【監修】鳥取大学医学部認知症予防学講座(寄附講座)浦上克哉教授
2023年6月14日に『共生社会の実現を推進するための認知症基本法』(以下、認知症基本法)が国会で成立しました。
この法律の目的は「認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(=共生社会)の実現を推進」することです。この目的に向けて、認知症施策を国や地方自治体が講じていくことになりました。
認知症の人が暮らしやすい社会は、認知症ではない人にとっても安心して暮らせる社会ではないでしょうか。そのような社会の実現を目指した法律になっています。
認知症基本法ができて、何が変わる?
「基本法」は国や地方自治体が施策を行っていく際の理念や基本方針を示したものです。認知症基本法には、下記のような基本的施策が示されています。
認知症基本法の基本的施策
(1)認知症の人に関する国民の理解の増進等
(2)認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進
(3)認知症の人の社会参加の機会の確保等
(4)認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護
(5)保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備等
(6)相談体制の整備等
(7)研究等の推進等
(8)認知症の予防等
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これらの具体的な取り組みについては、今後、国や地方自治体が個別に施策を計画し、実施することになります。認知症基本法が成立して約1年経ちましたので、それぞれの自治体で行う内容が検討され、令和6年度以降から実行に移されるものと思われます。
鳥取県で行われる認知症施策は?
鳥取県には認知症の人が少なくとも約22,000人住んでおり(2023年4月時点、認知症で要介護認定を受けている人の数)、今後も増加していく見込みです。
鳥取県は今までも認知症に関する施策をいくつも実行しています。その結果、全国的にも認知症サポーター※が多い県となりました(2024年3月末時点で112,400人、対人口比で全国3位)。
※認知症サポーター:認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする人
鳥取県が令和6年に行う認知症関連対策としては、認知症になった人が社会参加できるように支援したり、認知症サポーターなどの人材育成と関係機関の連携を強化したり、ICTを活用して行方不明になることを防止したりして、認知症(若年性認知症を含む)になっても安心して暮らせる共生社会の実現を目指します。
また、認知症で困りごとが出てきた際には、コールセンターや相談会などで対応できるようにし、認知症の医療体制の充実も図ります。認知症の介護を担う人材育成も行います。
さらに、共生社会を実現するために予防対策も重要です。認知症基本法にも基本的施策「(8)認知症の予防等」として明記されていますので、鳥取県では認知症の予防にも力を入れています。鳥取県公式「脳とからだの健康LINE」を通じて情報発信をするとともに、「とっとり方式認知症予防プログラム」の普及やフレイル予防に取り組むことで、認知症になる人を減らす、もしくはMCI(軽度認知障害)から認知症への進行を抑えたいと考えています。
これから、鳥取県内でさまざまな認知症関連イベントが行われる予定です。機会があればぜひ参加してみてくださいね。