森林は、美しい景観やきれいな空気を提供したり、水源を守り、洪水などの災害を防いだり、海岸では潮害を防ぎ、飛砂の害から家や田畑を守ってくれるなど、いろいろな働きをしています。
そこで、国や都道府県ではとくに大切に保護しなければならない森林を「森林法」という法律に基づいて保安林に指定し、森林のいろいろな役割を十分に発揮できるよう伐採を禁止したり、制限したりして適切な管理を行っています。現在、鳥取県内には国有林約30千ha、民有林約108千ha、合計約138千haが保安林に指定されており、これは県内の森林総面積の約54%を占めています。保安林の実際の働きによって下記の17種類が定められています。
保安林制度は、森林法の中に規定されています。そのしくみについて紹介します。
鳥取県では、水源かん養保安林、土砂流出防備保安林、土砂崩壊防備保安林を農林水産大臣が指定・解除し、その他の保安林を知事が指定・解除します。
(1)保安林指定
保安林の指定に必要な要件は、主に以下の2点です。
■指定の対象地が森林法上の森林であること。
■指定による受益の対象が存在し、受益の対象の得る利益が公益であること。
【保安林指定の流れ】
○申請
保安林の指定に直接の利害関係を有する者は、保安林の指定の申請をすることができます。申請は、保安林指定申請書を知事へ提出することで行い、農林水産大臣が指定する保安林については、県から農林水産大臣へ送付されます。
○予定告示
各指定権者が申請内容を審査し、保安林の指定が必要であると認められた場合は、県の公報に予定告示が掲載され、土地の権利者等に通知がされます。
○市町村における掲示
予定告示の内容については、市町村で30日間掲示されます。
○確定告示
市町村掲示後に、官報及び鳥取県の公報で保安林の指定が確定された旨の告示が掲載されます。
○登記
登記簿の地目が保安林に変更されます。
ただし、地番の一部が保安林となった場合は、地目が変更されません。
(2)保安林解除
保安林の指定がされた森林は、原則として保安林の解除はできませんが、以下に該当する場合に限り解除が認められる場合があります。
■指定の理由が消滅したとき
指定による受益の対象が消滅したとき、自然現象等により保安林が破壊され森林への復旧が困難と認められるとき、保安林の機能に代替する機能を果たす施設が設置されたとき又はその施設の設置が確実と認められるとき
■公益上の理由が生じたとき
土地収用法等により、土地を収用又は使用できることとされている事業を実施する場合など
【保安林解除の流れ】
○申請
保安林の解除に直接の利害関係を有する者は、保安林の解除の申請をすることができます。申請は、保安林解除申請書を知事へ提出することで行い、農林水産大臣が解除する保安林については、県から農林水産大臣へ送付されます。
○予定告示
各解除権者が申請内容を審査し、保安林の解除が必要であると認められた場合は、県の公報に予定告示が掲載され、土地の権利者等に通知がされます。
○市町村における掲示
予定告示の内容については、市町村で30日間掲示されます。
○確定告示
市町村掲示後に、官報及び鳥取県の公報で保安林の解除が確定された旨の告示が掲載されます。
○登記
登記簿の地目が保安林から変更されます。
ただし、地番の一部が保安林の解除となった場合は、地目が変更されません。
保安林内で立木伐採などの際、必要最小限の制限を受けます。
(1)立木の伐採
保安林で立木を伐採する場合には、あらかじめ知事の許可を受けなければなりません(間伐および人工林の択伐については届出が必要です)。なお、この場合、指定施業要件(※)として定められている制限の範囲内の伐採であれば許可されることになっています。
許可手続き等はこちらへ
許可を要しない伐採~あらかじめ届出が必要な場合があります~
除伐は森林法第34条第1項第8号により許可を要しないこととなっています。また、法令に基づく測量のための伐採などは森林法施行規則第60条第1項により許可を要しない伐採とされています。ただし、これらのうち、第5号から第9号までに規定されている伐採を行う場合にはあらかじめ届出が必要です。
(2)土地の形質の変更など
保安林内で家畜の放牧や土石・樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為などを行う場合には、あらかじめ知事の許可を受けなければなりません。なお、これらの行為が保安林の働きに支障を及ぼす場合を除き、許可されることになっています。
許可手続き等はこちらへ
許可を要しない軽易な行為
森林法施行規則第62条に許可を要しない軽易な行為として以下の項目が規定されています。
- 造林又は保育のためにする地ごしらえ、下刈り、つる切り又は枝打ち
- 倒木又は枯死木の損傷
- こうぞ、みつまたその他農林水産大臣が定めるかん木の損傷
(3)植栽の義務
立木を伐採した後や土地の形質を変更する行為をした後には、その跡地への植栽を義務づける場合があります。(例)木を植えなければ元の森林状態に回復しない場合など。
(1)税金が免除されたり減額されたりします
固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税は課税されません。また、相続税、贈与税は伐採制限の内容に応じて相続税等の評価の際に3~8割が控除されます。
(2)特別の融資が受けられます
一定の条件を満たしている場合には、長期で低利の資金を(株)日本政策金融公庫から借りることができます。
(3)伐採の制限に伴う損失についての補償が受けられます
禁伐または択伐の伐採制限が課せられる保安林については、立木資産の凍結による損失についての補償が受けられます。