県内の産業活動の高付加価値化及び新分野への進出を促進し、県産業の自立的発展に寄与。
目次
第1章 総則(第1条-第3条)
第2章 県の責務及び関係機関の取組(第4条-第12条)
第3章 職務発明等の取扱い(第13条-第25条)
第4章 雑則(第26条)
附則
第1章 総則
(趣旨)
第1条 この条例は、本県における知的財産の創造、保護及び活用(以下「知的財産の創造等」という。)が本県の産業活動及び県民生活において果たす役割の重要性にかんがみ、「知の地域」
づくりの一翼を担う知的財産の創造等に関する政策の目標を明らかにするとともに、その目標の達成に資するための施策に関し基本となるべき事項を定め、及び職員が行う職務発明等に関 し必要な事項を定めるものとする。
(定義)
第2条 この条例において「知的財産」とは、知的財産基本法(平成14年法律第122号)第2条第
1項に規定する知的財産をいう。
2 この条例において「知的財産権」とは、知的財産基本法第2条第2項に規定する知的財産権をいう。
3 この条例において「産学金官」とは、事業者(本県に活動拠点を有する者に限る。以下同じ。)、大学等(知的財産基本法第2条第3項に規定する大学等のうち県の試験研究機関を除くもので、 県内に所在するものをいう。以下同じ。)、金融機関等及び県をいう。
4 この条例において「金融機関等」とは、金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法(平成14年法律第190号)第2条第1項に規定する金融機関等及び農業協同組合法(昭和22年法律第132号)第4条に規定する農業協同組合のうち、本県に活動拠点を有するものをいう。
5 この条例において「職員」とは、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第3条第2項に規定する一般職の県職員をいう。
6 この条例において「勤務発明」とは、職員がその勤務に関連して行った発明をいう。
7 この条例において「職務発明」とは、勤務発明であって、その内容が当該勤務発明をした職員が所属し、又は所属していた部局の所掌する業務の範囲に属し、かつ、その勤務発明をする に至った行為が当該職員の現在又は過去の職務に属するものをいう。
8 この条例において「任命権者」とは、職員の任命権者をいう。
(政策の目標)
第3条 県は、次に掲げる事項を知的財産の創造等に関する政策の目標とする。
(1) 知的財産の創造等に関する県民及び事業者の創意ある努力を尊重して、その活動を助長することにより、知的財産を意識した活動を行うことのできる風土形成を図ること。
(2) 知的財産の創造等に向けた支援の実施により、本県の産業活動の高付加価値化及び国際競争力の強化並びにその自立を促進し、もって、本県産業の成長発展及び活力ある地域社会の実現を図ること。
第2章 県の責務及び関係機関の取組
(県の責務)
第4条 県は、前条に規定する政策の目標を達成するため、次に掲げる施策を実施するものとする。
(1) 知的財産を意識した活動を行うことのできる風土づくりを推進すること。
(2) 知的財産の創造等に関わる人材の基盤を整備すること。
(3) 産学金官の連携を相互に深め、事業者が取り組む技術開発、販路開拓等の推進のために必要となる支援を実施すること。
(4) 県自らが有用性の高い知的財産を創造するとともに、技術移転等により知的財産の社会的活用を促進すること。
(風土づくりの推進)
第5条 県は、前条第1号の施策を実現するため、次に掲げる取組を行うものとする。
(1) 県民及び事業者が知的財産を意識した活動を行うことのできる風土づくりの推進のために必要な意識啓発及び情報提供
(2) 県民及び事業者の創意ある工夫及び発明の推進並びに事業化の支援
(人材の基盤整備)
第6条 県は、第4条第2号の施策を実現するため、次に掲げる取組を行うものとする。
(1) 知的財産支援機関(知的財産権に関する情報の収集及び提供並びに事業者の技術開発等への支援を行う鳥取県知的所有権センターをいう。以下同じ。)に配置される知的財産に関する専門人材の確保その他の知的財産の創造等を支えるために必要な人材の確保
(2) 知的財産に関する研修及び将来の本県産業を担う人材育成に向けた創造性を高めるための教育指導の実施による、知的財産の創造等を担う人材の育成
(産学金官の連携)
第7条 県は、第4条第3号の施策を実現するため、次に掲げる取組を行うものとする。
