第1条 この条例は、新型コロナウイルス感染症の感染が主としてクラスターの発生を契機として爆発的に拡大するおそれがあることに鑑み、感染拡大の危険性を著しく増大させるクラスターの発生という公衆衛生上緊急の対応を要する危険に機動的に対処し、新型コロナウイルス感染症のまん延の防止を図るとともに、新型コロナウイルス感染症の患者及びその治療、対応等に携わる者等を応援するなど県民及び事業者が一丸となって新型コロナウイルス感染症の克服に取り組むこととし、もって新型コロナウイルス感染症から県民の生命及び健康を保護し、県民の生活を守ることを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 新型コロナウイルス感染症 新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号。以下「特別措置法」という。)附則第1条の2第1項に規定する新型コロナウイルス感染症をいう。
(2) 積極的疫学調査 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症予防法」という。)第15条第1項の規定による調査をいう。
(3) クラスター 不特定又は多数の者が立ち入り、又はとどまる施設又は催物において新型コロナウイルス感染症の患者(感染症予防法第6条第11項に規定する無症状病原体保有者を含む。以下同じ。)が複数生じた場合における患者の集団であって、その人数が5名以上であるものをいう。
(4) 特定施設 病院その他の医療施設、老人福祉施設その他の社会福祉施設及び学校その他の教育施設並びに行政機関、公共交通機関、金融機関その他の県民が日常生活及び社会生活を営むに当たってその事業を継続することが必要不可欠となる施設をいう。
(県の責務)
第3条 県は、鳥取市保健所を設置する鳥取市と協力して、クラスターの発生の予防及び新型コロナウイルス感染症の感染予防に関する情報の提供、研修の機会の確保その他のクラスターの発生及び感染拡大を防止するために必要な啓発活動を行うとともに、クラスターの発生の予防をはじめとする新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策(以下単に「クラスター対策」という。)に取り組む事業者に対し必要な支援を行うものとする。
2 県は、新型コロナウイルス感染症の患者が発生した場合には、積極的疫学調査を行うとともに、クラスターの発生及び感染拡大の防止をはじめとする新型コロナウイルス感染症のまん延を防止するための必要な対策(クラスターが発生した施設の利用者又は当該施設を使用して開催された催物の参加者に対して新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため必要な情報を通知する情報システムの普及を含む。)を講ずるものとする。
(市町村の責務)
第4条 市町村は、県、県民及び事業者と協力して、クラスターの発生の予防に関する情報の提供、クラスター対策に取り組む事業者への支援及びクラスターが発生した場合における感染の拡大の防止に努めるものとする。
(県民及び事業者の責務)
第5条 県民(県内に滞在する者を含む。以下同じ。)は、自ら新型コロナウイルス感染症の感染予防に努めるとともに、クラスター対策及びクラスターが発生した場合における感染の拡大の防止のための対策に協力するものとする。
2 事業者は、事業活動を行うに際しては、従業者、顧客その他の事業活動に関わる者が新型コロナウイルス感染症の感染予防を行うための対策及びクラスター対策を適切に講ずるとともに、クラスターが発生した施設又は催物の従業者、利用者又は参加者への連絡その他のクラスターの発生の防止又はクラスターが発生した場合における感染の拡大の防止のための対策に協力するものとする。
3 県民及び事業者は、新型コロナウイルス感染症の感染予防を行うための対策及びクラスター対策を適切に講じている県内の事業者であって、新型コロナウイルス感染症の流行による売上げの減少その他これに類する事実が生じたものに対して、その商品又はサービスを積極的に購入し、又は利用するなどして、その事業活動を応援するよう努めるものとする。
(まん延防止のための措置)
第6条 県内の施設において、当該施設の設置者、所有者、管理者若しくはこれらの使用人その他の従業者又はその利用者若しくは当該施設を使用して開催される催物の参加者に係るクラスターが発生した場合には、当該施設の設置者、所有者、若しくは管理者又は当該施設を使用して催物を開催する者(以下「施設使用者」という。)は、直ちに、感染症予防法第27条から第33条までの規定により実施される措置と相まって、当該施設の全部又は一部の使用を停止するとともに、積極的疫学調査の的確かつ迅速な実施に協力(全ての従業者、利用者又は参加者に対する連絡を含む。)し、及び当該施設又は催物における新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するための適切な措置を講じなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、特定施設において、当該施設の設置者、所有者、管理者若しくはこれらの使用人その他の従業者又はその利用者若しくは当該施設を使用して開催される催物の参加者に係るクラスターが発生した場合には、施設使用者は、県と協議の上、直ちに当該施設又は催物における新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するための適切な措置を講ずるものとする。
