1 身体拘束等の適正化に関する基本的な考え方
(1)施設としての理念
ア 身体拘束等の原則禁止
身体拘束等は利用児童等の生活の自由を制限することで重大な影響を与える可能性がある。
鳥取県立皆成学園は、利用児童等の尊厳に基づき、安心・安全が確保されるように基本的な仕組みをつくり、施設を運営するため、身体的・精神的に影響を招く恐れのある身体拘束等は、緊急やむを得ない場合を除き原則として実施しないものとする。
イ 身体拘束に該当する具体的な行為
<参考>身体拘束禁止の対象となる具体的な行為(「身体拘束ゼロへの手引き」
(平成13年3月 厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」))
1.徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢を紐等で縛る。
2.転落しないように、ベッドに体幹や四肢を紐等で縛る。
3.自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
4.点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢を紐等で縛る。
5.点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚を搔きむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
6.車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、安全ベルト(Y字型拘束帯や腰ベルト)、車椅子テーブルをつける。
7.立ち上がる能力のある人に、立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
8.脱衣やオムツ外しを制限するために、介護衣(つなぎ服)を使用する。
9.他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢を紐等で縛る。
10.行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
11.自分の意志で開けることのできない居室等に隔離する。
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ウ 目指すべき目標
3要件(切迫性・非代替性・一時性)の全てに該当すると委員会において判断された場合、本人・ご家族への説明・確認を得て拘束等を実施する場合もあるが、その場合も利用児童等の態様や支援の見直し等により、拘束等の解除に向けて取り組む。
(2)施設としての方針
次の仕組みを通して身体拘束等の必要性を除くよう努める。
ア 利用児童等の理解と支援の向上により身体拘束等のリスクを除く。
利用児童等の特性を理解し、身体拘束等を誘発するリスクを検討し、そのリスクを除くための対策を実施する。
イ 管理職(施設長、次長、養護課長)、各課各棟の総括責任者等が率先して施設内外の研修に参加するなど、施設全体の知識・技能の水準が向上する仕組みをつくる。特に、被虐待経験、知的障がい、行動障がいによる行動特性・心理状態について施設全体で習熟に努める。
ウ 身体拘束等の適正化のため利用児童等、保護者(保護者または家族)と話し合う。
利用児童等と保護者(または家族)にとってより安心安全な環境・支援について話し合い、身体拘束等を希望されてもそのまま受け入れるのではなく、対応を一緒に考える。
2 身体拘束等の適正化のための体制
次の取り組みを継続的に実施し、身体拘束等の適正化のため体制を維持・強化する。
(1)身体拘束等の適正化を検討する委員会の開催
ア 虐待防止委員会
虐待防止委員会において、本施設で身体拘束等の適正化を目指すための取り組み等の確認・改善を検討する。過去に身体拘束等を実施していた利用児童等に係る状況の確認を含む。
特に、緊急やむを得ない理由から身体拘束等を実施している場合(実施を開始する場合を含む)は、身体拘束等の実施状況の確認や3要件を具体的に検討する。
委員会は年三回の定期開催とし、必要に応じて臨時委員会を開催する。
委員会の報告は皆成学園統括委員会にて行い、統括委員長(園長)の指示事項があれば委員会内で検討する。検討結果は統括委員会で報告し、統括委員長の承認後、委員会報告DBにて全職員へ周知する。
また、虐待防止責任者(園長)が虐待に関する報告を受け、その内容を虐待(疑いを含む不適切な対応事例)と判断した場合は、委員会で原因の分析や再発防止策を検討し、改善策を講じる。
イ 虐待調査委員会
虐待防止責任者(園長)が虐待(疑いを含む)の報告を受けた後、虐待調査委員を参集する。
虐待調査委員会において、虐待の事実(経緯、理由、状況等)を確認し、調査結果(虐待の有無の判断)と初動対応方針について検討する。調査結果と対応方針については、皆成学園委員会DBを用いて全職員へ報告する。
虐待防止責任者(園長)は、必要に応じて利用児童等や家族への説明、関係機関(児童相談所長、市町村)への通告と協力依頼、子ども発達支援課長への報告を行う。併せて、虐待防止委員会へ原因分析を指示、改善計画を最終確認後、当該職員への報告、指導を行う。
(2)委員会の構成員
ア 虐待防止委員会
