「講座などのイベント」で絞込み
2023年7月12日
令和5年7月9日(日)、鳥取県立博物館講堂において、新鳥取県を学ぶ講座『鳥取県の鉄道敷設運動-山陰線の開通-』(第2回)を開催しました。講師は当館県史活用担当の石田敏紀が務めました。
講演では、鳥取県の鉄道敷設運動の始まりから明治45(1912)年に山陰線が開通するまでの経緯について、鳥取県東部の人びとの活動を中心に解説しました。特に、明治21年の山陽鉄道「兵庫-明石」間の開業を受け、翌22年に県東・中・西部でそれぞれ兵庫県、岡山県と結ぶ私鉄建設を求める運動が始まり、その後、官設鉄道の敷設請願運動に転換するが、鉄道で県内を東西に結ぼうという意識が低かったこと、明治27年の陰陽連絡線「姫路-鳥取-境」間の敷設決定は県民の要望を考慮したものではなく、兵士の移送、知事のいる県庁所在地を重視して行われたことなどを当時の新聞記事や鉄道会議、帝国議会での議員や政府関係者の発言を用いて紹介しました。
また、陰陽連絡線「姫路-鳥取-境」間の決定後も、鳥取県東部と兵庫県北部の人びとが連携して山陰線の敷設を請願したこと、明治39年に建設路線が山陰線「福知山-鳥取-今市(現、出雲市)」間に変更されると県東・中・西部でそれぞれ中国鉄道の津山まで結ぶ路線建設の請願運動が始まるなど、明治時代の鳥取県の人びとが自らの地域への鉄道敷設のために積極的に活動している姿を紹介しました。
来場者からは「県の東西を鉄道で結ぼうとする意識が低かった理由は何か」、「山陰新幹線建設についてどのように考えるか」などの質問が出され、講座終了後も「若桜線の八鹿までの延伸を当時の人びとは可能と考えていたか」、「法勝寺電車など、大正期の県西部の私鉄建設について」などの質問をいただきました。来場者は15名でしたが、鉄道史に関心を持つ方が多かったようです。
なお、第3回講座は、令和5年9月24日(日)午後2時から、米子市立図書館で開催します(定員60名〈要申込〉、申込先:米子市立山陰歴史館、申込受付開始:8月24日〈木〉午前9時30分)。第3回は、鳥取県西部の人びとの活動を中心に解説します。
講演の様子
公文書館 2023/07/12
in 県史活用担当,講座などのイベント
2023年7月6日
令和5年6月25日(日)、倉吉交流プラザ第1研修室において、新鳥取県史を学ぶ講座『鳥取県の鉄道敷設運動-山陰線の開通-』(第1回)を倉吉博物館と共同開催しました。講師は当館県史活用担当の石田敏紀が務め、明治時代の鳥取県中部の人びとの鉄道敷設に向けての活動を中心に解説しました。
講演では、鳥取県中部の鉄道敷設運動は1889(明治22)年の「倉吉-津山」間を結ぶ私鉄建設運動に始まること、翌年に株価が暴落すると私鉄建設を断念し、1891年に山陰地方で最も早く官営鉄道の敷設を政府に請願したこと、陰陽連絡線「姫路-鳥取-境」間の建設が1906年に山陰線「福知山―今市(現、出雲市)」間に変更されると、直ちに陰陽連絡線「倉吉-津山」間(のちの倉吉線)の建設に向けて動き、1912年に「倉吉-上井」間を開業させたことなど、倉吉町を中心とする中部の人びとの鉄道敷設への積極的な取り組みを解説しました。
また、こうした活動と矛盾する「住民が反対したから山陰線は倉吉町を通らなかった」という「伝説」が生まれた理由・背景については、負け惜しみだけではなく、1911年に倉吉線・倉吉駅(のちの打吹駅)の位置を巡る倉吉町内の人びとの対立〈倉吉停車場位置問題〉、1919(大正8)年以降の「由良-倉吉-上井(現、倉吉)」間を結ぶ路線を新設し、こちらを山陰本線としようとする倉吉町の人びとの主張と、上井、下北条での反対運動〈倉吉線本線化運動〉などの地域間の対立を、後の人が山陰線建設時の出来事と誤解したのではないかとの推論を紹介しました。