(1) 知的財産の創造に向けた研究開発の支援、知財流通(他者が保有する知的財産権の使用及び自身が保有する知的財産権の他者への使用の許諾をいう。以下同じ。)の調整その他の知 財サイクル(研究開発により得られる知的創造を知的財産権として権利設定すること、及び 当該権利の活用により得られる収入により新たな研究開発を行うことを循環させる知的創造 の一連の体系をいう。以下同じ。)への事業者の参画を促すために産学金官で連携して実施す る次に掲げる事業の実施
ア 独自技術開発に向けた研究開発の支援
イ 知財流通の調整及び情報提供機能の充実による事業者の経営基盤強化につながる知的財産権の使用の支援
ウ 技術交流及び共同研究実施による技術移転の促進
エ 産学金官と連携した知的財産に関する総合的な相談窓口の知的財産支援機関への設置による知的財産の権利化の支援
オ 営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報を管理する体制の確立による事業者の経営基盤強化につながる支援
カ 知的財産その他の独自技術を活用した創業及び事業化の支援
キ その他知財サイクル推進のために必要となる支援
(2) 地域固有の資源を活用した新たなブランドの創出及び育成に向けて事業者が取り組む技
術開発、販路開拓等の推進のために必要となる支援
(3) 本県産業の国際競争力の強化のために産学金官で連携して実施する次に掲げる事業の実施
ア 環境・エネルギー分野等の本県が産業の創出を図る分野における知的財産の活用の促進
イ 事業者の知的財産を活用した国際的な事業展開の支援
2 県は、産学金官による相互の連携及び協力が知的財産の創造等の効果的な実施につながるこ とにかんがみ、産学金官の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
(県による知的財産の創造等)
第8条 県は、第4条第4号の施策を実現するため、次に掲げる取組を行うものとする。
(1) 知的財産を意識した活動及び本県産業の振興に寄与する技術の開発並びに県が保有する
知的財産権の活用等に係る評価による知的財産の創造等の促進
(2) 県の試験研究機関が行う共同研究及び技術相談による県民及び事業者への技術移転の促
進
(3) 県が保有する知的財産権の県民及び事業者の優先的活用の推進
2 県は、その保有する知的財産権の状況について、次に掲げる事項を随時公表し、事業者への技術移転を促進するものとする。
(1) 保有する知的財産権の名称、内容、出願者等に関する状況
(2) 保有する知的財産権の活用に関する状況
(3) 保有する知的財産権の処分及び消滅に関する状況
3 前項の公表は、次に掲げる方法により行うものとする。
(1) 鳥取県公報に掲載する方法
(2) インターネットを利用して閲覧に供する方法
(3) 県庁の掲示場その他知事が必要と認める場所に掲示する方法
4 県は、事業者が創意若しくは工夫により創造した製品又は役務を自ら積極的に購入し、又は活用することにより、事業者の受注機会の増大に努めるとともに、創造的な事業活動の促進を 支援するものとする。
(大学等の取組)
第9条 大学等は、本県における知的財産の創造等の促進に向けて、次に掲げる取組を行うよう努めるものとする。
(1) 研究成果の帰属及び取扱いに関する指針並びに効果的な知的財産の創造等に向けた指針の明確化により、研究者その他の創造的活動を行う者の適切な処遇を確保し、並びに知的財 産の創造等を促進すること。
(2) 学内教育及び社会人への学外教育の実施により、知的財産に関する高度な専門知識を有する人材を育成すること。
(3) 本県産業の競争力強化につながる技術移転により、地域貢献を図ること。
(事業者の取組)
第10条 事業者は、本県における知的財産の創造等の促進に向けて、次に掲げる取組を行うよう努めるものとする。
(1) 当該事業者の職務に関する発明に係る規程の整備等により研究者その他の創造的活動を行う者の処遇の向上に努めるとともに、知的財産の創造等及び知的財産の経営戦略への活用 により産業活動の高付加価値化及び新分野への進出を図り、雇用の創出を促進すること。
(2) 産業活動が社会において果たす役割を認識し、営業秘密及び技術の流出防止その他の措置により、本県産業活動に対する信用の向上を図ること。
(3) 事業者相互間において、知的財産を尊重した経済活動を行うこと。
