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 令和4年3月25日に山根(やまね)一典(かずのり)氏ほか9名から請求のあった鳥取県職員措置請求について、監査委員4名で監査を行った結果、措置請求事項の一部については理由がないものと認め棄却し、一部については住民監査請求の要件を欠くため却下することを令和4年5月20日に決定しました。請求の要旨、監査した結果の概要は次のとおりです。
 なお、監査結果は、本日(5月20日)請求人に通知するとともに、鳥取県公報により公表します。

  

監査の概要

第1 請求の要旨

1 請求人の主張

 米子市淀江町小波地内に産廃施設設置を計画している公益財団法人鳥取県環境管理事業センター(以下「センター」という。)は、平成28年11月30日、鳥取県廃棄物処理施設の設置に係る手続の適正化及び紛争の予防、調整等に関する条例(以下「手続条例」という。)に基づく条例手続を県に申請し、関係住民との間で協議を続けてきたが、令和元年5月31日に知事が協議成立を断念して終結判断をした。
 これに伴い、県は令和元年度一般会計補正予算でセンター支援事業として補助金3,000万円、貸付金6,600万円を予算化し地質調査、詳細設計を行っている。県はさらに令和2年度一般会計当初予算で、埋蔵文化財本調査及び周辺整備計画策定準備に必要な経費を支援する目的で3,300万円を予算化、そのうちの周辺整備計画策定準備費は310万円で、センターは関係自治会の振興交付事業策定準備をA株式会社に委託し、事業を進めている。しかしながら、センターが実施している振興交付策定準備事業は、対象地域外の自治会を「関係自治会」とし、鳥取県産業廃棄物処理施設設置促進条例(以下「促進条例」という。)第6条に反するなど、促進条例及び手続条例(それぞれの施行規則を含む。)の規定に違反してなされた県費の違法な支出により実施されているもので、センターに交付した補助金は違法又は不当な公金の支出に当たり、県に損害を及ぼすから、その支出を差し止め、県が被った損害を補填するために知事又は職員が必要な措置を講ずるよう、地方自治法(以下「法」という。)第242条第1項の規定により請求する。

2 請求の理由

(1)手続条例が定める「周辺区域」対象外の区域でセンターが実施している周辺整備計画策定事業に交付されている補助金は違法かつ不当な公金の支出に該当する。

ア 施設周辺整備事業交付金は、産廃施設の設置促進を図る目的で(促進条例第1条)、「施設から500メートル以内の集落の地域及びこれに準ずるものとして知事が認めた地域」を「対象地域」として(促進条例第2条第1項第2号)、対象地域の生活環境の保全又は地域振興に資するもので地域住民の意見を反映した整備計画に定める事業(促進条例第6条第2項第1号)の実施に要する費用を負担する者に対し交付される(促進条例第7条)。
 センターは平成28年11月30日、事業計画(手続条例第5条)を、「周辺区域に存する自治会は6自治会」として周知計画書(同第6条)と添付書面及び図面(手続条例施行規則第6条第3項)を県に提出し、条例手続を進めてきた。
イ 手続条例は「周辺区域」を「施設等を設置する場所の周辺の区域であって規則で定めるもの」(手続条例第2条第12号)、「関係住民」を「周辺区域内に居住する者、周辺区域内に事務所又は営業所を有する者その他規則で定める者」(同第13号)とし、手続条例施行規則第4条第3号で産廃の最終処分場の敷地境界から500メートル以内の区域」、手続条例施行規則第5条第1号でこれを「周辺区域内に存する町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体(「自治会等」)」と、それぞれ具現化している。
 これらの条例及び規則の規定を現地の状況に当てはめれば、この区域内に存する「自治会等」の条件を満たす自治会は、上泉、下泉、福平の3自治会となる。
ウ ところが、センターと鳥取県生活環境部循環型社会推進課(以下「循環型社会推進課」という。)は、「周辺区域に存する字名は泉、小波、平岡であるから、この字の地域に住所を有するもので構成される自治会は関係自治会であり、小波上、小波浜、西尾原の3自治会もそれに含まれる」として、計6自治会を「周知対象者」とし、手続条例が求める周知計画書を作成して手続を進めてきた。
 しかしながら、小波浜、小波上、西尾原の各自治会は施設設置予定地から500メートルの範囲に入らないことが明白な地域に住所を持つ住民により組織された自治体であり、「対象自治会」には当たらない。
エ センターはこの手続条例の明文に反する解釈のもとに、促進条例所定の「対象地域」(第2条第1項第2号)とその地域内に住所を有する「地域住民」(同第3号)に該当しない者の利益のために着々と周辺整備計画策定事業を進めつつある。
 これらの工事の一端を示せば次のとおりである。
 西尾原自治会の場合、河川改修、集会場建設、防火水槽の設置、墓下斜面崩落対策等がコンサルタント会社によって、積算作業が行われている。
オ 以上の理由から、手続条例が定める「周辺区域」に該当しない地域の自治会を参入させて、「周辺区域」外の地域において周辺整備計画策定事業を実施することは、県が自ら定めた条例に違反し、それに公金を支出することは違法かつ不当であり、県に財産上の損害を与えるものである。

