大切なのは「過程」を楽しむこと~喜びと温もり広がる臨床美術~
臨床美術士・グラフィックデザイナー
井澤 ゆうか さん
広告代理店プランナー、中学校美術教師を経て、2011(平成23)年に臨床美術士の資格取得。翌年、米子市内のフリースペースで臨床美術の体験講座を開始、現在、県中西部の高齢者施設や保育所などを中心に活動。伯耆町在住。
※臨床美術とは、楽しみながら作品を制作することで脳を活性化させ、認知症予防や症状の改善、子どもの感性教育、働く人のストレス解消などに効果が期待できる芸術療法の一つ。(特非)日本臨床美術協会の指定校での講座を修了し、同協会の認定試験に合格すると資格が得られる。
昨春の講座で参加者が和紙を使用して制作した「玉ねぎの立体作品」。画材やモチーフは毎回変えて、季節感も楽しんでもらえるよう心掛ける(写真提供は井澤さん)
臨床美術との出合いは
広告のプランナーや教師として、商業デザインや教育などの形で美術に関わってきました。臨床美術は、活動の幅を広げるべく特別支援学校教員の免許を取得する中で知り、深く学びたいと思いました。開講時10人ほどの参加者は今では60人以上になる講座も。ほかにも山陰両県で40カ所を超える定期講座を開催しています。
講座の参加者は
子どもや高齢者が中心ですが、保育所・介護施設の職員、保護者向けの講座依頼も。障がいのある人へは、自宅に伺い、障がいの状況に応じて短時間で作業数が少なくても楽しめるプログラムを提供。誰でも楽しめる工夫をしています。
体験した参加者の変化は
臨床美術では「仕上がり」だけではなく「過程」も重要視。絵やオブジェを五感で楽しみながら思うままに制作してもらいます。できた作品はみんなで褒めて認め合う。参加者からは毎回「人に優しくなった」「自分を肯定できるようになった」という感想が。そんな前向きな様子が家族や施設職員の皆さんにも自然に伝わり、喜びが広がっていくのを感じています。
活動を通して目指すものは
講座で訪問している施設では、職員の利用者への接し方や声掛けが変わってきたと聞きます。過程を大事に、今を大事にすれば自分の心が穏やかになれる。臨床美術を通して、このような温かい環境をつくっていきたいです。
作品を作る講座の参加者。年末の講座では、針金と縄を使った正月飾りを思い思いに制作
作品が完成したら、全員で鑑賞。作品が受け入れられることで自信を回復し、意欲的になる参加者も
← 前のページへ 次のページへ →