江府町の宮市には「農事組合法人宮市」という団体があります。
原料となる米や大豆の栽培から始まって、加工そして販売まで一貫して自分たちでやってしまうという活動を、長く続けてきた団体です。
最近にわかに言われ始めた「6次産業化」の先駆者です。
雪の降り積もる2月のある日、加工所を訪ねると数人のメンバーが味噌仕込みの最中でした。
1年で最も寒いこの時期こそ、最も美味しい味噌を仕込める寒仕込みの季節です。
この日は仕込みの最終段階。米麹はすでに出来上がっています。
こちらは蒸し上がった大豆。
米麹と蒸し大豆と塩を混ぜて機械で撹拌。
混ざり合った米麹と大豆が、半地下式のタンクに落ちていきます。
この半地下タンクに10か月前後寝かせて熟成させると、新味噌の完成です。
貯蔵量はこの半地下タンクひとつで7トン!
カビが忍び込んだり、熟成度にムラが出ないよう、空間無くびっしりと均(なら)すのですが、これが重労働。たっぷり水分を含んでいる上に粘っこい。まるで水を含んだ粘土です。そのままこの上を歩くと、腿までずぶずぶと埋まってしまうほどなので、木の板が必要になるわけです。
下の写真は去年のもの。味噌造りの行程でいちばんの力仕事と思えるこの作業、実は去年までは女性のメンバーが担当していました。
とても大変そうです。
法人設立からすでに25年。設立当初は50歳前後の働き盛りだったメンバーも、25年経てばほぼ全員が70歳を超えます。
高齢化と後継者不足が最大の悩みでした。
でした、と過去形で言うのは・・と書けば前篇と同じで、ここに若い働き手が加入したという話になりそうですが、実際そうなりました。
去年4月、農業がやりたくて江府町地域おこし協力隊に応募した長田啓さんです。
「そりゃあ、もう、長田さんが来てくれて、ほんとーっにっ、助かっています!」
と嬉しそうに話すのは去年までこの作業を担当していた河上和美さん。その嬉しさ、伝わります。
で、これが長田さんの雄姿。あ、顔が見えん。
この人です。
長田さんは大阪府の出身。江府町にIターンし、現在、地域おこし協力隊の農業班で活動しています。
長田さんのこの1年を少しだけ振り返ってみましょう。
彼は去年春から、味噌の原料となる米と大豆作りの研修をびっしりと続けてきました。先生は法人代表の長岡邦一さんです。
まず、5月の田植え。
7月は大豆畑の中耕培土。
11月は大豆の収穫。
というふうに、協力隊1年目はあっという間に過ぎようとしていますが、もうひとつの出来事は、去年12月、念願の古民家引っ越しが実現したことです。
青い屋根の家がそうです。長田さんはここを、集落の皆さんが気軽に立ち寄れる交流場所にしたいという計画も立てています。
そして、協力隊任期の3年間を終えれば自立して定住したいという希望を持っているのですが、それには何よりも自活できるだけの収入を得る道を確保しなければなりません。残りの任期2年間のうちに、その道が見つかるかどうか。
正念場の2年目が始まろうとしています。
さて、本題に戻って、これが農事組合法人宮市製造の「奥大山高原みそ」です。
大山の清らかな湧水と自家製の米と大豆で作ったとても美味しい味噌です。
詳しくはこちら、
農事組合法人宮市のホームページをご覧ください。長田さんが現在、懸命にブラッシュアップ中です。ご注文もここからどうぞ。
日野振興局 2015/03/10