(2)センターが予定する米子市有地に、産廃施設を設置することはできない。

ア センターが産廃施設設置を予定している土地は、米子市と合併する前の旧淀江町の町有地であり、計画地面積の約48%を占める。しかし、この土地に産廃施設を設置することはできない。

 この土地については、不燃物最終処分場が建設された平成4年5月21日に旧淀江町と環境プラント工業株式会社との間で「開発協定」が結ばれ、第1条で「不燃物最終処分場の建設を行い、もって鳥取県西部広域行政圏の衛生事業に寄与するものとする」と事業の目的を定めた上、第4条で「土地を第1条所定の目的以外の用途に供してはならない」と取り決めているからである。産廃施設設置が「土地を第1条所定の目的以外の用途に供する」ものであることに疑問を容れる余地はない。
イ 当初、この事業を計画し準備を進めたのは環境プラント工業株式会社であったが、平成20年に事業主体がセンターに変わり、その間、鳥取県、米子市、センター、環境プラント工業株式会社はいずれも、この「開発協定」のもとでは産廃施設設置はできないとの認識を共有していた。
ウ 上記のことから、センターの事業計画書に示されている計画地は存在しないことになる以上、これまでセンターが産廃施設設置をめざして進めてきた条例手続は全て無効に帰し、地質調査や詳細設計に支出された県費9,600万円は違法かつ不当な支出として県に回復できない損害を与えるものとなる。

3 措置請求

 センターは、開発協定が一般廃棄物処理場以外の目的への使用を禁じている米子市有地に産廃施設設置を計画した上、条例・規則が定める周辺区域の関係住民である、関係自治会の範囲を拡張して周辺整備事業の準備を進めている。この事業について、県がセンターに補助金を交付しているのは違法、不当な公金支出であるから、厳正な監査を行って、県の被った損害を補填するため知事又は職員に必要な措置を講じさせることを求めるものである。

第2 請求の受理

 監査委員は、請求人が財務会計上の公金支出の不当性を主張しており、また、本件請求のあった日は、当該行為の終わった日から1年を経過していないことから、法第242条に規定する請求の要件を具備しているものと認め、令和4年4月6日付けで受理した。

第3 請求人の証拠の提出及び陳述の機会

 請求人に対して、法第242条第7項の規定に基づき、令和4年4月25日に証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、新たな証拠の提出及び請求人のうち7名の陳述があった。

第4 監査の実施

1 監査対象事項

 本件請求書及び陳述の要旨から、本件の監査対象事項について、「補助金及び貸付金の支出が、法第242条第1項に規定する違法又は不当な公金の支出に当たるかどうか。」とした。

2 監査対象機関

 循環型社会推進課

 

3 関係人

 センター

 

4 監査の実施方法

 監査委員は、補助金については鳥取県補助金等交付規則(以下「規則」という。)及び公益財団法人鳥取県環境管理事業センター整備事業費補助金交付要綱を基に交付しており、貸付金については産業廃棄物管理型最終処分場整備資金金銭消費貸借契約を基に支出されたものであるので、それらを基準として適否を判断することとした。

 

5 監査の実施期間

 令和4年4月6日から同年5月16日まで

第5 監査の執行者

監査委員 桐林 正彦
監査委員 山根 朋洋

監査委員 奈良井 恵
監査委員 福田 俊史 

第6 本件請求に係る監査の結果(抜粋)

1 監査対象機関及び関係人から確認した事実

(1)請求の理由(1)について

 補助金及び貸付金の目的、申請の経過等は次の表のとおりである。

項目・日付

令和2年度公益財団法人鳥取県環境管理事業センター整備事業費補助金

根拠

  • 鳥取県補助金等交付規則
  • 公益財団法人鳥取県環境管理事業センター整備事業費補助金交付要綱(以下「要綱」という。)

内容

(要綱第2条 交付目的)

