その日は本当にいい天気でした。
空は真っ青で、まぶしい陽射しは頬をじりじりと焼き、もう11月だというのに、汗までかきそうでした。
(↑よく晴れた秋の日) (↑コーヒーを淹れるみなさん)
今年は伯備線各駅100年イヤーズのスタートとして、3月の江尾駅、6月の根雨駅に続き、11月10日、黒坂駅も開業100周年を迎えました。
開業日である11月10日は平日の木曜日で、招待客と関係者を中心に式典のみが行われました。
それでもこれほどいい天気の中、明るい気持ちになっているみなさんたちは、駅舎内に「臨時開店」した「駅Cafe夢人駅(むじんえき)」にコーヒーを次々に買いに行き、歓談したり、駅舎内の懐かし写真を見たりしながら式典までの時を過ごしていました。
ふだんは無人の黒坂駅ですが、今日ばかりは本当に「夢人駅」ですね♪
(駅Cafe夢人駅のコーヒーを淹れてくれたのは、黒坂公民館で活動する「おしゃべりカフェ」のみなさんでした。)
式典では日野町の﨏田町長、和田根雨駅長ほかJR西日本米子支社のみなさん、鳥取県の栃本日野振興センター所長、また地元のみなさんがそれぞれに思い出や未来への希望を交えた挨拶をされ、最後はくす玉割りです。
その薬玉は関係者手作りのもの、また、割るタイミングにも工夫が凝らされていました。
カウントダウンの音が鳴ります…と予告されましたが、聞こえてきたのはシュシュという変な音。
テープが壊れているのかな?と思っていたら、どんどんシュシュ音は大きくなり、最後は「発車!」。そう、汽車の音だったのです。巧い!
(出席者のみなさんでくす玉を割りました) (黒坂駅の愛称『鏡山城駅』のプレートです)
式典終了後、午後からは宿泊施設「リバーサイドひの」(日野町下榎)に場所を移して、「日野軍★伯備線ファン倶楽部」の発足式です。
「日野軍★伯備線ファン俱楽部」は、伯備線100年を機に、ファン同士が「ゆるく」つながろうということで発足した、名前や住所の登録もいらず、ハンドルネール(WEB上などでの愛称)と住んでいる場所の参考に郵便番号を登録するだけという気軽なクラブです(入会申し込み用紙は「リバーサイドひの」に備え付け)。
拠点となる「リバーサイドひの」は、根雨と黒坂駅の間、いわゆるネウグロに位置する鉄道写真の撮影にも便利な場所。遠方からのファンがこの絶好の場所に泊まれるだけでなく、この日からは、建物内の一角に自由に読める鉄道書籍が置かれ、壁にはかつての時刻表が貼られるなど、交流の拠点となるサロンとして立ち寄るだけでも楽しい場所となりました。
(貴重な『山陰線 線路一覧略図』も手に取って見られますよ!)
発足式に参加した方の中には「これからは、『レールサイドひの』だ」と冗談を言って喜ばれた方もいました。
また、この場で聞いた話ですが、郡内の一部の農家の方は、撮り鉄が「水田に映える電車」というベストショットを撮影できるよう、一般的な時期より少し早めに田んぼに水を入れたり、電車が通る時間になると農作業の手を休め、写真にご自身が写りこまないようにする配慮をされるそうです。撮り鉄に優しい地域ですね。
もちろん、田畑は鉄道を美しく彩るためにあるのではありません。そして農業は、人がコントロールできない自然相手の仕事です。のどかに見える仕事の中にも1分1秒を争う作業、中断できない作業はあることでしょう。
だからこそ、上述の「配慮」は特別中の特別と言えます。
このところ、撮り鉄の問題行動もしばしば話題になっている中、このような地域のお心遣いへの感謝の気持ちや、交流人口の拡大につながっていくといいですね。
翌々日の土曜日、黒坂駅100周年との合同イベントして『黒坂フェスタ』が開催されました。こちらは歩行者天国になった駅前に飲食の屋台がたくさん出て、多くの人がこれまた好天の下、楽しく過ごしていました。
江尾駅、根雨駅に引き続いてやってきた『ミニサンライズ号』も子どもたちに相変わらず人気の模様。
そして会場にかかる音楽は、「心の旅」(チューリップ)に「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)といった、往年の「鉄道名曲」。
(真ん中に写っているのが『ミニサンライズ』号です)
今年の開駅100周年は、この黒坂駅が最後でした。
来年最初に100周年を迎えるのは、隣の上菅駅を飛び越して、生山駅です。日南町最初の駅として盛り上がりも期待されます。
日野郡はこれより先、ぐっと気温が下がり、冬への道をまっしぐら。
まずは雪が電車に悪さをしないように、と早くも(は やくも)願う記者でした★
日野振興局 2022/12/01