防災・危機管理情報


  過疎化・高齢化の進行により、集落機能の維持が懸念される中山間地域。住民が食事や買い物、通院をはじめ日常生活に困らないように、助成制度を活用した拠点づくりで住みやすい地域を目指す住民の取り組みを紹介します。

医療が地域に安心もたらす

互いの理解が医療を支える 俣野(またの)ふれ(あい)学舎(がくしゃ)(江府町)

  体調に不安を感じた時、医療機関が近くにあることは、地域で安心して暮らせる大事な要素の一つです。江府町は、2019(平成31)年4月、地域医療の拠点として「俣野(またの)ふれ愛学舎(あいがくしゃ)」を開設。ここに開所した俣野診療所が、週2回、1日2時間、地区住民の健康を守っています。これまで診療所がなかった同地区には、バスを使って一日がかりで町外の病院に通っていた人も。すぐに相談できる身近な診療所ができたことは多くの住民に安心を与えています。
俣野ふれ愛学舎の写真
廃校を活用した「俣野ふれ愛学舎」

診察の様子
医師が生活状況や体調の変化を聞き、患者の不安を取り除くアドバイス。処方薬は、次の診察までに途切れないよう薬局から患者宅へ配達する仕組みができている

  一方、地域医療を学ぶ人材の育成拠点でもある「俣野ふれ愛学舎」。廃校になった小学校の改修には日本財団や県の助成制度が活用され、医学生が宿泊して研修できるよう休養室やシャワー室を整備。施設の管理は、住民団体「江府町の地域医療を支援する会」が行っています。同会の会員は診療所の患者や、活動に賛同する町内外の50人余り。地域の診療所周辺の清掃や、自主的にプランターの花の植え替えをするなど、診療所を気持ちよく利用してもらえる活動はもちろん、「診療所の待ち時間が長い理由」「賢い受診の仕方」などを学ぶ会員同士の勉強会や、町民も参加できる講演会も開催。自分の住む地域に診療所がある大切さを伝えています。
  さらに同会は、江府町で地域医療を学ぶ鳥取大学医学部の学生サークル「地域医療研究部」(愛称「ちいけん」)の活動支援も。「ちいけん」が目指す地域医療とは、患者の体の異常な部分を診るだけでなく、生活習慣や社会的なつながりなど生活全体を把握した上で診療を行うこと。患者との良い関係づくりが大切です。「集落の区長さんに、学生のこれまでの活動内容や地域医療の重要性を説明することで地域全体へ理解を促し、学生が活動しやすい環境をつくっている」と話す同会の事務局長・本高(もとたか)善久(よしひさ)さん。こうして、学生は集落全戸を訪問し、住民一人一人に健康への不安や悩み、日常生活の聞き取りができ、調査に基づく改善提案をしています。
本高善久さんの写真
「江府町の地域医療を支援する会」事務局長の本高さん

  住民との距離が徐々に縮まった「ちいけん」メンバーの中には、集落の農作業や祭り、料理教室などに参加する学生も。住民からは、「学生に提案された体操が習慣化した」と元気な声が届きます。この変化に本高さんは、「ここで学んだ学生が将来、医師として戻ってきてくれたら」と俣野診療所の未来に思いをはせます。
地区行事のようす
江府町俣野地区で地域医療を学ぶ医学生が地区行事に参加。学生が来ることで同地区は活気づいている

課題の解消、分かりやすく提案

鳥取大学医学部学生サークル「地域医療研究部」(愛称「ちいけん」)
サークル幹部の写真
幹部の4人(左から)森脇聡美さん、部長の岩間未紗さん、小林稜典さん、枡井遥己さん

  「ちいけん」は2000(平成12)年から江府町で地域医療を学んでいます。2018(平成30)年度からは池の内集落で活動。大学での学びは受け身ですが、地域医療は自ら課題を見つけることから始めます。
  昨夏の調査では「睡眠で疲れが取れない」「家族の介護が不安」との声が多くありました。私たちは、これらの課題の解決策を勉強して住民の皆さんに分かりやすく提案、それを実践・習慣化してもらうことで健康な生活につなげたいです。
  「俣野ふれ愛学舎」での合宿中には、集落の皆さんに顔を覚えてもらったり、差し入れをいただいたり、とてもうれしかったです。卒業しても俣野地区に「ただいま」と言えるようがんばります。
報告会の様子
調査結果や改善提案を住民へ報告(写真提供は地域医療研究部)

機能を広げ、高齢化に対応

自ら築いた拠点、さらに進化 ホームランド多里(たり)(日南町)

  県内で高齢化が最も進んでいる日南町。2018(平成30)年6月以降、高齢化率は50%を超えています。中でも、多里地域は住民の約6割が65歳以上。高齢化が著しく進行する中、同地域では自らの手で地域を維持し、盛り上げる取り組みを早くから行ってきました。
  その一つが広島県との県境近く、国道183号沿いに店舗を構える「ホームランド多里」。ここは、国道を行き交う人の食事・休憩所のほか、住民の交流や農産物直売所としても利用されています。運営は、地域住民が出資して設立した「多里地域振興組合」。「農産物の販売や加工ができる場所、レストランが欲しい」との声や、住民自らが行った交通量調査を基に地域の拠点づくりを計画。日南町への要望を経て、1995(平成7)年にホームランド多里が誕生しました。
  このように住民自ら地域づくりに取り組んできた同地域ですが、食事や買い物に困り、配食サービスを求める高齢者の声が増加。そこで組合は、日本財団や県、日南町の助成制度を活用してホームランド多里の厨房(ちゅうぼう)を広げるとともに、配食や地域内の移動に使用する車両を整備。2019(平成31)年3月、本格的に配食サービスを始めました。出来たての弁当を利用者宅に届けるときには、体の具合を聞くなど見守りも。
弁当を受け取る金谷松代さんの写真
弁当配達時の声掛けに「私も元気が出るし、離れて暮らす家族も安心」と話す金谷松代さん