センターの活動を支援することにより、産業廃棄物処理施設の確保等を通じた産業廃棄物の適正な処理を推進し、もって産業の発展と地域住民の健康で快適な生活環境の保全に寄与することを目的とする。

対象経費等

(別表)

補助事業:周辺整備計画策定準備事業

補助対象経費:補助事業に要する委託費(周辺整備計画策定事業費の積算費用、資料作成費)、その他特に必要と認められる経費

補助率:10分の10

令和2年4月 8日

交付申請

 算定基準額33,300,000円

 交付申請額23,233,000円

  • 埋蔵文化財本調査(補助率3分の2)(本件措置請求の対象外)

20,133,000

  • 周辺整備計画策定準備(補助率10分の10)

3,100,000

令和2年4月13日

交付決定

交付決定額 23,233,000円

令和2年5月20日

概算払 23,233,000円(全額)

令和3年4月13日

実績報告 実績額  22,824,266円

  • 埋蔵文化財本調査   20,074,266円(本件措置請求の対象外)
  • 周辺整備計画策定準備  2,750,000円

令和3年4月30日

県の補助金検査

令和3年5月12日

額の確定 確定額 22,824,266円 (408,734円返納)

(2)請求の理由(2)について

 ア 補助金及び貸付金の目的、申請の経過等

項目・日付

令和元年度公益財団法人鳥取県環境管理事業センター整備事業費補助金

令和元年度産業廃棄物管理型最終処分場整備資金貸付金

根拠

  • 鳥取県補助金等交付規則
  • 公益財団法人鳥取県環境管理事業センター整備事業費補助金交付要綱
  • 産業廃棄物管理型最終処分場整備資金金銭貸借契約書

目的等

センターの活動を支援することにより、産業廃棄物処理施設の確保等を通じた産業廃棄物の適正な処理を推進し、もって産業の発展と地域住民の健康で快適な生活環境の保全に寄与することを目的とする。

産業廃棄物管理型最終処分場の整備に係る事業費(詳細設計、測量、地質調査、用地調査)に充当

事業費

96,000,000

令和元年10月23日

交付申請

資金借入申込み提出

令和元年10月28日

交付決定

 算定基準額 45,000,000円

 交付決定額 30,000,000円

  • 測量  27,000,000円

(補助率3分の2 18,000,000円)

  • 地質・用地 18,000,000円

(補助率3分の2  12,000,00円)

金銭消費貸借契約締結

金額:66,000,000円

契約日:令和元年10月28日

貸付日:令和元年11月15日

償還日:施設稼働日から9年が経過した日の属する年度の年度末

償還方法:満期一括返済

  • 測量 9,000,000円
  • 地質・用地 6,000,000円
  • 詳細設計 51,000,000円

令和元年11月15日

概算払 30,000,000円

貸付66,000,000円

令和2年3月5日

決算見込み提出

令和2年3月6日

令和元年度繰越明許費承認議決

30,000,000円確保

※繰越承認申請期限(3月20日)内に繰越申請書を総務部長へ提出しなかったため、令和元年度繰越予算に計上されなかった。

令和2年3月10日

借入額の変更契約(年度末精算)

 変更後:50,300,000円

(15,700,000円 返納)

令和2年3月23日

変更承認申請

変更の理由:令和元年度内の業務完了が困難であり、実施期間を令和3年3月31日まで延長

変更承認通知(同日付)

令和2年4月13日

進捗状況報告書

令和元年度における実績 0円

令和2年7月31日

令和2年度予算を確保するため財政課へ流用協議→センターから令和元年度不執行分の返納を求め、改めて令和2年度予算の流用で対応。

令和2年8月4日

財政課了解

令和2年8月6日

県から進捗状況報告に伴う令和元年度分の返納について通知

令和元年度概算払分30,000,000円返納

令和2年8月20日

概算払申出書提出(令和2年度予算)

令和2年8月25日

概算払通知

令和2年9月4日

概算払 30,000,000円

令和3年4月12日

経理状況等の報告を提出

令和3年4月14日

実績報告提出

令和3年4月30日

県の補助金検査

県の貸付金検査

令和3年5月12日

額の確定通知

確定額 29,994,799円

(5,201円返納)

令和3年5月13日

借入額の変更契約(実績による精算)

 変更後:49,222,801円

(1,077,199円 返納)

事業費計

29,994,799+49,222,801=79,217,600円

イ 開発協定について

 本協定は、鳥取県開発事業指導要綱に基づき、平成4年5月21日旧淀江町と環境プラント工業株式会社との間で不燃物最終処分場の建設に当たり締結されたものである。その後、手続条例の施行により、同様の案件であっても、条例手続の中で他法令の手続状況を確認することから、同指導要綱は適用除外となっている。

