ある漁師の集まりで、珍しい料理が出されました。聞くと「これは人魚の肉で、食べると長生きできる」とのこと。みんな気味悪がって帰りの船から海に投げ捨たのですが、一人だけ酔っぱらって肉を家に持ち帰った漁師がいました。その家の18才の娘は、酔って眠ってしまった父親の着物から出てきたその肉を「おみやげだ」と思って食べてしまったのです。
それからというもの、その娘は何年たっても姿は18才のまま。みんな年をとって死んでいくのに、自分だけ生き残るのは寂しかったのでしょう。尼になって粟嶋にある洞くつにこもり、何日かして静かに息を引き取ったそうです。そのとき、娘は800才。村人たちはこの娘を「八百比丘さん」と呼んで、ていねいにまつったそうです。
今でもこの洞くつは残っていて、長生きを願う人や若い恋人たちがお参りにくるそうです。
「八百比丘」は、「はっぴゃくびく」または「やおべく」と読みます。「比丘」とは、女のお坊さんのことです。
とりっ子通信第15号より