防災・危機管理情報


カネナリ会

  鐘を突いていた住職が2003年(平成15年)11月に亡くなって約半年間、鐘の音が途絶えた日南町の常桂寺(じょうけいじ)。集落の有志によるカネナリ会は約16年間、鐘突き活動を続けています。

心地良い緩さが継続誘う

  日南町大仙谷(おおせんだに)集落の小高い台地にある山寺・常桂寺。かつては、映画上映をはじめとする娯楽やラジオ体操の会場として使われるなど、住民にはなじみ深い場所です。活動のきっかけは、2004年(平成16年)6月の集落寄り合い後の懇親会で出た「鐘の音がしないのは寂しい」という住民の声でした。「また突かんかや」「総代が突いたら」「みんなが交代で」と話は展開。さらに
▽鐘突き時刻は原則午前6時30分ごろと午後5時ごろの2回
▽1週間交代の当番制
▽都合で突けなくてもよい
など緩いルールもその日のうちに決定。こうして、14人の男性会員により「カネナリ会」が発足し、翌7月から再び集落に鐘の音が響くようになりました。
  会員の平均年齢は71歳。入れ代わりや隣の集落からの参加もあり、現在も14人を維持。会員の藤原(ふじはら)寿郎(としろう)さんは「13人だと毎年同じ人が盆・正月の当番になるので、14人は必要」と笑います。1回の鐘を突く数は自由なので、当番のこだわりが発揮されます。時刻を意識して朝7回と夕方5回、縁起を担いで末広がりの8回、6分間で終えるよう45秒おきに9回など人それぞれ。開始当初は、音が小さい、間隔が長過ぎる(短過ぎる)などの意見も聞かれました。しかし、今では「生活の目安になる」「鐘の音が良い」などねぎらわれ、その特徴から当番を言い当てる住民もいます。
  今年7月で17年目に入る活動を「冬の朝は厳しいと思うこともあるが、何かに突き動かされて体が動く」と話す藤原さん。「『何となく、緩く』が集落のいいところ。続ける理由ははっきりと分からないが、心地よい緩さがそうさせているのかも」と続けます。

鐘を突く松本さんの写真
午後5時ちょうどに鐘を突く会員の松本一俊さん。会発足当初の木製だった撞木はその寿命を終え、現在は先端が木製、本体は金属製のハイブリッド(混成)に

子どもたちが鐘を突いている写真
良い音を出すコツは撞木の重みだけで突くこと。子どもたちも上手に響かせる

集落の写真
夕方は、集落に響き渡る鐘の音に、役場から流れる『夕焼け小焼け』の「山のお寺の鐘が鳴る」のメロディーが重なる

取材を終えて

  愛着ある常桂寺で、鐘突きを緩く長く続けるカネナリ会と、感謝しながら活動を見守る住民。突く人の個性も感じさせる鐘の響きは、この地域をつなぐアイテムの一つなのだと感じました。(か)



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