【監修】鳥取大学医学部認知症予防学講座(寄附講座)浦上克哉教授
認知症は、脳の神経細胞が死滅することで、認知機能が低下して起こるものです。
脳の神経細胞が死んでしまう理由はいくつもありますが、認知症でよくあるのは、脳卒中(脳出血、脳梗塞)によって血流が途絶え、酸素と栄養が足りなくなったことが原因のパターン(血管性認知症)と、特定の蛋白質(アミロイドβなど)が脳に異常に蓄積したことが原因となるパターン(アルツハイマー型認知症)とがあります。
この2つのパターンにはいずれも、生活習慣病が関係しています。生活習慣病にならない、なってもきちんと治療をすることで、脳の神経細胞を守り、認知症を予防することができます。
血管性認知症を予防するには
では、血管性認知症のパターンから見ていきましょう。
血流が途絶えて酸素と栄養が足りなくなると脳の神経細胞が死んでしまうので、脳出血や脳梗塞にならないようにすればいいですね。
高血圧で血管に大きな圧力がかかっていると、脳の血管が破れて出血し、脳出血を起こしやすくなります。ですから、高血圧を是正することが脳の神経細胞を守ることにつながります。
また、脳梗塞は脳の血管が詰まるという病気です。血管が詰まらないようにするためには、脂質異常症や糖尿病をきちんと治療して、血液中の糖やコレステロールを適切な数値にコントロールしておくことが重要です。
さらに、高齢者に多い心臓の病気(心房細動)により血の塊(血栓)ができ、それが脳に飛んで血管を閉塞し、脳梗塞を起こすこともあります。これも適切な治療により脳梗塞を予防することができます。
アルツハイマー型認知症と糖尿病の関係
次に、特定の蛋白質(アミロイドβなど)が脳に異常に蓄積したことで神経細胞が死んでしまうパターンについてお話します。
糖尿病のある人はアルツハイマー型認知症になりやすいことが知られています。糖尿病になるとインスリンというホルモンの分泌が減ってしまうのですが、インスリンは血糖値を下げるだけでなく、脳内に運ばれてアミロイドβを作りにくくしたり、分解しやすくしたりしてくれる働きもあります。
糖尿病だと脳に運ばれるインスリン量が少なくなるので、アミロイドβが蓄積しやすく、アルツハイマー型認知症のリスクが高まります。さらに先ほど述べたように、高血糖は血管を傷つけ、脳梗塞を起こして血管性認知症をもたらすこともあります。
もし健診などで血糖値が高いと指摘されているなら、ぜひ早めに病院に行ってください。軽いうちに対策しておいた方が血管と脳の健康を保ちやすくなります。
メタボリックシンドロームの方は要注意!
高血圧や糖尿病、脂質異常症に加えて、肥満(内臓脂肪の蓄積)があってメタボリックシンドローム(メタボ)と診断されている方は特に要注意です。
メタボは動脈硬化を起こして脳卒中や心筋梗塞などになりやすい危険な状態です。ここまでに話した通り、これらは認知症にもつながっていきます。
メタボ、もしくは肥満の方は、普段はこれといった症状がないので軽視しがちですが、知らず知らずのうちに認知症のリスクが高い状態になっています。食事・運動などの生活習慣を見直して、体重や血圧、血糖やコレステロールの値を正常に近づけるようにしてくださいね。
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<参考文献>
浦上克哉:科学的に正しい認知症予防講義. 翔泳社, 2021