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労働争議の調整制度

 
   労働争議の調整とは、当事者で紛争を解決できないときに、公平な第三者機関として労働委員会が労使の間をとりなすことによって、労使双方の納得を得て労働争議を平和的に解決することを援助する制度です。

○調整の対象となる主な事項

  労使紛争のうち調整の対象となる事項は、争議の内容が当事者で解決しうる労働条件の維持改善や労働者の地位の向上を目的とするもので、主なものは次のとおりです。

事項

具体例

組合活動に関する事項

組合承認、交渉方式、差別待遇、組合事務所、掲示板など

賃金に関する事項

賃上げ、一時金、諸手当、賃金体系、退職金など

賃金以外の労働条件に関する事項 

労働時間、休日、休暇、定年制など

労働条件に関する経営または人事

事業の休廃止、企業合併、人員整理、配転、解雇など

団交促進

上記事項についての団体交渉


○調整の方法
  
このような労働争議の調整のための制度として、「あっせん」、「調停」、「仲裁」の制度が設けられています。 

あっせん

 あっせんは、あっせん員が労使双方の主張を確かめ、紛争の争点を明らかにしながら、労使間の話合いをとりもち、あるいは主張をとりなして、双方の歩み寄りを図りつつ争議を解決するものです。


【あっせんの開始】
○あっせんの申請
 あっせんは、当事者である労使の双方又は一方からの申請によって開始されす。


○あっせん員の指名
 会長は、あっせんを行うことが適当と認めたとき、事件の性格や当事者の希望を尊重して、あっせん員を指名します。通常、公・労・使の三者構成によるあっせん員によって、あっせんを行います。

○実情調査
    会長の指名を受けた事務局職員があっせんに先立ち、当事者からおおむね次のような事項の調査や資料の収集を行います。
  当事者の概要
  当事者の主張の要点
  調整事項の具体的内容
  交渉の経過
  当事者の事情
           
【あっせん活動】
○日時、場所、出席者
 あっせんの日時、場所は、当事者及びあっせん員の意向を聞いて速やかに決めます。出席者、人数については特に決まりはありませんが、あっせんは、当事者の合意によって争議を解決に導くのが建前ですから、それぞれの責任者で実質的に権限のある人が出席することになります。

 
○事情の聴取
 公・労・使のあっせん員が、当事者双方から事情を聞取り、主張の要点を確かめ、対立点を明らかにして、争議の争点や問題点がどこにあるかを整理します。

 
○主張の調整
 あっせん員は、団体交渉が十分でなく交渉の余地が残っていると見られるときは、更に団体交渉を続けるよう勧め、また、当事者間の主張をとりなして譲合いを勧め、対立をときほぐし、歩み寄りを図り解決に至るよう努力します。

○あっせん案の提示
 あっせん員は、当事者双方にあっせん案を示し、これによって争議を解決するよう勧めることがあります。あっせん案が示されても、受諾するかどうかは当事者の任意ですが、実際にはその趣旨に従い解決する例が多くみられます。このほか、事件の解決を示唆するためにあっせん員が見解(要望)を示すことがあります。

 
○あっせんの終結
(ア)解決
 当事者が勧告やあっせん案などを受け入れて、争議解決の合意に達した場合、あっせんは終結します。

(イ)打切り・不調
 当事者の主張に隔たりが大きく、妥協点を見いだすことができないなど解決する見込みのないときは、あっせんは打切りとなります。また、あっせん案が示されても、一方又は双方が受諾しない場合は、不調となります。

(ウ)取下げ
 あっせん申請した後、自主交渉などによって事件が解決するなど、あっせんの必要がなくなったときは、いつでも申請の取下げができます。


【職権あっせん】
  当事者の申請の有無にかかわらず、会長が必要と認めた場合にあっせんが行われることがあります。労使の対立が激しい争議で、しかも、早期解決が望まれるような場合や、公益事業などで調整が不調に終わり、その収拾に乗り出す場合などに行われます。


<あっせんの様子(模擬)>
あっせんの様子(模擬)

調停

 調停は、調停委員会が調停案を示し、労使双方に受諾を勧告して、争議を解決する調整方法です。

【調停の開始】
○調停の申請
  調停は通常、次の場合に開始されます。

 (1)当事者双方から申請があったとき。
 (2)労働協約の定めに基づいて、当事者の一方から申請があったとき。     
 (3)公益事業、地方公営企業等の事件について、当事者の一方から申請があったとき。

○調停委員会
 調停委員会は、会長の指名する公・労・使の各側を代表する調停委員で構成されます。調停委員のうち労・使委員は同数とすることになっています。

【調停委員会の活動】
○意見の聴取及び実情調査
 期日を定めて、当事者双方の出席を求め、その意見を徴するほか、必要に応じて実情調査を行います。なお、調停の進行に支障をきたすと認められるような場合は、当事者及び参考人以外の者の出席を禁止することがあります。

○調停案
 調停委員会は、当事者などからの意見聴取や実情調査の結果、公正妥当と判断する調停案を作成して当事者に示し、その受諾を勧めます。調停案を受諾するかどうか は当事者の任意ですが、調停委員会が公正な第三者として最も妥当であると判断したものなので、双方がこれを尊重して問題を解決することが望まれます。
 なお、調停案の解釈や履行について疑義がある場合は、調停委員会の見解を求める手続もあります。

【調停の終結】
 当事者の双方が調停案を受諾すれば争議は解決します。しかし、双方又は一方が拒否すれば調停は不調となります。(いずれにしても、これで調停委員会の任務は終わります。)

【職権調停等】
  公益事業や地方公営企業等に関する事件については、当事者の申請の有無にかかわらず、調停を行う必要があると労働委員会が決議したときの「職権調停」や知事の請求に基づく「請求調停」があります。職権調停等の進め方などは、一般の調停の場合と変わりありません。

仲裁

 仲裁は、労使双方が争議の解決を仲裁委員会にゆだね、その判断である「仲裁裁定」にしたがって争議を解決する調整方法です。仲裁裁定は労働協約と同一の効力をもって当事者双方を拘束することになります。

○仲裁委員会
  仲裁委員会の委員は、労働委員会の公益委員の中から、当事者の合意した委員を3名会長が指名します。当事者の合意による選定がないときは、会長が当事者の意見を聞いた上で指名します。
  また、当事者の指名した労・使委員は、仲裁委員会に出席して意見を述べることができます。

○仲裁の開始
 仲裁は次のような場合に開始されますが、詳細については、労働委員会にお尋ねください。
 (1)当事者双方からの申請があったとき。
 (2)労働協約の定めに基づいて、当事者の一方から申請があったとき。     
 (3)地方公営企業等の労働争議について、労働委員会があっせん叉は調停を開始した後、2か月を経過してもなお争議が解決しない場合、当事者の一方から申請があったとき。

 なお、地方公営企業等の場合には、企業等の特殊性から、労働委員会の職権や知事からの請求によって仲裁を開始することもあります。

○仲裁委員会の活動及び終結
 仲裁も調停の場合と同様に、事情聴取、主張の調整などの仲裁活動を行い、その判断を書面による「仲裁裁定」として示し、解決に至ります。なお、やむを得ない理由により仲裁の継続ができない場合には打切ることもあり、また、当事者の合意による取下げもできます。

  

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