三度目の正直…。この言葉がこれほど似合うこともないでしょう。
それは、鏡ヶ成の春の山焼きです。
4月17日の記事で雨天延期になったという記事を書きましたが、実はその翌週の予備日も雨で延期になり、2週遅れの4月27日、やっと開催にこぎつけました。
この日も前日の雨でぬれた草が少しでも乾くのを待ったため、スタートが遅れました。
10時半、環境省、自治体、大学関係者のほか、ボランティア参加の地元山岳会の面々を前に開会式と鳥取大学の日置教授による山焼きの説明が始まります。
説明によると、山焼きは、鏡ヶ成の草原、湿原、ススキ原の森林化を防ぎ、従来の生態系と景観を維持するため、6月の草刈りに加えて2018年から再開されました。
山焼きや草刈りをしなければ、強い植物が自分より弱いものを駆逐して草原や湿原の森林化が進み、そこで暮らしていた蝶たち生き物が生きていけなくなります。
山焼きとは「増えすぎるとよくない植物の適度な除去」。表面に出てきた芽や葉だけを焼き払って、草木のターンオーバー(再生、更新)を促す作業です。土中の根は残っており、翌年にはまた草がその根から生えてくるので、「不毛の地」とはなりません。
消火係は防塵マスク、ゴーグル、ヘルメットを装着し、消火用水を入れるオレンジ色の背負い袋がついた巨大水鉄砲、『ジェットシューター』を背負います。
そして、ジェットシューターで消火できなかった場合に備え、より強力な動力噴霧器を動かす係がタンクに水を詰めて待機しています。
エリアを3つに分け、まずは最初のエリアへ向かいます。
消火係が定位置につくと、バーナーで着火!
最初は小さい火がポツポツとつけられます。記者は、一気に周辺が燃え盛るのかと思っていたので、少し予想とは違いましたが、風が吹くとどんどん炎が大きくなっていきます。燃える火の臭い、煙の臭い、そして熱さで少し苦しいです。
火はいったん燃え上がるものの、しばらくして草が燃え尽きると、自然に消えていきます。自然に消えなかった火を消火係がジェットシューターで手動で消して回る…という作業です。強力な動力噴霧器はほとんど出番がありませんでした。
この要領で第2エリア、第3エリア、と焼いていきましたが、草が乾ききっていないので火のまわりは遅く、燃え尽きた後も表面の草をめくってみるとその下は燃えていなかったり、よく乾燥していた昨年に比べると燃え方が少し物足りなかったようです。
それでも、初めて見学した記者にとっては、焼いた後の草地が絵具で塗りつぶしたようにそこだけ黒くなった景色を眺めると、「焼けたんだなぁ…」と感慨深いものです。
さらに違う感慨をもたらしてくれたものは、この写真の草の葉です。
このエリア一帯を焼いたのに、このとおり緑のままで残っています。生草(なまくさ)は水分をたくさん含んでいるので、バーナーの火を直接当ててさえ燃えにくい時があるそうです。
生きていることは、文字どおり「みずみずしいもの」なのですね。
また、こういった燃えない植物のそばで山焼き後も命を長らえる虫などもいると伺いました。
午前12時半、すべての作業が終わり、講評と労いのことばがあって解散。
この後も環境省の人たちは残って、最後に火が消えていることを確認して引き上げます。
(撤収する面々。消防士のようです。なにはともあれ「消火」とは勇ましきものなり)
山焼きの成果が出るのは6月ごろ。
美しい草原・湿原がこの作業によって新しく生まれ出でていることを願うばかりです☆
【おまけ】 現場確認中に見つけたカヤネズミの巣♪(すでに巣は空っぽです)
日野振興局 2023/05/11