きないな西町
鳥取県中部地震発生をきっかけに倉吉市西町の有志が立ち上げた「きないな西町」。古家具や空き家を有効活用しつつ、生活の一部に古いものがある地域の良さを生かした取り組みを進めています。
2019年8月開催の倉吉サクラム。町並みを生かし、イタリアの収穫祭(サグラ)をイメージした大人向けの雰囲気を演出(写真提供は中山さん)
古き良きもの、守って活用
「きないな西町」の世話人の一人、中山晶雄さんは、老舗の茶舗を営む祖父の後継ぎとして2015(平成27)年、県外から倉吉市西町に移住しました。店の改装中、自宅や近所に使われていない古家具が多いことに気付いた中山さん。アンティークほどではないものの、長年使い込まれたたんすや椅子、地元職人による家具などは貴重なものばかり。「商人の町だからこその特色。価値ある古家具を地域の資源として守り継ぎたい」と考えた中山さんは、町内の古家具を集めて貸し出す「古家具バンク」を始めました。
ところが、翌年10月に県中部地震が発生、町中の建物が被災しました。倒壊の危険がある空き家に残された多くの家財道具の扱いに困る持ち主も。中山さんは、「長谷の観音市」のバザーでそれらを売って、復旧費用に充てることを提案。町内会下部組織として「きないな西町」を有志で立ち上げ、受け入れた収益金で、町内の住宅の雨漏り修理やごみ処理などを支援しました。
震災後、住民を悩ませた問題の一つが家屋の存続でした。子どもが県外にいて相談がままならないと困る高齢者が多く、伝統的建造物群保存地区のため簡単に解体もできません。中山さんらは、家財道具の整理を手伝いながら、家主に代わって手続きをしたり、補修相談に乗ったりと、悩む住民と行政との橋渡しをしました。この活動は今、空き家バンク登録につながっています。
「きないな西町」のメンバーは現在7人、地域をブランドとして育て、価値を高める「ブランディング」にも取り組んでいます。その試みとして昨夏、町並みを生かし、野外で食事を楽しむイベント「倉吉サクラム」を初開催。メンバーのネットワークを通じて招いた飲食店の料理と地元住民のもてなしが好評を得ました。
「西町を、センスの良い専門店が集まる町、休日に出掛けたいと思われる町にしたい」と中山さん。実現への模索が続きます。
家具のリメイクも手掛ける中山さんが古いたんすをキャビネットに。開店コストの節約にと新規出店者から需要がある
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取材を終えて
住民の困り事は「きないな西町」がお手伝い。人と人とのつながりや地域の絆も西町の「良きもの」の一つと感じました。(や)
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