防災・危機管理情報


 この漁業は長い歴史があり、天正年間(1573-1591)には、おそらく漬木を使用していたと思われるが、釣りによるシイラ漁業が営まれていた記録がある。現在のようにまき網が使用されるようになるのは、水産試験場の設置(1900)後である。シイラ網漁業試験(1901-1902)として、漁労試験と同時に実技指導などを行った。その後の動力船の導入とともに広がっていった。
 取り込み直後のシイラの写真
藩政時代においても一定の漁場が決められていたようであるが、昭和25年には特別漁業権として免許され、漁業組合ごとに漁場が区画されていた。制度改革後の昭和27年(1952)共同漁業権第3種シイラ漬漁業として切り替え免許されたが、昭和37年(1962)漁業法一部改正により、この漁業が漁場が沖合であり、他種漁業との調整上、排他的物権としての漁業権には不適当として漁業権漁業から除外され、昭和38年(1963)漁業調整規則改正により、シイラ漬け漁業が知事許可漁業となり、漁場が下図のようになった。
漁場の区域図

 漁獲対象であるシイラは、引きが強いことから「万力」と呼ばれたり、縁起の良い「万作」ともいう。鮮度の良い刺身は極めて美味で他の追随を許さない。ハワイでは「マヒマヒ」と呼ばれ高級魚である。また、ゲームフィッシングの好ターゲットとしても、世界的に人気が高い。浮いた流木、流れ藻やゴミなどに寄りつく性質があり、この漁法はこの性質を利用したものである。
 なお、シイラ漬漁業のある浜では、夏には欠くことのできない食材であったが、人手不足や魚価安などで経営体が次第に減少し、現在では浜村、泊、赤碕地区だけとなった。

  • 漁期 6月から10月(7月から9月が盛漁期)
  • 漁獲物 シイラ、ウスバハギ
  • 漁場    沖合概ね5~50キロメートルで漁業地区ごとに定められている。
  • 漁具の構造 漁具は網具と漬け木がある。網具は袖網と魚捕の2部からなっている。漬け木は、この漁業には不可欠かつ特徴的なものである。太さ3~4寸の孟宗竹を適当な長さに切断し、数本又は十数本を針金等でしばり、上部に目印として木の枝を立て、水深より30~40メートル程度長いロープに碇をつけて敷設する。 一隻あたりの敷設個数は概ね30~40個程度で、沖合に向かい1500メートル間隔に設置していく。

漬け木の写真

漬け木の構造
浸け木

 

  • 漁法  3~10トンの漁船で5~7人が従事していたが、人手不足などで現在は2~3人が従事している。
     未明に出港し、漬け木に集まっている魚群が確認できる明るさになると操業を開始し、沖合の漬け木へ向かって順次操業を繰り返す。
     操業は、餌竿と呼ぶ図のような竿にイカ型の疑似鈎をつけ、漬け木を廻すようにして投網しやすい場所までシイラを誘い出すと、袖網(だし)の一端に付けた浮標を投入し、風方向に向かって打ち出し、魚捕が風と直角になるよう全速力で航走しながら投網し一回転して浮標をとりあげ、両袖から揚げる。
     揚網機は船首に1台、中間部に2台で、浮子方と沈子方を巻き揚げるため、それぞれ設備してある。これらを使って、シイラの動きを予測しながら、浮子方と沈子方を調整し揚網する。
    1操業時間は10~15分程度である。
     シイラは風向、海流あるいは潮流等によって回遊状況が変化するといわれている。本県では、一般的に漁期始めの6,7月では西風、盛漁期以降は北東風の時来遊が多く、これに反して南風の時は1尾の来遊も見ないことがあるといわれている。また、潮流も風と同じく漁期始めには西より東に、盛漁期以後は北東より南西に流れる時、漁獲が多いとされる。なお、降雨の時は漁獲が少ない。

魚群の誘致と投網方法

魚群誘致する漁具

 

名称            材質及び規格 
魚補 クレモナ18~36本、7~8節、浮子方8K、網丈12K
袖網 クレモナ18~24本、7~8節、ダシの浮子方33K、モドリの浮子方33K
浮子 合成E-3型 魚捕40センチメートル間隔、袖網70センチメートル間隔
浮子綱 ナイロン10ミリメートル
目通し ナイロン6ミリメートル
沈子 鉛 魚捕45センチメートル間隔30匁、袖網40間隔30匁
沈子綱 ナイロン10ミリメートル
目通し ナイロン6ミリメートル

浸け木

孟宗竹 長さ6~7メートル

 網地の展開図



  

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