(金融機関等の取組)
第11条 金融機関等は、本県における知的財産の創造等の促進に向けて、知的財産の創造並びに
知的財産その他の独自技術を活用した創業及び事業化のために必要となる資金の供給及び事業者間の連携支援の実施により、本県産業活動のすそ野を広げ、地域経済の発展を担う事業者の
発掘及び育成に努めるものとする。
(県民の取組)
第12条 県民は、本県における知的財産の創造等の促進に向けて、次に掲げる取組を行うよう努めるものとする。
(1) 自ら進んで知的財産に関する理解を深め、知的財産を意識した活動を行うことのできる風土づくりに積極的な役割を果たすこと。
(2) 事業者が行う知的財産の創造等の促進に向け、真正な製品又は役務の購入、活用等により、知的財産を尊重した活動を行うこと。
第3章 職務発明等の取扱い
(権利の承継)
第13条 県は、職務発明について、この条例の定めるところにより、特許法(昭和34年法律第121号)第33条第1項に規定する特許を受ける権利又は同法第66条第1項に規定する特許権(以下 「特許を受ける権利等」という。)を承継することができる。
(勤務発明の認定等)
第14条 職員は、勤務発明をしたときは、直ちに、規則で定めるところにより、任命権者に届け出るものとする。
2 任命権者は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る勤務発明が職務発明であるかどうかを認定し、職務発明であると認定したときは、当該職務発明について県が特許を 受ける権利等を承継するかどうかを決定するものとする。
3 任命権者は、前項の規定による認定又は決定をしたときは、速やかに、当該勤務発明の届出をした職員に対し、その旨を通知するものとする。
(特許出願の制限)
第15条 職員は、任命権者が前条第2項の規定により職務発明でないと認定し、又は職務発明について県が特許を受ける権利を承継しないと決定した後でなければ、当該勤務発明に係る特許 出願をしてはならない。ただし、特許出願をする緊急の必要があるときは、この限りでない。
2 職員は、前項ただし書の規定により特許出願をしたときは、直ちに、規則で定めるところにより、任命権者に届け出るものとする。
(第三者に対する権利譲渡等の制限)
第16条 職員は、任命権者が第14条第2項の規定により職務発明でないと認定し、又は職務発明について県が特許を受ける権利等を承継しないと決定した後でなければ、当該特許を受ける権 利若しくは特許権を第三者に譲渡し、又は第三者のために当該特許権について専用実施権(特 許法第77条第1項に規定する専用実施権をいう。)を設定してはならない。
(特許を受ける権利等の譲渡の義務等)
第17条 職員は、任命権者が第14条第2項の規定により職務発明について県が特許を受ける権利等を承継すると決定したときは、当該特許を受ける権利等を県に譲渡するものとする。
2 任命権者は、前項の規定により県が特許を受ける権利等の譲渡を受けたときは、直ちに、特許法の規定による特許出願若しくは特許を受ける権利の承継の届出又は特許権の移転の登録を するものとする。
3 任命権者は、前項の規定により特許出願若しくは特許を受ける権利の承継の届出又は特許権の移転の登録をした後に、特許審査請求(特許法第48条の3第1項に規定する出願審査の請求 をいう。)をしないこと又は特許権の継続保有を放棄することを決定したときは、速やかにその 権利を職員へ承継するものとする。
(補償金)
第18条 県は、職務発明に係る特許を受ける権利を承継した当該特許の出願が受理されたとき、
職務発明に係る特許を受ける権利を承継した当該特許を受けたとき、又は職務発明に係る特許権を承継したときは、当該職務発明をした職員に対し、規則で定める額の補償金を支払うもの とする。
2 県は、職務発明に係る特許権の運用又は処分により収入を得たときは、当該職務発明をした職員に対し、規則で定める額の補償金を支払うものとする。
3 前2項の規定による補償金は、当該補償金の支払を受ける権利を有する職員が2人以上あるときは、それぞれの持分に応じて支払うものとする。
(退職等の場合における補償)
第19条 前条の規定による補償金の支払を受ける権利は、当該権利を有する職員が退職した後も存続するものとする。
2 前項の権利を有する職員が死亡したときは、当該権利は、その相続人が承継するものとする。
(出願費用の支払)
