鳥取県教育委員長 笠見幸子
半世紀も前の話であるが、私が通った小学校の玄関には“まず、健康”と大きな文字が掲げてあった。戦後の食糧難にあっても朝はエネルギー源となる芋や穀物類をしっかり食べたものだし、学校から帰ると夕方暗くなるまで自然の中で遊びまくった。木登りや樹のつるにつかまってターザンごっこや川や海での魚とり等もした。夕方疲れて宿題をするのが大変だったが必ずやった。田舎育ちがゆえに都会ではできない貴重な体験に恵まれていた。今思うに、それが大きくなってからの生きる原動力になっている気がする。空気や水がおいしく、自然環境豊かな鳥取県。鳥取県で育つ子供たちは自然遊びがたっぷりできるのに、「危険」の一言で戸外での遊びを奪われてはいないか。リスク回避力を養う上でも自然環境を十分に活かした取り組みを期待したい。鳥取県に住みながら、この恵みを活かした子育てをしないのはもったいないことである。小学校卒業の頃までに、こうした体験をたっぷりさせることが、その後の人間形成上重要であると思う。
昨年訪問した保育所や多くの小学校で、朝から子供たちの元気な声や活動的な動きを見ることができ、こちらまで元気で幸せな気持ちになった。「心とからだいきいきキャンペーン」が地域や学校の実情に合わせて真剣に取り組まれるようになった成果であろう。
子供たちが意欲的に多くの事柄を学ぶには、まず健康である。心とからだがいきいきしていてこそ学力向上が期待できるのである。