  「ホームランド多里は自分たちの店」と住民が誇る拠点。今後は、若者が集まるにぎわいある場づくりを視野に、地域住民と連携し、買い物や移動などの問題にも一層取り組みます。

開けた瞬間の喜ぶ顔が原動力

多里地域振興組合 専務理事
福原(ふくはら) 伴美(ともみ)さん
福原伴美さんの写真

  月・火・木・金曜日の週4回、昼食の配食サービスを実施。一人暮らしの高齢者6人に、地元の旬の食材を使った手作りの日替わり弁当を届けています。栄養バランスはもちろん、カツオと昆布で取っただしの風味豊かな味付けと見た目にこだわりが。ふたを開けたときに「わぁ」と喜んでもらえるよう、彩りを考えて作っています。うちの畑で収穫したミニトマトも添えますよ。また、食べやすいようにおかずに切り込みを入れるなどの配慮も。
  利用者の皆さんは配達を心待ちにされ、中には玄関に出て待ってくれている人も。日用品や雑貨も、種類は少ないですが、要望があれば弁当配達に合わせて届けています。

こだわりの弁当は、おかずのみ350円、ご飯付き500円(いずれも税込み)で配達は無料。利用者から「おいしい」と好評
弁当(おかずのみ)の写真
弁当(ご飯付き)の写真

廃園を機に、わがまち再考

できることを無理なく続ける 森の楽園(がくえん)(琴浦町)

  琴浦町の古布庄(こうのしょう)地区も少子高齢化が進む地域の一つ。保育所・小学校の廃止を機に、同地区を元気にしようと、区長や公民館長など有志19人が2012(平成24)年、「魅力ある古布庄をつくる会(現・古布庄地域振興協議会)」を結成。現状を踏まえ、この地域に何が必要かを問うアンケートを、地区全戸に対して実施。その結果、廃園になった保育所を拠点とする活動に取り組むことになりました。
  活動の内容は、住民主体で無理なく続けられることを条件に、みんなで検討。「絵手紙やパッチワークなどの教室部会」「『いきいき百歳体操』や茶話会をする健康部会」「こども園と交流する交流部会」に決定。同会のメンバーで部屋の壁を塗ったり、タペストリーで飾ったりして、2014(平成26)4月、「森の楽園」と名付けた拠点で活動を始めました。
  2017(平成29)年には、県の助成制度を活用して改修したスペースで「森のカフェ みなくる」をオープン。新設の「カフェ部会」が提供するランチを楽しみに訪れる住民は、健康部会にも参加。「おいしい食事と楽しい会話がごちそう」との利用者の声が古布庄の拠点には何よりの励みです。
百歳体操を楽しむようす
かつての遊戯室に、百歳体操を楽しむ高齢者の笑い声が響く

週替わりランチのようす
週替わりのランチ。月に一度、地域のそば職人による手打ちそばを提供

次世代の参加 仕掛けはこれから

古布庄地域振興協議会 会長
馬野(うまの) 忠篤(ただあつ)さん
馬野忠篤さんの写真

  健康部会の「いきいき百歳体操」は開始当初6人。初めは町内の病院スタッフが来て指導してくれました。続けるうちに、「膝や腰の痛みが軽くなった」「人と話ができ、笑い合える」などの効果や、参加者が隣近所へ声を掛け合って現在約25人に。頻度も週1回から2回に増えました。見学に訪れる町外の団体もあります。
  カフェ部会が高齢者の孤食(1日の全ての食事を1人で食べること)防止を目的に始めたランチには、評判を聞いた地域外からのお客さんも来てにぎやかに。おかげで、地域の活力アップにつながっています。誰もが楽しめるようにと名付けた「森の楽園」に若者や子育て世代も参加してもらえるような仕掛けを考えています。

事例や制度をうまく使う

  使われなくなった校舎や園舎、既存の施設を地域の拠点として活用し、住民の健康や暮らしを守っている事例を紹介しました。いずれも「自分の住む地域をなんとかしなければ」との思いに動かされた小さな地域の大きな取り組みです。
  県は、住民が自らの課題や困り事を解決する地域が多く出ることを願い、活動のサポートを行っています(下記参照)。中山間地域の課題は全県の課題。助成制度をうまく活用して、誰もが住み慣れた場所で生き生きと暮らせる地域づくりを進めましょう。

助成制度の活用を

  県は、誰もが中山間地域で安心して暮らし続けるための仕組みづくりや施設整備のために要する経費を助成しています。助成を受けるには要件があり、市町村の補助が必要な場合もあります。詳細はお問い合わせください。

【問い合わせ先】 県庁人口減少社会対策課
電話 0857‐26‐7961 ファクシミリ 0857‐26‐8107

https://www.pref.tottori.lg.jp/jinkoutaisaku/

 

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支援の例
  買い物支援や移動支援などの計画作りや試行的な取り組み
  空き店舗や空き校舎などを活用し、地域住民が運営する店や交流サロンなどの整備
  農産物や伝統文化などの地域資源を活用した取り組みや、住民による見守りを兼ねた配食サービスなどの社会的貢献を伴う取り組みなどのコミュニティービジネス創出


【問い合わせ先】 県庁人口減少社会対策課
電話 0857‐26‐7961 ファクシミリ 0857‐26‐8107


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