大型車が行き交う国道181号沿い、日野高校にも商業施設にも近い絶好のロケーションにあって、連日たくさんのお客様で賑わっていた「レストひの」が、惜しまれつつ令和元年12月25日をもって閉店しました。
残念だと思う皆さま、ご安心ください。
100席ほどあった規模を30席ほどに縮小し、令和2年1月6日、根雨のまち中に「居酒屋いりえ」となってオープンし、かつての「レストひの」の料理を引き続き楽しむことができます。
「居酒屋いりえ」の正面に立つマスター
マスターが「レストひの」をオープンしたのは、今から半世紀前の1969年(昭和44年)。
その頃、我が国は高度経済成長期末期にあって、GDPは西ドイツを抜いて世界第2位となり、大阪万博特需に沸いていました。金融面でも、ブレトン・ウッズ体制からの脱却という大きな転換点を迎えていました。
国政では、田中角栄が地方のインフラを重視する政策綱領を発表、地方への投資が盛んになされました。
若い頃、米子駅周辺にあったレストランで中華料理を担当していたマスターは、根雨の料理店に婿入り、国道181号ができたときに、「これからはドライブインだ!」と思い立ち、国道沿いに「レストひの」を作りました。
以来、国道を行き交う車に乗っている方や、工事の関係者など、多くのお客様で賑わい、夜も宴会が開かれるなど、日野町のレストランとしてすっかり定着していました。
転機が訪れたのは、去年、20代のときから従業員として一緒に働いてきた方が70代となり、健康上の理由で店を去ることになった時。マスター自身も70代となり、これまでのように大きなレストランを切り盛りすることに体力の限界を感じ、また、建物の老朽化もあって、ここでけじめを付けようと閉店を決めたそうです。
新しくオープンした「居酒屋いりえ」は、先代、先々代が料理屋を営んでいた場所で、以前経営していた「らうんじ祇園」を改装したものです。
「50年前は、この界隈は商店が立ち並び、向かいには映画館、裏では牛の市が開かれていて、子供も今よりずっと多く、根雨のまちは賑わっていました。」
「お世話になっている地元の方のために、店を小さくして、体力の限界まで頑張ろうと思います。」
「引っ越しも、壁紙の張替も、地元の皆さんが全てボランティアでしてくださいました。
掛けている写真も、花も、全て地元の方がお祝いにくださったものです。
皆さんに支えていただいて、オープンできました。」
酢豚、牛ヒレステーキ、鶏の唐揚げ、中華丼、カツ丼など、豊富なメニュー。
厨房を覗かせていただきました。
豚ロースを酢豚用に切ります。
豚肉に卵、片栗粉などをまぶして、使い込まれた鉄のフライパンで揚げます。
年季の入ったマスターの腕前は流石です。
きくらげなどと秘伝のたれを絡め炒めます。
たれの作り方は門外不出。
看板メニューの酢豚の出来上がり。
鮮やかな手捌きで次々と料理を作るマスター。
女将さんが一人でホールを切り盛りします。
マスター「女将さんの人柄を慕って皆が集まってきてくれます。半世紀も続けてくることができたのも、全て女将さんのお陰です。」
女将さん「地元の皆さんに支えていただいていますので、皆さんに来ていただけるこのお店をずっと守っていきたいと思います。」
人口減少が進む日野町では、マスターが「レストひの」をオープンした翌年の1970年(昭和45年)には
6,757人(国勢調査より)であった町人口も、「レストひの」を閉店した令和元年12月には2,897人(鳥取県調べ)と、この半世紀で57%減少しました。
地域を維持するためには、様々な工夫が求められるようになってきています。
これからますます人口減少が進んでいく中で、地域の皆さんがボランティアでお店の移転を手伝ったり、お店が地域の皆さんのためにダウンサイジングして頑張る姿は、日野町の未来への希望のように感じられます。
居酒屋いりえ
住所:鳥取県日野町根雨385-1
営業時間:午前11時から午後3時まで(月曜定休)
※宴会の予約が入れば夜も営業
日野振興局 2020/01/17