防災・危機管理情報


  コロナ禍の自粛生活の影響で、高齢者の認知症リスクが高まっています。脳の機能は、正しい知識と対策で高めることが可能。リスクを下げる生活習慣を今すぐ実践しましょう。

コロナ禍のリスクに注意

  新型コロナウイルス感染症の流行下では、多くの高齢者が自粛生活を余儀なくされました。民間企業の調査(株式会社ニッセイ基礎研究所レポート「コロナ禍における高齢者の活動の変化と健康不安への影響」より)では3割近くの高齢者で外出・運動時間が減少し、約6割が他者との交流が減ったと回答。こうした身体活動や社会活動の低下で懸念されるのが、認知症リスクの上昇です。
  日本は、人口の約3割を65歳以上の高齢者が占める世界一の長寿大国。2025年には高齢者の5人に1人、およそ700万人が認知症になると予想されています。認知症になっても安心して暮らせる社会を目指すと同時に、一人一人が認知症予防に取り組むことが必要です。

正しい理解で早期対処を

  認知症は特定の病気の名前ではなく、「症状」を指す言葉。さまざまな病気によって記憶力や判断力などの脳の認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障が生じている状態をいいます。
  認知機能の衰えがあっても生活への影響はないレベルは、MCI(軽度認知障害)と呼ばれる認知症の前段階。このうち約半数は5年以内に認知症へ進行するとされますが、4割はMCIに留まり、1割は正常範囲へ回復するなど、早期の対応と適切な治療で進行を抑制できることが分かっています。
  認知機能を維持するために、日頃から心身の健康を保ち、脳を働かせる生活を意識しましょう。MCIになっても決して諦めず、早期受診で治療につなげることが重要です。

おかしいな?と思ったら早めの相談を

各市町村の地域包括支援センター
かかりつけ医や「物忘れ外来」などの専門医療機関
鳥取県認知症コールセンター
電話 0859‐37‐6611(月曜日から金曜日午前10時から午後6時)
詳しくはウェブサイトをご覧ください
https://www.pref.tottori.lg.jp/33687.htm

正しく知って予防・早期診断を

鳥取大学医学部 認知症予防学講座 教授
一般社団法人日本認知症予防学会代表理事

浦上(うらかみ) 克哉(かつや)さん
浦上克哉さんの写真

Q 認知症はどのくらい予防できるのでしょうか?
  認知症リスクの4割は生活習慣などに起因しています。つまり努力次第で4割予防できる病気であると言えます。

Q 認知症になってしまうと、もう治らないのですか?
  認知症になると脳神経細胞の7割から8割が死んでしまい、残念ながら回復することはありません。しかしまだ神経細胞が生きているMCIの段階であれば間に合います。だから予防と早期診断が大切なのです。

Q どうしたら早く症状に気付くことができますか?
  本人は「おかしい」と感じても認めたくない気持ちがあるもの。ポイントは「家族の目」です。2、3年前はできていたことができなくなっていませんか。離れて暮らす人は、できれば泊まりがけで里帰りを。一晩共に過ごせば本当の姿が見えてきます。

Q 何歳くらいから気をつけた方がよいのでしょうか?
  一般にMCIは65歳から75歳、認知症は75歳から80歳以上が要注意。脳の衰えは発症の20年前から始まっており、予防は40代からでも早すぎることはありません。若いうちから正しい生活習慣を身に付け、長く続けられる趣味なども見つけておきましょう。

Q 予防を始める上で大切なことは何でしょうか?
  正しい知識を持つことです。例えば中年期と高齢期で必要な対策は異なり、自己流ややりすぎは逆効果になる場合も。科学的根拠のある対策をバランス良く続けてください。

Q 新型コロナでさまざまな活動を控えている人もいます
  自粛生活は脳の認知機能を悪化させます。新型コロナだけでなく、全身の健康を大切にしてください。ICT機器なども上手に活用しながら意識して予防に取り組みましょう。

Q 今後、予防や治療はどのように進化していくでしょうか?
  認知症予防の科学的知見が明らかになってきたのはここ数年です。今後も研究が進み、新たなリスク因子や有効な対策が見つかっていくでしょう。新薬への期待も高まりますが、治療は早期に始めてこそ効果を発揮するもの。予防と早期診断が重要であることに変わりはありません。
  認知症は医師が一人でできることは少なく、家族や地域社会の関わりが重要な病気です。社会に認知症の正しい理解が広がるよう力を尽くしたいと思います。

■認知症に早期に気づくポイント

記憶障害
部分的ではなく、全体を忘れる
昼食に何を食べたのか、だけではなく、昼食をとったこと自体を忘れる
話の内容ではなく、話をしたこと自体を忘れる→同じことを何度も尋ねる

見当識障害
時間や日付を間違えることが多くなる

判断力や思考力の低下
考え分けができない、すぐ混乱する
2つの作業をして、1つを忘れる
自動販売機やATMなどの前でまごつく
複雑な話を理解できない

実行機能障害
物事をスムーズに進められない
自分で計画を立てられない
変化に対応できない
買い物で同じものを買う

行動・心理症状
自信を失い、意欲がなくなった
身の回りに無頓着になった
怒りっぽくなった、疑い深くなった

取り繕い
忘れたことを認めず、屁理屈を言ってごまかすことが多くなった

食い違い
「できないこと」の認識が、本人と家族で食い違っている

出典:浦上克哉(2021」).『科学的に正しい認知症予防講義』.翔泳社

とっとり方式認知症予防プログラム

  「運動」「座学」「知的活動」の3つを組み合わせた一連のサイクルを週1回継続して行うプログラム。認知機能の改善効果が科学的に実証されています。ウェブサイトで動画を公開中。
https://www.pref.tottori.lg.jp/33673.htm

