ジビエ解体処理施設 ちづDeer’s
狩猟によって捕獲された野生鳥獣またはその肉・ジビエ。「ジビエ解体処理施設ちづDeer’s」では、野生鳥獣を解体し、精肉に加工。農産物に被害を与えている鳥獣を食肉として生かす、ジビエの普及に取り組んでいます。
シカの肉を骨からそぎ落とし、丁寧に精肉加工する赤堀さん
食べて生かす山の恵み
ちづDeer’sは、2018(平成30)年4月に代表の赤堀広之さんが開設、主にシカ肉を扱っています。智頭町内で捕獲されるシカは年間約千頭、これを有効利用するための解体処理施設の建設案が2011(平成23)年に浮上。「智頭町百人委員会」(住民自らが、身近で関心の高い課題を話し合い、これを解決するための政策を町に提案する組織)獣害対策部会に所属し、若手として期待されていた赤堀さんに、施設を運営してもらえないかと声が掛かりました。
このとき、シカの出没に悩まされる住民の依頼でわな猟免許を取得し、猟を始めていた赤堀さん。捕獲したシカやイノシシを自宅で解体した経験もあり、「思い切ってやってみよう」と、運営を決意しました。
気持ちが決まってからは、若桜町にある解体処理施設「わかさ29工房」に半年間通い詰め、シカ全体の精肉方法や衛生管理について学びました。
解体処理の際に気を付けていることは、衛生面と迅速性。猟師の協力も得て、速やかな引き渡しと適切な血抜きで、鮮度とおいしさを損なわないよう努めています。
シカ精肉の販売先は、主に町内の飲食店です。もともとシカ肉に興味があり、すぐに取引を始めた店もあれば、赤堀さんが作った試食用のシカ肉の薫製を食べ、そのおいしさを知って取り扱いを始めた店も。そのほか、町内小中学校にも月に1回、給食の食材として提供しています。「子どもたちがおいしそうに食べてくれてうれしかった」と赤堀さん。小学校に招かれ、一緒にシカ肉のカレーを食べて、そう感じたそうです。
今後は、HACCP(国際的に推奨されている食品衛生管理方法の一つ。県は、HACCPを導入した施設を認定し、ウェブサイトで公表。認定品には認定マークが付く。)を取得して、安全性への信頼をより高め、スーパーや小売店などでも販売してもらうことが目標。「個人でも手軽に購入できるようにしたい」と赤堀さんは話します。また、「旅館や他の飲食店でもシカ肉を出せるようになれば、もっとたくさんの人に知ってもらえる。智頭町をジビエの町にしたい。まずは、SNSで魅力を発信したい」とジビエ普及に積極的です。
シカ肉を使ったボロネーゼ(写真提供は赤堀さん)
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取材を終えて
シカ肉を精肉に加工する際、筋や膜を丁寧に取り除く赤堀さん。包丁さばきは繊細で巧妙でした。(や)
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