快挙の起点は初の登録制度
5年に1度、全国の優秀な和牛を一堂に集めて、改良の成果や質を競う「全国和牛能力共進会(全共)」。2017年(平成29年)に宮城県で開催された第11回全共で「白鵬85の3」の産子が肉質日本一に輝きました。和牛飼育頭数が全国の1%にも満たない鳥取県のこの快挙は「鳥取和牛」の知名度を高め、近年では高価格で取引されています。
県の和牛飼育の歴史は江戸時代にさかのぼります。大山の博労座周辺で開かれた牛馬市は、当時の日本三大牛馬市の一つとして繁栄。大正時代に始めた日本初の和牛の登録は育種改良の基礎を作りました。また、1966年(昭和41年)開催第1回全共の「肉牛の部・産肉能力区」で、県産種雄牛「気高」号が1等賞に。生涯9千頭の子孫、さらに国内ブランド牛の始祖としての名をも残した「気高」号。3年前、鳥取和牛を肉質日本一に導いた「白鵬85の3」もその血統です。
「日本一」を味わうのは今
全共で日本一の称号を得たことで高値で取引され、高級ブランドとしての定着に弾みがついた近年の鳥取和牛。ところが今年、新型コロナウイルスの感染拡大が和牛の消費動向に影響を及ぼしています。不要不急の外出自粛傾向から飲食店での需要減、インバウンド(訪日外国人観光客)の減少や輸出の停滞も。需要の減退から販売価格が低迷し、生産者が受ける打撃は深刻です。農林水産省は学校給食への提供や、外食産業・観光業などと連携した販売促進の支援により、消費を喚起。県内の小中学校や特別支援学校の給食でも、9月から11月にかけて、鳥取和牛を使った特別メニューがが提供されました。
多くの飲食店では、予約利用、小まめな換気や間仕切りなど感染予防対策に取り組まれています。また、店内での飲食のほか、テークアウトや自宅で気軽に料理できる商品販売、お得なキャンペーンも随時実施中です。今こそ地元産の「日本一の和牛」を味わってみませんか。
遺伝資源と産業の保護強化
有名ブランド牛がひしめく市場で鳥取和牛の価値を維持するには、優秀な牛の精液や受精卵などの遺伝資源を守る必要があります。県は今年10月、「鳥取県産和牛の保護及び振興に関する条例」を制定。その柱は▽全国で初めて「知的財産」と位置付けた県有種雄牛の遺伝資源の保護▽生産から流通・販売に至るまでの「和牛産業」の振興です。
既に進めている「使用許諾契約(下記参照)」の取り組みはこの条例を根拠に強化。肉質の良さを子に伝える遺伝資源の不正流通を徹底防止します。生産農家が丹精込めて育てた鳥取和牛が価値を保ったまま消費者に届き、それが関係者の経営安定につながる。条例制定は、このサイクルを実現させる一歩です。
牛枝肉卸売価格の推移(東京・和牛去勢A‐4)
出典 JA全農の畜産総合情報サイト「JACCネット」マーケット情報
|