限られた時間で日々着実に
キノコなど菌類に関する総合的研究機関で、成分分析など担当する。「まさか自分がこの仕事に就くなんて、というのが本音」とはにかむが、白衣に身を包み、実験する姿からは研究者の矜持が見え隠れする。
島根県出身。微生物に関心があり、栄養や食に通じる学びを求めて鳥取大農学部へ。転機は卒業研究で実験の楽しみを知ったこと。仮説と異なる結果が出たり、失敗に思えたことが新しい発見になるのが面白く、同大大学院へ進んだ。天然物化学を専門とし、カビが作る毒に関する研究で博士課程まで修めた。
2003年から同大で助手、07年から助教として働いた。その後、一度県外へ出たが、同センターが成分研究のできる研究者を求めていることを知り帰鳥。10年、採用された。
カビの一種であるキノコは、研究対象としての魅力十分。研究所で栽培する多種多様なキノコから自分のテーマを見つけ、研究に打ち込む。研究環境に制約はあるが、そこを工夫してアプローチするのも仕事のうち。14年度には林野庁の補助金を受け、おやつ感覚で食べられるキノコのスナック開発に従事。無事、商品化された。
しかし、楽しい実験と同じくらい大切にしたいことができた。3歳になる長女の子育てだ。産休・育休を取得し、職場復帰後も時短勤務を半年間続けた。上司や同僚は子どもの体調急変にも快く送り出してくれて心強い。まとまった時間が必要な実験は、長女の体調を見ながら開始する。休日に出勤した際の夫のサポートも欠かせない。
かつては当たり前だった徹夜の実験や学会出席はまだできていないが、限られた時間でも日々コツコツと積み上げることは得意。「有用で、生活に広く汎用できる物質を見つけたい」という目標を、出産前と変わらず高く掲げている。
【写真説明】「働き続ける姿は娘にも見ていてほしい」と話す福島さん
[令和元年12月14日(土)日本海新聞掲載]