教育委員 佐伯 啓子
「読み聞かせ」を通して
子どもたちの周りには映像があふれ、テレビ、DVD、ゲーム機などを通して毎日のように接しています。場面の様子がひと目でわかり、効果音によっていっそう惹きつけられ、興味をそそられることが多いのだと思います。そういうことにすっかり慣れ親しんでいる子どもたちですが、素朴な読み聞かせも大好きです。幼児だけでなく小学生や中学生も、よく知っているお話であろうと耳を傾け、お話の世界を楽しんで聴いています。話の中へ引き込む語りの工夫も関係しますが、聴き手に届けたいとの願いで読んでいる、読み手の想いが、子どもたちに伝わるのではないでしょうか。
私が関係している放課後児童クラブでは、学年や家庭環境が違い、時にはすなおな気持ちになれない子どもたちもいます。そんな中で少しでもやさしい気持ちになって帰宅の途についてほしいと考えて、帰る前に読み聞かせをすることを勧めています。ざわついていた子どもたちが、お話の世界に入って瞳が読み手に集っていき、部屋の中が温かい空気に包まれる光景を見るとうれしくなります。指導員と子どもたちが物語の世界に一緒に入り、わくわくしたり、「よかった」と主人公の気持ちに同化したりと、そんな時間を共有するひとときが、なによりのものに感じられます。上の学年の子が小さい子どもたちに読んで聞かせる姿も見られるようになります。
人と人が直接ふれあうよさが、読み聞かせにはあります。子どもたちの心が豊かになることを願って、短い時間ですが積み重ね広げていきたいと考えています。