昨年11月に隠岐北方で捕獲されたダイオウイカ(12月に水試で解体:ゲゲゲ通信前号に記載)から、平衡石を摘出しました。
イカはふつう平衡石という姿勢を制御する(平衡をつかさどる)石のようなものを目の上にもっています。ダイオウイカも例外でなく、目の上にある平衡胞内にこの石のようなものを持っていました。この平衡石は左右一対あり、日々成長していくので木の年輪のような輪が形成されていきます。スルメイカは一日1本の輪が形成されていくと言うことで、平衡石を解析することで、発生日を推定するのに利用されています。一日1本形成されるとすると、遡れば生まれた日も推定できるということですが、ダイオウイカが一日1本の輪を形成するかどうかはよく分かっていません。しかし、解析するとダイオウイカが一年イカなのか長く生きるのかどうかが分かるかもしれません(他のところで解析されたのでは3才だったとの事例があるそうですが…)。解析には時間も技術も必要なので、時間がある時に解析できればと思っていますが、とりあえず、平衡石の摘出をしなければ話になりませんので、摘出することにしました。
まず、ダイオウイカの平衡胞の位置を確かめるため、少しづつ目の上の辺りを輪切りにしていきます。何度か輪切りにしていくと平衡胞らしき空洞が現れてきました。この腔の中に、石らしきものがあるか見極めていきましたが、思ってのほか柔らかくしかも小さいとあって摘出するのに苦労しました。体の大きさの割に平衡胞が小さく、また平衡石もスルメイカとあまり変わらないような大きさだったので、見落としてしまいそうでした。
目の上に平衡胞らしき空洞がありました。
少しづつ輪切りにしていきます。
径5ミリくらいの空洞が二つ現れました。
意外と小さく、少し柔らかいような石でした。
実体顕微鏡で、大きさを測定しました。
平衡石の大きさは、長い方が2ミリ強、短い方が1ミリでした。
ダイオウイカの平衡石(2ミリ×1ミリ)
ちなみに、おなじみのスルメイカの平衡石と並べて撮ったのが下の写真です。
上がダイオウイカ、下がスルメイカです。
これをみるとダイオウイカは図体の割にさほど大きくないことが分かります。
ちなみに、スルメイカは(外套長251ミリ、体重305グラム、雄、
平衡石の長径0.96ミリ)
ダイオウイカは(外套長1,920ミリ、体重130,000グラム、雌、
平衡石の長径2.23ミリ)です。