認知症になっても地域で安心して暮らせる まちづくりを目指して
2022年12月16日
【監修】鳥取大学医学部認知症予防学講座(寄附講座)浦上克哉教授 誰であっても、認知機能は年をとるにつれて低下します。それが認知症のレベルにまで低下する時期は人それぞれです。もともと認知機能が高い人は、そのレベルまで落ちるのに長い時間がかかりますので、天寿を全うするまで認知症にならずにすむ可能性があります。 では、もともとの認知機能を高めるにはどうしたらいいのでしょうか。その大きな要因は、子どものとき、義務教育でしっかり勉強して頭を使ったかどうかだと言われています。また、高校や大学などでの高等教育を受けたこともプラスに働くと思われます。 こう聞くと、「子どもの頃のことを言われても、今更どうすることもできない」と思われるかもしれません。しかし、大人になってからでも、知的好奇心を持って新しいことにチャレンジすることで、認知機能を刺激して高い状態に保つことができます。
あなたには、以前からよくやっていて慣れていることや得意なことがあると思います。一方、やったことがないこと、得意でないこともあるでしょう。知的好奇心が高い人は、得意でないこと、専門ではないことに対しても関心を持ち、新しいことにチャレンジできます。 脳の神経細胞は、使っていないと壊れてしまいます。新しいことにチャレンジすると、今まで使っていなかった神経細胞によって、新たな神経ネットワークが作られていきます。このネットワークが広いほど、神経細胞は壊れにくくなり、認知機能が衰えにくくなります。 例えば、何か新しいことをしたときに、最初はよく分からずうまくできなかったけれど、いろいろ工夫しながら繰り返しトライしたら、だんだんコツを掴んでうまくなってきた…という経験をしたことは誰にでもあるでしょう。これがズバリ、神経のネットワークが新たにできたことを表しています。
はじめてのことにチャレンジすること、できないことにトライすることは、神経のネットワークを広げ、認知機能を維持することにつながります。
新しいことを吸収できるのは若者だけ…というイメージをお持ちかもしれませんが、そんなことはありません。中年でも高齢者でも、新しいことを吸収し、新たな神経ネットワークを作り出すことができます。 神経ネットワークが広ければ、もし脳卒中などで一部の脳機能が壊れてしまっても、それを代替できる可能性が高まります。 こんな話があります。脳梗塞による失語症になった人が2人いました。1人は日本語だけを喋り、もう1人は日本語と英語を喋ることができるバイリンガルです。失語症から回復するのが早かったのは、バイリンガルの方でした。これは日本語と英語を身に付けていたことで脳の言語中枢(言葉をつかさどる部分)が広くなっており、その一部がなくなっても残された部分でサポートできたからです。 神経ネットワークを広げるために、外国語を勉強するのでもいいですし、弾いたことのない楽器を演奏してみる、初めての画材で絵を描いてみる、作ったことのないものを料理してみる、行ったことのない場所に行ってみる、知らないものの仕組みを勉強してみる等々、あなたが知的好奇心を発揮できることは数限りなくあるはずです。 少しでも興味を持てるものを探して、「年をとったから」とか「年甲斐もなく」などと思わずに、前向きにチャレンジしてみてください。これが楽しみながら認知症を予防する大きなポイントです。人生をもっと楽しんでいきましょう!
鳥取県では高齢者のみならず幅広い年代に認知症に関する正しい知識と理解の普及をするために、2022年9月より、公式LINE「脳とからだの健康LINE」を立ち上げています。 友だち登録すると、認知症予防に関する情報が定期的に配信され、認知症リスクを簡易的にチェックする機能なども提供しています。認知症予防を意識した健康づくりの参考になりますので、ぜひご登録ください!
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<参考文献> 浦上克哉:科学的に正しい認知症予防講義. 翔泳社, 2021
長寿社会課 2022/12/16 | コメント(0)
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