総務課、育成課、養護課、『エール』発達障がい者支援センターより選出するほか、必要に応じてその他必要とされる者(委員以外の皆成学園職員、第三者委員、利用者の代表)を加える。
委員長は構成員の中から園長が指名する。
イ 虐待調査委員会
虐待防止責任者(園長)、次長、エール所長、養護課長、育成課長、虐待防止マネージャー(児童発達支援管理責任者)、保健師
(3)構成員の役割
ア 虐待防止委員会
虐待防止マネージャー(児童発達管理責任者)を中心に、虐待防止及び身体拘束等の廃止・適正化に向けた取り組みを具体的にすすめる。
〇定期開催
・招集者 虐待防止委員長
・記録者 「虐待防止委員会年間計画」に沿って各委員が行う。
〇臨時開催
・招集者 虐待防止委員長
・記録者 虐待防止委員長が指名する。
イ 虐待調査委員会
虐待防止責任者とともに、直ちに虐待の疑いの有無及び緊急対応が必要な場合か否かを判断し、直面する虐待に係る緊急の初動対応方針を速やかに決定する。
・招集者 虐待防止責任者(園長)
・記録者 招集時に決定
(4)委員会の検討項目
ア 虐待防止委員会
〇身体拘束等について
・前回の振り返り
・3要件(切迫性、非代替性、一時性)の再確認
・意識啓発や予防策等必要な事項の確認、見直し
・今後の予定(研修、次回委員会)
・今回の検討内容、結果のまとめ、共有
〇虐待防止について
・マニュアルの見直し、変更
・重点目標の共有・評価
・「人権擁護チェック表」による調査、評価
・園内研修(委員会主催研修、人権研修)内容検討
・外部研修受講の検討、研修報告
・職場環境作り
〇虐待(疑い含む)事案発生時
・原因分析、改善計画作成(虐待防止責任者へ改善計画提案)
・全職員へ改善計画を周知
イ 虐待調査委員会
・通報者の保護
・聴取者及び記録者の決定
・虐待の事実(経緯、理由、状況等)確認
・調査結果(虐待の有無の判断)と初動対応方針の検討、全職員への報告(当該職員への報告、指導は虐待防止責任者が行う)
・外部機関の調査を受ける場合は、指示に沿って対応する。
(5)記録及び周知
委員会の検討内容、結果は皆成学園委員会DBを用いて全職員へ周知する。
3 職員研修
(1)研修会開催の頻度
ア 身体拘束等の適正化のための研修会
・包括的暴力防止プログラム研修会
日本こころの安全とケア学会が定める包括的暴力防止プログラムトレーナー養成研修を受講、トレーナー資格を取得した職員が講師となり、年1回以上の頻度で定期的に開催する。
・その他、必要な研修会を実施する。
イ 虐待防止研修
年1回の頻度で定期的に開催する。
ウ 人権研修
年1回の頻度で定期的に開催する。
エ 新任者(新人採用時、中途採用時)に対する身体拘束等の適正化研修の実施
(2)研修の記録
皆成学園委員会DBに実施者、実施日、実施場所、研修名、内容(研修概要)を記載し、研修資料を添付する。
(3)研修受講
・虐待防止研修
・人権研修
・メンタルヘルス研修
・強度行動障がい者基礎研修、実践研修の受講
・包括的暴力防止プログラムトレーナー養成研修、フォローアップ研修等の受講
・その他必要な研修
4 緊急やむを得ず身体拘束等を行わざるを得ない場合の対応
(1)3要件の確認
・切迫性
児童本人又は他の入所児童等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
・非代替性
身体拘束等その他の行動制限を行う以外に代替する支援方法がないこと
・一時性
身体拘束等その他の行動制限が一時的なものであること
(2)要件の合致確認
利用児童等の態様を踏まえ、虐待防止委員会が必要性を判断した場合、限定した範囲で身体拘束等を実施することとするが、拘束等の実施後も日々の態様等を参考にし、同委員会で定期的に再検討し解除へ向けて取り組む。
(3)記録等
緊急やむを得ず身体拘束等を行わざるを得ない場合、次の項目について具体的に児童本人及び保護者(または家族)へ説明し書面で確認を得る。
・拘束等が必要となる理由(個別の状況)
・拘束等の方法(場所、行為(部位・内容))
・拘束等の時間帯及び時間
・特記すべき心身の状況
・拘束等の開始及び解除の予定(※特に解除予定を記載する)
※参考様式 1.個別支援計画書、2.安全確保に関する同意書
5 身体拘束等に関する報告
緊急やむを得ない理由から身体拘束等を実施している場合には、身体拘束等の実施状況や利用児童等の日々の態様(時間や状況ごとの動作や様子等)を皆成学園ヒヤリ・ハットDBまたは生活記録に記録し、虐待防止委員会で拘束等の解除に向けた確認(3要件の具体的な再検討)を行う。
6 身体拘束等の適正化に向けた取り組みの評価
モニタリング記録表(入所事業及び短期入所事業関連)または児童発達支援実施記録(児童発達支援事業関連)に身体拘束等の適正化に向けて取り組んだ内容と結果を記載し、取り組みの評価を行う。
(取り組みの内容と結果には、個々の意向やニーズに沿った支援について工夫した点、工夫することによって身体拘束等の回数が減少或いは必要がなくなったこと等を記載する。)
取り組みの評価は、今後の身体拘束等の適正化事例の積み重ねとして支援に役立てる。
7 利用児童等及び保護者(または家族)による本指針の閲覧
本指針は、本施設で使用するマニュアルに添付し、全職員が閲覧を可能とするほか、利用児童等や保護者(または家族)が閲覧できるよう施設への掲示や施設ホームページへ掲載する。
附則 本指針は令和5年4月1日より施行する。