第20条 県は、職務発明に係る特許を受ける権利等を承継した場合において、当該職務発明をした職員が既に出願手数料、特許料その他の特許出願のために直接要する費用(以下「出願費用」 という。)を支出しているときは、当該職員の申出によりその費用を支払うものとする。
2 出願費用の支払を受ける権利は、当該権利を有する職員が退職した後も存続するものとする。
3 出願費用の支払を受ける権利を有する職員が死亡したときは、当該権利は、その相続人が承継するものとする。
(不服の申出)
第21条 職員は、その勤務発明に係る第14条第2項の規定による認定又は決定に対して不服があるときは、同条第3項の規定による通知を受けた日の翌日から起算して30日以内に、任命権者 に対し不服の申出をすることができる。
2 任命権者は、前項の規定による不服の申出があったときは、遅滞なく、その申出に係る事項について決定し、その結果を申出人に対し通知するものとする。
(実施権の設定)
第22条 任命権者は、県が保有する特許権(特許法第36条第1項の規定による特許出願に係るものを含む。以下同じ。)に係る実施(同法第2条第3項に規定する実施をいう。以下同じ。)の 許諾の申請があった場合において、申請の内容が公序良俗に反しないと判断したときは、当該 実施を許諾することができる。
2 前項の規定により実施を許諾する場合には、任命権者は、製品(当該特許権を使用して製造された製品及びそれに付属する備品をいう。)の販売単価に販売数量及び実施料率を乗じて得ら れる額に、当該額に対応する消費税及び地方消費税に相当する額を加えて得られる額による実 施料を徴収する。
3 前項に規定する実施料率は、当該特許権に係る実施の割合に県が保有する特許権の持分の割合及び次の各号に掲げる率を乗じて得られる率とする。この場合において、任命権者は、特に 必要と認めるときは、次の各号によらない率を定めることができる。
(1) 県外に住所を有する者に対する実施の許諾の場合 3パーセント
(2) 県内に住所を有する者(主たる事業所が県内にある者を含む。)に対する実施の許諾の場合 1パーセント
(秘密の保持)
第23条 勤務発明をした職員及びその所属長並びに第13条から前条までに定める手続に携わる者は、当該勤務発明の内容その他勤務発明をした職員及び県の利害に関係のある事項について、 規則で定める期間、その秘密を守らなければならない。
(契約締結の義務)
第24条 県は、大学等、事業者等県の機関以外の者(以下「県以外の者」という。)と共同して研究開発を行う場合及び県以外の者へ研究開発を委託する場合は、相互の権利を尊重し、保護す るため、当該研究開発の開始前に、当該研究開発により生じる知的財産権の取扱い及び秘密保 持について明記した契約を締結するものとする。
2 県及び県以外の者は、前項の契約締結後に生じる知的財産権に係るそれぞれの持分その他の知的財産権の取扱いについて、速やかに協議して決定するものとする。
3 第1項の契約締結に関し必要な事項は、規則で定める。
(実用新案等に関する準用規定)
第25条 第13条から前条までの規定は、職員がその勤務に関連して行った考案、意匠及び職務育成品種(職員が育成した品種(種苗法(平成10年法律第83号)第2条第2項に規定する品種を いう。)であって、その育成(同法第3条第1項に規定する育成をいう。以下同じ。)がその性
質上当該職員が所属し、又は所属していた部局の所掌する業務の範囲に属し、かつ、その育成をするに至った行為が当該職員の現在又は過去の職務に属するものをいう。)について準用する。 この場合における必要な読替えについては、規則で定める。
第4章 雑則
(委任)
第26条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成18年4月1日から施行する。
(経過措置)
2 第18条から第20条までの規定(第25条において準用する場合を含む。)は、この条例の施行の
日以後に出願が受理される特許に係る職務発明について適用する。
3 第22条の規定(第25条において準用する場合を含む。)は、この条例の施行の日以後に行われ
る県が保有する特許権に係る実施の許諾の申請について適用する。
(検討)
4 知事は、平成27年度末を目途として、この条例の規定及びその実施状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。