めております。
 半世紀前の彼には想像もつかない技術ですが、やはりこれも過去の貴重な文化活動からの賜物とクリエーターの出現に感心するばかりです。

 「私は古いものを見るたびに、人間が過去へ失ってきた多くのもの、現在は失われている多くのものを見るのであります」川端康成「反橋」より。

 鳥取の県展も、益々素晴らしい作品になっていることを実感し、観賞する県民の美意識も確実に上がっていることには、大いに喜びを感じます。

 スポーツによってイキイキ出来る「長寿社会」に合わせて、もう一つ「こころ」の慰めになる場が必要と考えますと、年齢を重ねて、県外の美術館に行くことが出来なくなる時、県内に多種多様な企画の出来る美術館を有することで高齢者も心身ともに活性化されるのではないでしょうか。
 身体の不自由な方たちやその付添い人なども、そこに行けば生きがいを見つけられる場、そして、幼い頃から美しい自然で五感をみがいた県民が、いつまでも感動する「こころ」を持続できる場が鳥取県内に存在することを願います。

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