進化につなげる課題を追求
1日最大40万個のどら焼きを生産できる和菓子メーカーで18年間、品質管理の最前線に立つ。「ロングライフでおいしい商品づくりのため、衛生的な生産環境を整え、お客さまに安全で安心な商品を届け続ける」。責任者となった今もその思いは揺るがない。
微生物検査、アレルゲン検査、生産現場の環境検査と、どの項目をいつ実施するか計画し、社内規格値からの逸脱がないよう監視する。新商品が出る際はさらに多忙だ。原料の精査など試作段階から関わる。商品表示の確定も大事な仕事で、近年は法改正による表示内容変更も続く。消費者対応の窓口も兼ね、業務は多岐に渡る。
結婚前、県外で服飾を学び、アパレル業界に身を置いた経験もあり、ものづくりへの関心は高かった。「菓子製造は作ったものが暮らしの中にある場面がイメージしやすく、面白そう」と、求人に応募したのが入社のきっかけ。工場スタッフだったが、正確で真面目な仕事ぶりに適性を見出され、現在の業務へすぐ配置転換された。
図らずも本社と規模拡大した新工場を現在地に移転した直後の入社。従業員や生産量が年々増大する頃で、膨らむ業務量に「1日があっという間に終わった」。帰宅が遅くなり、たびたび夫に心配された。
しかし子どもの急病や親世代の介護事情にも柔軟に対応してくれる会社側の姿勢に触れるたび、家族はいつしか一番の応援者に。「今では家族参加できる会社行事には必ず出てくるほど」と笑う。
工場は、高いレベルの衛生管理を自主的に努力して行っていると認定された「鳥取県HACCP適合施設」だ。2007年、認定へ向けた準備作業を担当し、その後、他の食品安全マネジメントシステム認定の取得へ道筋を付けた影の立役者でもある。しかし「人の口に入る以上、食品の品質管理のレベルは、上げ過ぎることはない」と、その実績にも頓着がない。
「家族や大切な人はもちろん、計り知れないほどたくさんの人の体も守れる。それに気づけたら、やりがいはいくらでも見つけられる業界。よりよい食品を作りたいから、完成はない」。次の進化につながる課題を見つけては追求する日々に、後ろを振り返る暇はない。
【写真説明】「仕事にダイナミックな出来事はなく、毎日一つ一つ積み重ねることが大事」と話す岡原さん
(令和3年2月21日(日)掲載)
※写真撮影時のみ、マスクを外しています。