3 第1項の規定により施設の全部又は一部の使用を停止した場合において、施設使用者若しくはこれらの使用人その他の従業者の他にクラスターの発生の原因について責めに任ずべき者があるとき(クラスターが当該者の故意により生じたものである場合に限る。)又は施設使用者若しくはこれらの使用人その他の従業者がクラスター対策を適切に講じていたにもかかわらずクラスターが発生したものと知事が認めるときは、県は、当該施設使用者に対し協力金を給付するものとする。
(公表)
第7条 知事は、県内の施設において、施設使用者若しくはこれらの使用人その他の従業者又はその利用者若しくは当該施設を使用して開催される催物の参加者に係るクラスターが発生した場合において、新型コロナウイルス感染症のまん延を防止するために必要があると認めるときは、発生した時期、施設又は催物の名称その他のクラスターが発生した施設又は催物を特定するために必要な事項及び当該施設又は催物におけるクラスター対策の状況を公表するものとする。ただし、施設使用者の協力によりクラスターが発生した施設又は催物の全ての従業者、利用者又は参加者に対して直ちに個別に連絡を行った場合は、この限りでない。
2 前項の規定による公表は、感染症予防法第16条第1項の規定による公表とみなして、同条の規定を適用する。
3 第1項の規定による公表に当たっては、従業者、利用者又は参加者の氏名、住所その他の特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は施設使用者の事業を不当に害する情報を公にしてはならない。ただし、積極的疫学調査を的確かつ迅速に実施するためその他新型コロナウイルス感染症のまん延を防止するため特に必要があると認めるときは、これに必要な最小限度のものを公にすることができる。
4 知事は、第1項の規定による公表を行った場合において、当該施設又は催物における新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するための措置及びクラスター対策が適切に講じられたと認めるときは、遅滞なく、その旨をインターネットの利用その他の方法により公表しなければならない。
(必要な措置の勧告)
第8条 知事は、第6条第1項に規定する場合において、施設使用者が正当な理由がなく直ちに同項の規定による適切な措置をとらないときは、当該施設使用者に対し、期間を定めて当該施設の全部又は一部の使用の停止その他の当該施設又は催物における新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するための措置及びクラスター対策を適切に講ずるよう勧告することができる。
2 知事は、前項の規定による勧告に係る施設又は催物について、当該勧告に従って新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するための措置及びクラスター対策が適切に講じられたと認めるときは、直ちに、当該勧告を中止しなければならない。
3 知事は、第6条第2項の規定による協議を受けるとき並びに同条第3項の規定による協力金の給付、前条第1項又は第4項の規定による公表、第1項の規定による勧告及び前項の規定による勧告の中止をするときは、業種又は施設の種別ごとに県内の関係団体等により定められた新型コロナウイルス感染症の感染拡大を予防するための対策に関する指針であって知事が別に指定するものを参酌するものとする。
(必要な最小限度の措置)
第9条 第7条第1項の規定による公表及び前条第1項の規定による勧告は、新型コロナウイルス感染症のまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない。
(県民等一丸となった新型コロナウイルス感染症への対応)
第10条 県民、事業者、県及び市町村は、新型コロナウイルス感染症の患者(患者であった者を含む。以下同じ。)及びその家族並びに医療機関に勤務する者をはじめとする新型コロナウイルス感染症の治療、対応等に携わる者を応援するなど、相互に連携を図りながら協力し、一丸となって新型コロナウイルス感染症のまん延の防止を図るものとする。
2 何人も、新型コロナウイルス感染症に感染したこと又は感染したおそれがあること、新型コロナウイルス感染症の感染を防止するための対策を適切に講じていないおそれがあること等を理由として、インターネット等を通じた誹謗中傷、著しく拒絶的な対応、不当な差別的言動その他の心理的外傷を与える言動又は不当な差別的取扱いをしてはならない。
3 何人も、新型コロナウイルス感染症に感染したこと又は感染したおそれがあること等を理由として、新型コロナウイルス感染症の患者及びその家族のプライバシーを侵害してはならない。
4 県は、第2項に規定する誹謗中傷、著しく拒絶的な対応、不当な差別的言動その他の心理的外傷を与える言動若しくは不当な差別的取扱い又は前項に規定するプライバシーの侵害(以下この項において「誹謗中傷等」という。)が行われないようにするため、予算の範囲内で、新型コロナウイルス感染症に関する正しい知識の普及啓発及び誹謗中傷等を被った者に対する支援その他必要な措置を講ずるものとする。
附則
(施行期日)
1 この条例は、令和2年9月1日から施行する。ただし、第10条の規定は、公布の日から施行する。
(この条例の失効)
2 この条例は、特別措置法附則第1条の2第1項の政令で定める日限り、その効力を失う。