運動
足踏みプラスグーパー運動の写真

座学
座学の様子

知的活動
知的活動の様子

自宅で気軽に!脳とからだの健康プログラム配信中

  スマートフォンなどの画面を見ながら、一緒に頭と体を動かしませんか。週2回、1回30分、自宅で好きな時間にチャレンジできます。詳細・申し込みはウェブサイトをご覧ください。
https://www.pref.tottori.lg.jp/33673.htm
脳とからだの健康プログラムの配信を見ている様子

鳥取県‐脳とからだの健康LINE
  認知症予防や健康に役立つ情報をLINEでお届けします。友だち登録で、脳によい生活を目指しましょう。
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予防で高齢期を健やかに

  現在は認知症を防ぐ絶対的な方法はありませんが、研究が進み、認知症になりにくくするポイントが分かってきました。全体の7割近くを占める「アルツハイマー型認知症」は脳内の異常なタンパク質の蓄積が原因とされ、約2割に当たる「血管性認知症」は、脳梗塞や脳出血といった脳の血管障害に起因。予防には、こうした病気の原因を作りにくくする体づくりが有効です。
  脳の老廃物は40代から蓄積が始まるといわれており、高齢者はもちろん、ミドル世代にとっても決してひとごとではありません。「認知症リスクを下げる12のポイント」を、ぜひ普段の生活に取り入れてみてください。
  県独自の「とっとり方式認知症予防プログラム」を開発した鳥取大学・浦上克哉教授は、「認知症を予防する暮らしは、人生を豊かにする暮らし方でもある」と語ります。いつまでも自分らしく健やかな高齢期を過ごすために、今から認知症予防を始めましょう。

地域の仲間と楽しく続ける

岩美駅前長寿会 会長
向家(むかいえ) (ひとし)さん
向家仁さんの写真

  岩美駅前長寿会は地域の老人クラブ「岩美駅前クラブ」の健康サークルです。以前から岩美町独自の介護予防体操に取り組んでいましたが、「とっとり方式認知症予防プログラム」の重要性を学んだ向家仁会長が「知的活動」の導入を決意。昨年から県老人クラブ連合会や町の社会福祉協議会、地域包括支援センターのサポートを受け、「運動」と「知的活動」をセットにした認知症予防を進めています。
  月2回の活動日にあたる10月13日には、約20名のメンバーが参加。秋晴れの中、満開のコスモスを背に心地よく体を動かしました。運動後の「知的活動」では、新聞紙を丸めた玉入れゲームや同時に叫んだ複数の単語を聞き分ける聖徳太子ゲームにチャレンジ。注意力や判断力、空間認識力などを楽しみながら鍛えられるのはもちろん、仲間と一緒に挑戦し、笑い合う喜びは何よりの元気の源です。
  「活動を通じて仲間の元気な姿に会えるのが嬉しい」と話す向家さん。参加が難しい高齢者には活動状況を知らせる便りを送るなど、地域のつながりを保つ工夫も欠かしません。
  認知機能検査を通じた活動効果の検証も進めており、岩美駅前長寿会の成果が全県に広がっていくことが期待されます。

屋外で体操をする様子
晴れた日は屋外で心地よく体を動かして。介護予防体操や知的活動を通じ、地域の仲間と共に認知症予防に取り組む「岩美駅前長寿会」のみなさん

玉入れゲームの様子
チーム対抗で盛り上がる「玉入れゲーム」。集中力や距離感をつかむ力が鍛えられる

認知症リスクを下げる12のポイント

1 定期的な運動
  有酸素運動の散歩が最適。楽しみながら、1日30分を週3回から4回

2 禁煙
  喫煙者はアルツハイマー型・血管性認知症の危険が約1.8倍

3 健康的な食生活
  魚や野菜・果物を多く、コレステロールや飽和脂肪酸は控えめに

4 節度ある飲酒
  お酒は食事と一緒にゆっくりと。1日に日本酒なら1合、ビールなら500ミリリットルが適量の目安

5 体重のコントロール
  肥満にも痩せすぎにも注意。BMI[体重(キログラム)÷(ワル)身長(メートル)の2乗]20前後がベスト

6 血圧のコントロール
  高血圧治療でアルツハイマー型認知症の危険が6割、血管性認知症の危険が5割減少

7 血糖のコントロール
  糖尿病患者のアルツハイマー型認知症の危険は約2倍。治療で脳のタンパク質沈着が減少

8 脂質のコントロール
  高コレステロール血症があると認知症リスクは約2倍。肥満、高血圧が合わさると約6倍

9 こころの健康の維持
  うつ病があると認知症のなりやすさは2倍。強いストレスは、脳にダメージ

10 聴力の維持
  難聴は認知症発症への影響大。放置せずに耳鼻科を受診し、補聴器などで聴力維持

11 知的活動への取り組み
  人と会話し、手や体を動かす趣味や活動を。いつまでも知的好奇心や挑戦意欲を忘れずに

12 社会的活動への参加
  社会的交流の少ない人は、多い人の8倍認知症になりやすい。1日1回、自分から会話を

【問い合わせ先】 県庁長寿社会課
電話 0857‐26‐7177 ファクシミリ 0857‐26‐8168
メールアドレス choujyushakai@pref.tottori.lg.jp



 

 

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