防災・危機管理情報


  時間をかけて進行する認知症は、早期発見と適切な対応で発症や進行を遅らせることができるといわれています。県は、日本財団や鳥取大学と共に、日常生活でも習慣化できる独自の認知症予防プログラムを開発。伯耆町で検証したこのプログラムの内容や効果を報告します。

県独自のプログラムを開発

  認知症の予防または発症遅延には、一般的に「効果が期待できる行動の習慣化が有効」と考えられています。
  県は、2016(平成28)年10月、日本財団との共同プロジェクトにより、鳥取大学医学部の浦上(うらかみ)克哉(かつや)教授を中心に、認知症予防に取り組む県内の医療・福祉職、リハビリ専門職などでチームを結成し、県独自の認知症予防プログラムの開発に着手。メンバーの知見や経験を生かして検討を重ね、2017(平成29)年、「とっとり方式認知症予防プログラム」を策定しました。
  このプログラムの特徴は、「運動」「座学」「知的活動」を組み合わせた一連のサイクルを週1回継続して行うこと。この3つの活動を組み合わせたプログラムの医学的効果が全国で初めて証明されました。
  「内容や頻度を高くすると参加者を制約し、 一 部の人だけのものになりがち。多くの人が参加し続けられるものを構築した」と浦上教授は話します。
浦上克哉教授の写真
鳥取大学医学部の浦上教授

運動プログラム「右片脚立ち」の様子
伯耆町溝口公民館で実践中の運動プログラム「右片脚立ち」

運動プログラムの一つ「足踏みグーパー」。足踏みをしながら腕を交互に前へ突き出す。前に出す手は「グー」、胸に置く手は「パー」
運動プログラム「右片脚立ち」の様子
運動プログラム「足踏みグーパー」をしている写真2

知的活動「歌詞合わせ」の様子
伯耆町では「とっとり方式認知症予防プログラム」を継続して実践。知的活動の一つ「歌詞合わせ」を楽しむ参加者の皆さん

週1回2時間実践

「とっとり方式認知症予防プログラム」

運動(50分)
  準備運動
  有酸素運動・筋力運動
  整理体操
座学または休憩(20分)
  4回のうち3回は「休憩」、1回は認知症への理解を深める座学(「認知症とは」「気付いた時の第一歩」など)を取り入れ
知的活動(50分)
  思考力や判断力などを刺激する活動を個人および集団で実践


「とっとり方式認知症予防プログラム」の運動の一部

(1)座って足踏み
「座って足踏み」の写真

(2)立って足踏み
「立って足踏み」の写真

(3)右片脚立ち
「右片脚立ち」の写真

(4)立って足踏み
「立って足踏み」の写真

(5)左片脚立ち
「左片脚立ち」の写真

(6)立って足踏み
「立って足踏み」の写真

(7)足踏みプラス拍手
「足踏みプラス拍手」の写真

(8)歩行
「歩行」の写真

一連の動作は、DVDに収録された「とっとり方式認知症予防プログラム」の運動プログラム(有酸素運動)。「右」「左」は視聴者に合わせた表示

参加者の意欲上げた検証教室

  伯耆町の高齢化率は、今年9月時点で県平均の32.1%を大きく上回る39.4%。町は、多くの高齢者が抱く物忘れへの不安を解消するため、2003(平成15)年以降、浦上教授の指導を受けつつ、タッチパネル式コンピューターによる認知症の簡易検査や認知症予防教室などを実施。さらに、高齢者一人一人に、認知症の早期発見の重要性を啓発し、受検や教室への参加を呼び掛け続けました。
  こうした中、「開発したプログラムを実証し、広く普及することが健康で安心して暮らせる社会の実現になる」との浦上教授の思いが伯耆町に響き、2017(平成29)年10月から1年間、効果を実証する「検証教室」に町内の高齢者136人が参加しました。
  このプログラムを繰り返し続けるうちに、物忘れを気にして自信をなくしていた人の笑顔や会話が増加。また、参加者が徐々に、教室の準備や片付けを率先してするようになるなど意欲向上も。検証の結果、認知機能の改善や身体機能の向上が確認されました。

