前回は池田家墓所の「カメ」のお話でしたが、今回は「カエル」のお話です。
カエルと名のつく部分が、お寺や神社にあるのをご存知ですか?それは、柱と柱をつなぐ水平材の上にのっている、カエルが後ろ足を開いたような形の「蟇股(かえるまた)」と呼ばれるものです。
奈良時代に使われるようになったこの蟇股は、最初は屋根の重さを支える大事な役割を担っていましたが、時代が下るにつれて装飾として用いられるようになり、やがてその内側に彫刻がされるようになりました。
実は、この彫刻がちょっとした見どころなのです。
蟇股の彫刻には、木造建築が最も恐れる火に対して水に関連する波や龍といった図柄や、干支、草花、巾着など縁起の良い柄をモチーフにするのが一般的です。そのほか、例えば鳥取藩主池田家に縁のあるお寺や神社では、池田家の家紋である揚羽紋をあしらうなど、そのお寺や神社ならではのものも多くあります。
そのなかでも珍しい彫刻が聖神社(鳥取市行徳・県保護文化財)にあります。
ところ狭しと彫刻された華やかな本殿に目を奪われますが、今回特に注目したいのは拝殿の蟇股です。菊、桐の紋を重ねたもののほか、般若や翁などの能面をあしらった大変珍しい蟇股があるのです。
残念ながらその理由はわかっていませんが、当時、能に造脂の深い人が建築に関わったのかもしれません。しかも、建物には全く彩色されていないにもかかわらず、これら能面の口だけが赤く塗られていることから、並々ならぬ思いが込められているようにも感じます。
年末、年始をはじめとして、お寺や神社にお参りする機会もあると思います。是非、お気に入りの一枚を探してみてください。