 

2 監査の結果
(1)請求に係る補助金交付手続等の内容確認について

 請求人は、本件補助金等の交付についてその違法又は不当性を主張しているが、監査の前提として請求に係る公金の支出の手続について確認したところ、違法又は不当な事実は認められないことを確認した。

 

(2)請求の理由(1)に対する監査委員の判断

 手続条例では産業廃棄物処理施設の設置に係る手続の適正化を図るため、その手続の対象となる「周辺区域」及び「関係住民」を規定しているが、「周知の対象とする地域」は周辺区域及び当該区域との関連において関係住民に位置付けられた自治会等がある場合には、その区域を併せた範囲となる。
 センターは手続条例、手続条例施行規則、マニュアル及び手引に基づいて、6自治会を「関係住民」と位置付け、県は関係市町村である米子市への照会を経て適正に確認している。
 付言すれば、請求人は、本件に関して手続条例等の規定に基づく周辺区域は、センターが最終処分場の事業区域として想定している敷地の境界から500メートル以内の区域である「周辺区域A」のみであるとして、最終処分場からの排水が公共水域に排出される地点から概ね100倍に希釈される地点までの区域である「周辺区域C」については言及していないことが判断の差異の一因となっていると考えられる。
 また、陳述において発言のあった、センターもしくは循環型社会推進課が周辺区域に存する字が泉、小波、平岡であることを理由としてこれら字の区域に住所を有する者で構成される自治会等である6自治会を関係住民である自治会等と位置付けている事実は認められなかった。
 一方、促進条例は産業廃棄物処理施設周辺整備事業交付金の対象となる「対象地域」を定義し、対象地域に係る事業について周辺整備計画を策定できることとしている。さらに促進条例では周辺整備計画に定める事業について地域住民の意見を反映することとされている。周辺整備計画策定準備事業は、対象地域の周辺整備計画策定の準備を行っているものである。
 対象地域は、産廃施設がまだ許可されておらず確定していないが、促進条例では「施設から500メートル以内の集落の地域」及び「これに準ずるものとして知事が認めた地域」となっており、運用通知で促進条例の「対象地域」は、最終処分場の場合にあっては、特段の理由がない限り、手続条例の「周知の対象とする地域」と同一範囲となるものである、と記載されている。
 さらに、第7 本件請求に係る監査の結果 1 監査対象機関から確認した事実 (1)請求の理由(1)について アに記載したとおり、令和2年度と令和3年度(本件措置請求の対象外)においては、西尾原自治会から要望のあった防火水槽の新設、公民館の建替に要する費用の積算を行っていることから、今後対象地域となると考えられる地域に対する周辺整備計画策定準備事業に補助金を交付するものであり違法又は不当性は認められない。

  
(3)請求の理由(2)に対する監査結果及び監査委員の判断

 請求人の主張する「違法」又は「不当性」の内容について整理し、監査委員として次のとおり判断する。
 請求人の主張は、現在センターが産廃施設設置を計画している米子市有地は、旧淀江町と環境プラント工業株式会社との間で締結された開発協定に基づき、一般廃棄物処理場以外の目的への使用を禁じているものであり、現協定のもとでは産廃施設の設置はできない、というものである。
 本県に対する住民監査請求は、本県の職員が行った違法又は不当な財務会計行為が対象である。しかしながら、県の開発指導要綱を1つの背景としているとは言え、開発協定を締結したのは、米子市と環境プラント工業株式会社であり、県の職員が行った行為ではない。
 よって、開発協定の内容や変更の可否に関する解釈等の権限は、専ら協定の当事者である米子市と環境プラント工業株式会社が有しており、県の監査の権限は及ばないと判断した。
 なお、県のセンターに対する支出は、条件付きで市有地を処分場設置に利用してもよいとする米子市からセンター宛ての文書を確認し、市有地に関する権限の取得の可能性が高いことを認識した上で実施されていることを確認しており、その限りにおいて違法または不当性は認められない。

 
(4)本件請求に対する結論

 以上から、措置要求事項の「手続条例が定める「周辺区域」対象外の区域でセンターが実施している周辺整備計画策定事業に交付されている補助金は違法かつ不当な公金の支出に該当する。」については、棄却する。
 また、措置請求事項の「センターが予定する米子市有地に産廃施設を設置することはできない。」については、却下する。

  

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