誇りの桜、守り継ぐ
1951年(昭和26年)年4月、西伯町(現南部町)に発足した奉仕団体「河畔倶楽部」は同年8月、法勝寺城跡の城山を住民憩いの公園にと整備し始めました。当時、竹が生い茂って昼でも薄暗く、付近の住民が敬遠していたこの一帯をまず開墾。翌1952年(昭和27年)以降、城山、法勝寺川土手、妙見山に合わせて500本余りのソメイヨシノを植えました。始めた頃は「山に桜を植えても育たない」と冷ややかな声が聞かれたものの次第に理解され、住民や町の協力が得られるように。また、地域貢献を重視する同倶楽部は、行政や住民への保育所設置の呼び掛け、道標や観光案内板設置なども積極的に実施しました。
若者の一層の活躍を願い、満60歳で後進に道を譲る決まりの倶楽部の会員は現在、法勝寺地区に住む41から58歳の有志8人。減少傾向にあるものの、自営業、造園業、公務員などさまざまな職種の会員が、桜並木の保全にいそしんでいます。活動範囲は城山公園、法勝寺川土手周辺。3月と11月には、てんぐ巣病(カビにより枝の一部がこぶ状になり、そこから細い枝が多数発生する。病巣基部のこぶを含めて枝葉を切除し、焼却して防除する。)による奇形や枯れた枝の除去、6月と9月は下草刈りなどを約70年続けています。
こうして管理してきた桜も樹齢70年近くになります。南部町は2016年(平成28年)、樹木医である鳥取大学農学部の日置佳之教授の協力の下、法勝寺川土手の桜の樹木診断と生育状況調査を実施。植栽間隔の狭さが互いの生育を阻害しているなどの調査結果を踏まえ、2018年(平成30年)から2年間かけて間伐が行われました。
「満開の桜を見ると、ここに住んでいることを誇りに思う」と話すのは、桜を見て育った会長の内田誠さん。その桜を守る活動もまた誇り。内田さんは「楽しいからこそ続けられる。この桜並木を将来に残したい」と続けます。
てんぐ巣病による奇形の枝や落ちる危険のある枯れ枝を除去。病変部の見つけ方は樹木医に学んだ先輩会員から受け継ぐ(写真提供は河畔倶楽部)
てんぐ巣病による奇形の枝(写真提供は河畔倶楽部)
桜は南部町の花。法勝寺川の土手に5.3キロメートル続く桜並木(写真提供は南部町)
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