知事 皆さん、あけましておめでとうございます。昨年は新型コロナで明けて、新型コロナで暮れるという一年でした。経済や社会が混乱する中、県民・関係者の皆さんのお力添えがあり、鳥取県は、感染拡大を全国最少レベルに食い止めることができました。 一 方、この時代だからこそ、ワーケーション(ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた言葉。観光地やリゾート地などで休暇を過ごしながら、普段とは違う場所で働くこと。)など、新たな地方の生かし方が脚光を浴びています。今年は、皆さんと一緒に新型コロナを収め、新たな展望を開くよう、まい進してまいります。 景山 鳥取大学医学部で、ウイルス感染症対策を専門に研究しています。 増田 企業に事務用品・機器を販売しています。「新しい働き方の創造と提案」をテーマに、取引先のIT活用やオフィス環境の整備に取り組んでいます。 宇田川 皆生(かいけ)温泉の旅館「皆生つるや」のおかみをしています。コロナ禍でもお客さまに安心して飲食・観光を楽しんでもらえるサービスの提供に努めています。 渡辺 県医師会の会長です。コロナ禍においては、県と連携して地域医療と県民の健康を守る活動を行っています。 司会 まず景山さん、新型コロナウイルス感染症についての分析をお聞かせください。 景山 新型コロナウイルス感染症が世界で初めて認知されたのは、2019年12月31日。このとき私は、2009年の新型インフルエンザを思い出しました。ただその際には、薬やワクチンがすでにあった。それが大きな違い。新型コロナは全く打つ手なく始まりました。 知事 国内では最初の症例が昨年1月16日に見つかり、鳥取県ではその日のうちに相談窓口を開設し、21日には新型コロナの全庁体制を構築しました。高齢化が進み医療機関の数も潤沢ではない鳥取県という危機感から、全国より先回りして体制を整えることとしました。私も景山さんと同じく、新型インフルエンザのときに県内でも感染が拡大した経験を念頭に置き、次々に対策を講じていったのです。 司会 渡辺さん、県内の新型コロナ検査・医療体制について教えてください。 渡辺 当初は「発熱・帰国者・接触者相談センター」を通して検査を行う仕組みでしたが、昨年11月に体制が変わり(発熱相談から検査までの流れを参照)、現在はかかりつけ医が診療・検査を行っています。新型コロナに対応できる県内の医療機関は、人口10万人当たり約50カ所。これは全国で1、2位を争う高水準です。陽性患者の入院病床も医療機関が連携し、十分確保できています。 知事 313床の入院先を確保していますが、人口当たりの病床数では全国的に見ても非常に多く、医療機関の協力のおかげです。また、PCR検査は、濃厚接触者だけでなく、接触者にも範囲を広げて幅広く実施。その日のうちに検査結果を出し、陽性者は即、入院へ。関係者も翌日までに、しらみつぶしに検査を行う。他地域と異なり、スピード感ある対応で、感染者数を最小限に抑えることができました。 司会 昨年4月に出された緊急事態宣言。旅館・宿泊業への影響は大きかったですね。 宇田川 昨年4月から2カ月ほど休業を余儀なくされました。皆生温泉の開発100周年を記念した事業も大部分は中止に。その間、新型コロナに関する勉強会をし、感染拡大予防ガイドラインに沿ったおもてなしをシミュレーションして、マニュアルを作りました。私たち旅館・宿泊業はお客さまの安全が第一。感染予防を丁寧に説明し、気持ちよく旅の思い出を持ち帰ってもらえるよう努めています。 知事 休業期間を無駄にすることなく、しっかりと感染予防の対策を整え、皆生温泉エリアは「安心観光・飲食エリア」として宣言されました。県内の旅館や土産物店では一切感染が広がらなかったのは、その努力のたまものですね。 司会 増田さん、コロナ禍ではオンライン会議やテレワーク(ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方。)が注目されました。 増田 取引先からイベント・セミナーのオンラインでの開催相談が相次ぎ、開催をサポートしました。また、当社ではライフステージ(年代別の生活状況)に合わせた働き方を目指し、3年前に在宅勤務制度を導入していたため、国の緊急事態宣言前に、全社員がスムーズに在宅勤務に移行。この経験を生かし、取引先に対して制度やIT環境整備の支援ができました。 知事 新型コロナを機に、テレワークでも仕事ができることが分かりました。テレワーク導入を県も支援しており、これから多くのニーズが生まれてくると期待しています。 司会 次に、新型コロナ収束に向けての動きや、コロナ収束後の展望について伺います。景山さん、全世界で新型コロナワクチンの開発が進められていますが、その状況は。 景山 感染症対策の3つの柱は、感染経路対策、ワクチン、治療薬です。感染経路を断つ対策を行ってきましたが、やはりワクチンは最重要課題。少なくとも開発に5年かかるところ、いままさに導入される前の段階まで来ています。わずか1年で開発されるのは奇跡的。日本では、今年開催される東京オリンピックに向けて、準備が整っていくと思います。 知事 確かに人類にとって朗報ですね。鳥取県の最大の目標は、新型コロナで 一 人の命も失うことなくワクチンにたどり着くこと。それができれば、県民の大勝利です。 司会 ワクチンが開発された場合、県民への接種体制は。 渡辺 季節性インフルエンザワクチンの接種体制が、そのまま新型コロナワクチンの接種体制につながります。ただ、開発が進んでいるコロナワクチンは凍結保存が必要で、輸送、保存体制などしっかりした対応が重要。加えて、かかりつけ医が患者の健康管理に関わり、医療従事者と県民が両輪となって、健康を守る行動を続けていきたいです。 知事 ワクチン接種に向けて、県は流通の確保や計画的配備などが円滑に進むよう、市町村、県医師会と一緒になり、県民の皆さんが安心できる環境を作っていきます。 司会 増田さん、新型コロナで働き方も多様化しています。 増田 昨年、ワーケーションと副業のセミナーをオンラインで開催しました。反響が多く、多様な働き方への関心の高まりを実感しました。また、県内14社が16人の副業人材を募集したところ、全国から約1400人が応募。東京から離れた鳥取県に興味を持っている人が多くいます。今後、地方の人材が不足する中、都市部の知見を持った人材を活用することで、地方企業の活性化、全国に打って出るチャンスが拡大していく可能性を感じています。 知事 今は、インターネットさえあればどこでも仕事ができます。移住しなくても副業やテレワークなど多様な働き方が可能。県内企業も都市部の魅力的な人材を獲得し、産業に活力を与えることができます。アフターコロナは第二の地方創生の原動力になると期待しています。 スイコー株式会社が本社に開設した誰でも使えるコワーキングスペース(個人事業者や特定の職場を持たずに働く人などが集まって、作業場所や会議室などを共有しながら仕事を行うオープンな場所。)。UIターン者や個人事業者をつなぐ機会を提供している(写真提供は増田さん) 司会 宇田川さん、今後の観光業の展望は。 宇田川 鳥取県は、海あり山あり。さらに他の温泉地と違い、サイクリングやパラグライダーなど体験型の観光が充実しています。豊かな食材のほか、自然を最大限生かしたレジャーなど、新しい余暇の過ごし方を提案していきたいですね。 知事 自然と共生して楽しむ旅のスタイルは、都市型のリゾートとは違った山陰型のリゾートとして鳥取県を生まれ変わらせる契機になります。県としても応援し、盛り上げていきます。今年1年が、新型コロナから次のステージへと、鳥取県が輝き、県民の皆様にとっても輝かしい年になることをお祈り申し上げます。 司会 鳥取県統轄監 小林綾子 (新春座談会は昨年11月23日に開催しました。)
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