防災・危機管理情報


  

コラム(中島委員長)

中島委員長 教育委員長 中島 諒人

 想像力と創造力の時代になった。11月11日は第一次世界大戦の終わった日。今年は同戦開戦から100年。来年は太平洋戦争の終戦から70年。
 戦争というのは巨大な災厄。日本が70年間平和なのは本当に素晴らしいこと。けれど、振り返ると戦争の記憶は社会の幅広い連帯の源でもあった。すべての人が戦争で苦しみ悲しんだ。痛み、貧しさを共有した。それが長い間社会を自然につないだ。現在はどうだろう。経済の成熟は社会の成熟と同義ではないことを思わせられない日はない。私たちの社会は、豊かさの中に巨大なディスコミュニケーションや孤独を抱えている。
 鳥取聾学校の生徒たちが手話の歴史を芝居にした。口話が奨励され、学校内で手話が禁止された時代があった。手話は手まねと呼ばれる日陰の存在だった。
が、ろう者の多くには必要不可欠なコミュニケーション手段だった。手話を厳禁し口を読めとする学校の規則に生徒が怒り絶望する場面がある。私たちは手話が市民権を与えられた時代を生きている。過去の状況がやがて救われるものであることを知っている。けれど、当事者として時代を生きる者は、未来の出口を知らない。まさに闇の中でもがくしかない。過去を演じるということは、ある時代の全体状況を想像し、それを生きようとする途方もない試みだ。
 他者の声に、過去からの声に耳を傾ける。想像力を駆使して耳と目と心をすます。人は、「今」そして「私」の限られた世界が、普遍的なものだと思いがち。その曇りを払って、遠く深くを見渡したいと思う。そして未知を生き抜く力、創造力を武器にして新しい時代を開かなければならない。

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