9月下旬のある日の業務終わり。まだ降ってる…か…。でも傘がいるほどじゃない。
昼間、ひとしきり雨が降り、夕方にはほとんど止んだけれど、霧雨小雨は残っている…そんな日の根雨の夕方は、空のせまい山あいの町に勤める味わいというものがとくに感じられます。
根雨の町内を囲む山のてっぺんは空から下がってくる霧で見えない。迫りくる夕闇と混じり合った霧に包まれる水墨画のような景色の中、駅まで足早に進むと、待ち合わせで止まっている電車の行き先表示のオレンジの光は冷たげな空気の中、温かみを発している。
記者は、こんな根雨が一番好きです。
さて帰宅後、ニュースで翌日の天気予報を見ると、明日は全県で降水確率ゼロ%の快晴!
「弁当忘れても傘忘れるな」というほど、雨が降るわが県では、なかなか珍しい天気です。
(20~30%なら、ちょっと曇ったと思ったら降った…(すぐ止むけれど)というのがわが県なのです。でも、その分、虹を見る確率もすごく高いのですよ!)
今日はきっと、「その前夜」だ。
雨の後の快晴、明日はきっと日野郡名物、明地峠の雲海が出るでしょう。
(大まかな説明ですが…水分を含んだ空気が冷えて水滴が出てきたところに(雨上がりの夜)、暖かく乾燥した空気の層が上から現れ(晴れた朝)、雲になって上昇できず、濃霧として横へ広がっていくものを上から見たのが「雲海」です)
<参考:明地峠の雲海>
翌朝、記者は始発で職場に向かい(根雨駅 6時45分着)、明地峠に直行です。
道中は数台の長距離トラックとすれ違っただけの穏やかすぎる早朝です。
少し坂道を登っていくと、晴れてはいても、結構な霧。フロントガラスの曇りを取り、運転に注意しながら、7時過ぎごろ明地峠の展望駐車場に到着しました。
駐車場の展望台スペースは眼下からの光にあふれています。一面に広がる白い雲海に陽の光が当たっているのです。とてもまぶしいですが、濃霧がクッションになってふんわりしたような柔らかさがあります。
実は展望駐車場からは緑が多すぎて眼下が望みにくく、観光写真に扱われる「山々の手前に広がる雲海」の景色を見るには、すぐ横の地域の手作り展望台に上らなくてはいけません。
(もともと足元に注意がいる場所ですが、雨の後、さらに滑りやすくなっていました)
先客は2名。お一人は地元で長年、雲海の名ショットを写し続けている写真家さんです。
展望台周りの林に縁どられる前景はあふれる雲海で、ただ真っ白。眼下の奥渡集落はまったく見えませんが、木漏れ日の中、すぐ目の前に舞う雲海のミストがよく見えます。
細かい、細かいミスト。
7時25分、雲海が山頂より下がってくれました。
この風景、待っていた・・・! 正面の大山、右の宝仏山の前に広がる雲海。
雄大です。見事です。
記者は初めて見る雲海でしたが、今日はとくに量も多いとのこと。
本当に飛行機の窓から眺める空の上の景色のよう…。
この日は風がなく、15分ほどすると、再び雲海が増え、上っていき、すっかりすべての視界を包んでしまいました。
もう前方にも眼下にも何も見えません。ちなみに、雲海の下に位置する奥渡集落では濃霧が広がっていて、前が見えないというほどではないにせよ、車のライトは点けて走らないと、という状況だそう。
この状態は8時を過ぎても変わりませんでしたので、今日はここで引き上げです。
短い時間でしたが、いいものを見たという満足感がありますね。
これからの季節、さらに気温が下がってくると、もっと見事な景色が広がるそうです。
自然現象ですから、絶対見られるという保証はありませんが、みなさんもぜひ一度見に来てください。すごいなぁ~と感じられること請け合いです。
そうそう、雲海がもうほとんどなくなりかける9時前ごろの景色もおすすめですよ。
眼下に残ったわずかな雲海は、天女の羽衣が浮かんでいるような趣ですから。
【おまけ】こしあぶら
展望台の横に有名な山菜、こしあぶらの木がありました。
春になると日野郡でも天ぷらを出す店があります。350円(当時)だったので、「小さなおかず」だろうと思って注文したら、山盛り出ました。でも、食べだすと、一瞬!!
日野振興局 2023/10/02