鳥取県教育委員 若原道昭
今日の日本の乳幼児の保育・教育制度改革の動きは急です。2009年12月に「明日の安心と成長のための緊急経済対策」が閣議決定されてから後の動きは特に目まぐるしいものでした。その背景には、急速な少子化の進行、子ども・子育て支援の質的・量的な不足、深刻な待機児問題などの社会変化に対応する子ども・子育て支援システムの改革をという強い要請があります。
制度改革の検討過程でいくつもの委員会や作業グループやワーキングチームが生まれ、いくつもの文書が出され、次々と内容が変更され、新システムの名称案そのものも「認定こども園」から「こども園」、「総合こども園」と二転三転し、「子ども・子育て関連3法案」の国会提出後にも修正提案がなされたりした挙げ句、ようやく2012年8月の法案可決によって「幼保連携型認定こども園」に落ち着いたのでした。この間、「制度が大きく変わるらしい」という噂が先行して、実際の内容の分かりづらさもあって各方面に混乱と不安が広がったようです。新支援制度は2015年度から本格的にスタートすることになりますが、今でも余程の事情通でもない限りは正確な内容を理解しきれず、改革が今どこまで進んでいるのか、改革によって何がどう変わるのか、人々の認識にはばらつきがあり、時には誤解もあるようです。
さらにその理解や受け止め方も、幼稚園と保育所では当然異なり、それぞれの園の規模や地域性によっても異なっており、あちらを立てればこちらが立たずというトレード・オフ関係もあって、なかなか一律にとはいかないのでしょうが、先ずは各々が新制度の内容と問題点について正確に理解し対応する必要があります。考えられる問題には幼稚園・保育所の経営への影響と、乳幼児の保育・教育のあり方や保護者への影響という二面がありますが、関係者の関心はややもすると専ら前者に偏りがちなようです。私たちがもつべき共通の視点は、何よりも子どもを中心において、人間形成の基礎となる時期の子どもの健やかな成長を支援するという子どものための制度改革でなければならないということでしょう。しかしそれだけではなく保育・教育は同時に少子高齢化社会における労働力の確保と親の労働保障という労働政策と切り離して論ずることができないのも確かです。県教育委員会でも議論が必要なテーマだと思っています。