仲間と過ごす時間と場が自信を回復

伯耆町 健康対策課(伯耆地域包括支援センター) 保健師 有富(ありとみ) 千帆(ちほ)さん
有富 千帆さんの写真

  一人でも多くの人に検証教室に参加してもらえるよう、自宅から教室までの移動手段の確保や雰囲気づくりに気を配りました。周りの目を気にするご家族には、根気強く丁寧に説明して理解を得たこともありました。
  物忘れに対する不安から人との関わりを断ち、家にこもりがちになると認知機能が低下傾向になります。週1回、同じメンバーと顔を合わせる検証教室は楽しく過ごせる場。「ここなら出ても大丈夫。みんなとなら取り組める」という安心感から、次第に自信を取り戻し、仲間意識が高まるのも分かりました。最終回は、参加者同士が自発的に手作り料理を持ち寄り、互いをもてなし合うほどに。認知症をわが事として積極的に参加した結果、自分たちが主役として活動できる場を皆さんがつくっていました。

DVDやパンフレット、地域で使って

  このたび開発した「とっとり方式認知症予防プログラム」をDVDとパンフレットに収録。内容は、片脚立ちや椅子を使った負担の少ない運動、生け花、間違い探し、連想ゲームなど日常生活に取り入れて習慣化できるもので、介護予防教室や地域のサロンでも活用できます。入手方法や使い方はお問い合わせください。

生け花をしている写真
生け花には空間のイメージをつかむ力を養う効果が(写真提供は伯耆町)

「歌詞合わせ」をしている写真
みんなで歌を口ずさみながら歌詞を並び替える「歌詞合わせ」は、情報を整理する能力を刺激

【問い合わせ先】 県庁長寿社会課
電話 0857‐26‐7177 ファクシミリ 0857‐26‐8168
メールアドレス choujyushakai@pref.tottori.lg.jp

全県に普及、効果を実感して

  伯耆町では、「とっとり方式認知症予防プログラム」の効果が実証されただけでなく、活動を通じて「高齢者が絆を感じられる安心の居場所」が生み出されました。
  県は、このプログラムを市町村と連携して県内へ広く普及することを目指しています。市町村で今後実施されるプログラムへ参加し、効果を実感してください。
  また、同プログラムは、介護サービス事業所や地域のサロンでの実施が可能です。詳細は、県庁長寿社会課へお問い合わせください。

家でも実践、次が待ち遠しく

参加者 笠野(かさの) 恵子(けいこ)さん
笠野 恵子さんの写真

  検証教室への参加は住民健診での声掛けがきっかけ。「行ってみようかな」そんな軽い気持ちでした。教室までは、町のデマンドバス(事前に配車センターに電話予約)を利用しました。
  初めは、難しい運動もあったのですが、毎回、同じ動作の繰り返しなので、すぐにできるように。慣れると難しくない内容だし、頭がすっきりするので家でも実践しています。最近、肩凝りがなくなったのがうれしいです。それから、家では自分が先生役になって教室で学んだことを夫に教えています。「知的活動」にもなる新聞のクロスワードや間違い探しをしながら夫婦の会話も増えました。
  教室に行くと他地域の皆さんや温かい人柄のスタッフに会えるので、次が待ち遠しいです。

「続けたい」の意欲に応える フォローアップ教室展開

  現在、伯耆町では「とっとり方式認知症予防プログラム」の検証教室の修了者を対象に、フォローアップ教室を実施しています。これは検証教室の参加者の9割以上の人が示した「引き続き参加したい」との意欲に応えたもの。町内の病院や社会福祉協議会、ボランティアが教室を運営し、農村環境改善センターや公民館など6カ所で、検証教室と同じプログラムを継続して行っています。
  参加者は、DVD(上記参照)を見ながら映像に合わせて「運動」し、「休憩」後は、グループに分かれて折り紙や歌詞合わせ、連想ゲームなどの「知的活動」を実施します。仲間と共に楽しく取り組むことが、参加者の興味と活動を持続させています。

折り紙をしている写真
折り紙で紅葉を作成。折り方を確認する参加者

認知症予防普及フォーラム

  「とっとり方式認知症予防プログラム」を紹介します。体験も可能。

【日時】12月8日(日)午後1時30分から
【場所】琴浦町生涯学習センター「まなびタウンとうはく」(琴浦町徳万)
【問い合わせ先】 県庁長寿社会課
電話 0857‐26‐7177 ファクシミリ 0857‐26‐8168

【問い合わせ先】 県庁長寿社会課
電話 0857‐26‐7177 ファクシミリ 0857‐26‐8168
https://www.pref.tottori.lg.jp/33673.htm
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