昔話は地域の歴史や文化を知るきっかけになるよね。鳥取市佐治町には「日本三大おろか話」のひとつ「佐治谷ばなし」が伝わっているんだ。佐治の谷の奥深くに住んでいる人々のおもしろおかしな物語だよ。 佐治谷には、この『かにのふんどし』以外にも、『にんどうかずら』や『さしさば』など、たくさんの話が伝わっています。
むかーしむかし、佐治の山奥に住いる若衆が、海沿いの村からお嫁さんをもらって暮していました。あるとき、お嫁さんが実家に帰っており、男がその嫁の家に遊びにいくことになったのですが、焦ったのはこの男の両親でした。
息子は行儀作法をまったく知りません。嫁の実家で恥ずかしい真似をしないだろうかと心配した両親は、出発の日の朝、大急ぎで息子に言聞かせました。「よいか、嫁の家に行ったら、この時期のことだから、かにというものがごちそうにでてくるに違いない。かにというものは、まずはふんどしをはずして食べるというのが作法だぞ」。
男はうんうんとうなずき、嫁の実家に向かいました。夕方、男が無事到着すると、「さあさあ婿どの、疲れたでしょう。まずは先に湯に入ってくだされ」と母親が風呂に案内しました。
「やれやれ、いい湯だったな」。風呂から上、男が気分よく一服していると、夕食のお膳が出きて、予想どおり大きなかにが出てきました。「これだなあ」。男は得意気に立上がると、袴を脱いで自分のふんどしをはずし、それをきちんとたたんでからゆっくり、かにのお膳に箸 をつけたということです。
とりっ子通信第18号より