防災・危機管理情報


  全国の小中学校に1人1台の学習用端末(パソコン、タブレット端末)とネットワークを一律に整備する「GIGA(ギガ)スクール構想」。県内小中学校では、来年3月末までに設置が完了します。学校現場では、ICT(情報通信技術、Information and Communication Technologyの略)を活用し、児童生徒一人一人に合った学びの実現に向けた取り組みが始められています。

ICTの学習利用、短さ課題

  GIGAスクール構想の背景には、先進37カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)が実施した「学習到達度調査」の結果があります。2018年(平成30年)調査で日本は、数学的および科学的リテラシー(リテラシーは、正確に理解し、活用できる能力のこと)は世界トップレベルを維持するものの、読解力は順位が低下(下記参照)。正答率が低かったのは、ウェブサイトや電子メールなどのデジタルテキストから必要な情報を探し、その情報の質や信頼性を評価する問題でした。
  また調査では、日本はパソコンやタブレット端末などを授業で使う時間が加盟国で最短、チャットやゲームでの利用は加盟国平均より長いとの結果も。デジタル機器が、学習より遊びに多く使われている実態が明らかになりました。
  さらに、学校現場への学習用端末は整備が遅れ、地域格差も発生。誰でもどこに住んでいても、公正に学べる環境づくりを目指して、国は昨年12月、「児童生徒1人1台端末」の早期実現に乗り出しました。

GIGAスクール構想

  多様な子どもたちに最適化され、創造性を育む教育ICTの実現を目指した文部科学省の施策。これまでの教育実践にICTを組み合わせることで、個々の能力や理解度に応じた多様な学びを可能とし、児童生徒の力を最大限に引き出すことを目指します。全国の小中学校への1人1台の学習用端末と高速大容量の通信ネットワークの整備は、この構想の下に進められています。

GIGAはGlobal and Innovation Gateway for All(全ての人にグローバルで革新的な入り口を)の略。

OECD生徒の学習到達度調査

  2000年(平成12年)から3年ごとに下表3分野で、義務教育終了段階の15歳の子ども(日本では高校1年生相当)を対象に実施。2015年(平成27年)以降、筆記型調査からコンピューター使用の調査に移行されました。

全参加国中の順位 (出典 国立教育政策研究所 2018年調査国際結果の要約)
○読解力
  2012年 65か国中4位 2015年 70か国中8位 2018年 77か国中15位
○数学的リテラシー
  2012年 65か国中7位 2015年 70か国中5位 2018年 78か国中6位
○科学的リテラシー
  2012年 65か国中4位 2015年 70か国中2位 2018年 78か国中5位

目指す学びへ活用始まる

  「児童生徒1人1台端末」は、2023年度までに全国の小中学校への整備を完了させる計画でした。ところが今年、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国からの要請で、一部を除き3月2日から全国一斉休校に。休業の長期化によって支障が生じる事態に備え、学校以外の場所でも学習ができるよう、計画が前倒しになりました。県内では、来年3月末までに全ての小中学校での整備が完了する予定です。
  琴浦町立赤碕小学校(下記参照)や三朝町立三朝小学校などでは既に、遠隔授業を実証実験。こうした活用はコロナ禍だけでなく、夏休み中や病気欠席時にも応用できます。さらに、「今後は海外の学校との交流や、離れた場所にいる専門家にも授業に参加してもらえる」と県教育委員会事務局小中学校課指導主事の宇山(うやま)慎二(しんじ)さんは期待を膨らませます。
  図らずも、新型コロナが学校の環境整備を加速させるきっかけにはなりましたが、ICTそのものが学習効果を高め、情報活用能力を育成するわけではありません。日頃の授業で、活用する場面や時期、そして授業のねらいに応じて使うことが重要です。下記に紹介する岩美町立岩美中学校では、授業にどう組み込むのか教師が十分検討し、より深い学びに導く授業を設計しています。
  「GIGAスクール構想が目指す学びの実現はこれから」と話す宇山さん。県内の学校現場では、全ての児童生徒一人一人に合った最適な教育に向けて、さまざまなICT活用が芽吹いています。

赤碕小学校で行われた遠隔授業の実証実験。密を避けて生徒を二つの教室に分け、ウェブ会議システムを使って同時に授業。
遠隔授業の実証実験の写真1
教師は別室の児童にも問い掛け、反応を確かめる

遠隔授業の実証実験の写真2
別室の児童は1人が1台のパソコンを使い、画面に映る授業映像で学ぶ

宇山慎二さんの写真
市町村教育委員会と連携し、県内小中学校のICT活用を進める宇山さん

便利に使って学びを深める

岩美町立岩美中学校

  岩美中学校は、全学年の総合的な学習の時間でICTを活用した「SDGs(エスディージーズ)(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、国際社会共通の目標)を柱とした探究学習」に取り組んでいます。これは、生徒が興味を持った開発目標について調べ、解決案を発表するというもの。インターネットを使って集めた情報を各自の視点で整理・分析し、専用ソフトで図表・写真を交えた資料を作成。うまく使いこなせない場合は、生徒同士で教え合って互いに能力を高め合います。ソフトを使って資料作成時間を短縮、その時間を探究や意見交換に充てることで学びがさらに深まる利点も。
グループでの情報共有の様子
それぞれが調べたことを持ち寄ってグループで共有し、発表資料の作成に生かす(写真提供は岩美中学校)

  理科を教える黒岩(くろいわ)健太郎(けんたろう)教諭は、天体の運動や細胞分裂の様子などの説明にシミュレーションソフトや動画を活用。実体験が難しい現象も、教科書の記載だけでの学びより視覚的に分かりやすい、と生徒に好評です。黒岩教諭はICTを「あくまでも便利な道具」と捉え、「それを教師が使ってみてICTでできることとできないことを把握。そうして、授業のねらいを達成するために、必要な部分で効果的な活用を心掛けている」と話します。
ICTを活用した理科の授業のようす
電気分解の事象を動画やシミュレーションソフトで視覚的に体感(写真提供は岩美中学校)

【問い合わせ先】 県教育委員会事務局小中学校課
電話 0857‐26‐7947 ファクシミリ 0857‐26‐8170
メールアドレス shouchuugakkou@pref.tottori.lg.jp



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