行きつけの日野町図書館でふと案内ちらしを見つけました。
江府町図書館友の会研修(江府町立図書館共催)
「小さな町の図書館の役割とこれから~ちえの森ちづ図書館“ちえの森応援隊”を迎えて」
う~ん、おもしろそう…
どうしても内容が気になったため、江府町立図書館にお願いして、この研修会を催した「江府町図書館友の会」の代表、前川さんにお話をお伺いすることに。
伺ったお話には、江府町立図書館を地域の居場所にしたい、という図書館にかかわる人の深い思いがありました。
いわく、小さな町の図書館も「営業活動」してはどうだろうか、と。
9年前、大阪から妻の故郷である江府町に移ってきた前川さんの目には、当時の江府町立図書館は、活気のない場所だと映りました。
そこで、利用者一人一人の顔が見える小さな図書館だからこそ、こちらからも話しかけて相手のニーズを知り、本や地域の活動への参加を案内する「知の集積拠点」、そして「地域の人をつなぐ居場所」になればいいのに…と思われたことから、応援する気持ちでこの会を立ち上げられたそうです。
もちろん、利用者にもいろいろなタイプの方がいます。例えば、取材に同席していただいた同館の宇田川館長が言われた「自己開示することを負担に思う人」は、貸し出し手続きの際、図書館の側から「このような本に興味があるのですね」と聞かれただけでも、少しバリアーを張ってしまうかもしれませんね。
ですが、利用者さんが窓口で本を返す時、自分から「この本、面白かった」と口に出されたら、「そうでしたか」で終わらせず、同じジャンルのおすすめ本や関連するテーマの本を紹介したら、図書館はその人の世界を広げる窓になりますよね!
現在では「調べものはまずインターネットで」ということが主流となり、大きな図書館でも従来の役割や運営方法だけでは存在意義を問われるようになっています。
では、図書館ならではのものとは何か…それは『リアルな場所』であることでしょう。必ずしも「本」にかかわらなくても、地域のコミュニケーション拠点として、誰かと話したくて来る場所、休憩する場所…などなど。
江府町図書館友の会では図書館に関する研修会や、読んでみておもしろかった本を紹介しあう「奥大山ブックレビュー」を催すなど、「場」を活かした活動をされています。
これに加えて江府町立図書館では、遠い集落から来ている児童が通学バスを待つ間の自習スペースも提供しています。ちょうど取材の終わりごろ、小さい子たちが「学校から帰ってきました」よ♪
前川さんはお話の終盤、元朝日新聞記者の稲垣えみ子さんの著作の中のエピソードを引き合いに出されました(「一人飲みで生きていく」朝日出版社)。
居心地のいい居酒屋の大将は、気が合いそうな一人客同士だと見れば会話をつなぐけれど、一人で過ごしたいお客だと判断すれば、そっとしておくそうです。
お客同士が仲良くなれるのは実は大将の差配だった…とはおもしろいではありませんか。 図書館も、この居酒屋の大将のように利用者一人一人を見て、ニーズを見つけ出し、新たな本や活動への扉を開けるスキルがあればいいのではないか…と。
江府町図書館友の会は様々な賑わいづくり活動を評価され、先ごろ『日本海新聞ふるさと大賞2022』の地域貢献賞を受賞されました。
ですが、これでひと段落…ということではきっとないでしょう。
利用者への積極的なアプローチも有効ならば、控えめなサポートにも意味がある。また、そもそも図書館に来ない人、来られない人のニーズをどのように探っていくか、という問題もある…
(江府町は人口3000人の『小さな町』とはいえ町域はとても広いので、歩いてふらふらっと来れる人は限られています)
この先もまだ発展途上の江府町立図書館です。
今は徐々に高度を上げていくための「低空飛行」中だという江府町図書館友の会の今後の活動にも期待しましょう(^^♪
採光のいい江府町立図書館、この日は窓掃除の日でした♪
日野振興局 2023/03/24