鳥取県教育委員会委員 坂本トヨ子
この冬、鳥取県は豪雪により、国道の難渋が全国ニュースになるなど、自然の驚異を叩き付けられる事態を経験しました。近年、降雪量が少なく地球温暖化の話題で過ごしてきたのですが、今年の雪には緊張感を強いられる出来事として、誰もが認識を改めたことと思います。
苦い経験は教訓として心に刻むとしまして、この雪が穏やかな日は、朝日が雪原に宝石のように光り輝いて、この瞬間ここでしか見ることの出来ない景色があることも、氷柱から落ちる水音のリズムに合わせて気付かされます。星空と雪明かりで蒼く澄んだ夜も、朝になると気温零下の後、積雪の上が硬くて沈まずにどこでも歩くことが出来る感触も、雪の季節ならではの体験です。
暦のうえでは「啓蟄」、やはり春の季語には例年にも増して敏感になるのですが、雪の下から、ふきのとうや水仙が芽を出し、雪で隠れていた草たちも元気に
なってきました。どんなことが有っても春は確実にやってくることを、雪が融ける度に身体で感じ、気持ちを切り替えながら年を重ねることが出来るのは、雪国特有で、日本の、鳥取の、ここだからこそ四季の変化に恵まれた環境であることを感じることがたくさん有るはずです。小鳥のさえずりや、川の流れ、木々の緑にしても様々な色があること、雨の日と晴れの日では光や匂いが違うなど、季節とともに五感を磨く自然界を共有出来る鳥取県なのです。
今、美術館の明るい展望が語られておりますが、都会の自然が少ない地方は、絵画や陶芸等から良いものを見つけてから自然界の良さを知るのですが、反対に「鳥取だからこそ」まわりの美しいものを観る目や感じる心を養ってから、初めて一流のものを観賞出来る機会に巡りあうことも、創造力あふれる鳥取県の魅力づくりとなるのではないでしょうか。