開催後のアンケートでは、「当時の倉吉の人びとも鉄道の有効性をよく理解していたということを知ることが出来て良かった」「倉吉線の開業が伯備、因美線より早かったことが驚きでした」などの回答をいただき、参加された方々には郷土の歴史に関する関心を一層高めていただいたものと思います。
なお、第2回講座を令和5年7月9日(日)午後2時から、鳥取県立博物館講堂で開催します(定員80名、申込不要、先着順)。次回は、鳥取県東部の人びとの活動を中心に解説します。
講演の様子
公文書館 2023/07/06
in 県史活用担当,講座などのイベント
2023年4月13日
令和5年3月25日(土)、令和4年度鳥取県災害アーカイブズシンポジウム「過去の災害情報をどのように活用するか―データベース・アーカイブの可能性―」をオンラインにて開催しました。
本シンポジウムでは、まず鳥取大学工学部教授の香川敬生氏から「山陰地方で発生した近現代の地震活動と長期評価」と題する基調講演を行っていただき、その後、関連報告として奈良文化財研究所主任研究員の村田泰輔氏から「考古資料による潜在する地震ハザードの見える化と歴史地震研究」、同研究所客員研究員の西山昭仁氏から「史料データを活用した地震研究―京都での歴史地震の事例―」を、それぞれご報告いただきました。
香川氏の基調講演では、強震動地震学の観点より、主に戦前から2016年の鳥取県中部の地震に至る、山陰地方での地震活動が分析されるとともに、それらを勘案した、この地域での今後の地震活動の見通しが示されました。
また、村田氏の関連報告では、現在、奈良文化財研究所において進められている、「歴史災害痕跡データベース」の構築に関する話を軸としつつ、複雑な被災の様相を明らかにしていくためには細かなデータ収集が必要であること、その際、発掘現場での調査から得られた情報、あるいは関係する調査報告書等の丹念な読み取り・評価といった地道な作業が求められること、そしてそれらの情報を総合したデータベースを活用することで、活断層についての評価の見直しなどにもつながり得ることなどが分かりやすく説明されました。
さらに西山氏の関連報告では、京都に被害を及ぼした3つの地震の事例が取りあげられ、歴史学的な観点からする丹念な史料の評価・分析を通じて、通説とは異なる、新たな震央の情報が浮かび上がってくるなど、文系の学問分野も防災・減災に大きな貢献をし得ることが示されました。
今回ご講演・ご報告いただいた先生はじめ、関係する有識者の方からのご意見を踏まえながら、いよいよ本格的に鳥取県災害アーカイブズの構築に取り組んでいきたいと考えています。
災害アーカイブズシンポジウムの様子(プライバシー保護のため、一部画像を加工しました)
公文書館 2023/04/13
in 県史活用担当,講座などのイベント
2023年3月17日
3月8日(水)、県内の図書館・美術館・博物館等の職員を対象に資料保存・修復研修会を行いました。講師は南部町在住の修復士・秦博志さん(修復工房Hata Studio経営)です。秦さんは、県内外の紙資料の修復を手がけられ、資料修復の講師などもされています。会場は県立図書館大会議室で、参加者は13名でした。
左から柳楽公文書館長、秦講師
研修の様子をご紹介します。研修では、(1)裏打ち、(2)繕い、(3)糸切れした和本の綴じ直しを行いました。
(1)裏打ち
秦講師に手本を見せていただき、それから各自が実習しました。糊の濃さは刷毛を持ち上げた時に1本の線になって垂れる程度で、想像より薄くて驚く参加者が多くいました。また、裏打ちする和紙は、将来的に剥がすことを考えて、資料より薄いものを用いますが、薄ければ薄いほど技術的に難しいため、公文書館が使用している中厚(3匁)のものを使いました。
裏打ちの実習風景
(2)繕い
裂けてしまった資料や、欠損部分のある資料の修復方法を習いました。裂けた部分は、典具帖紙という極薄和紙をあて、上から糊を塗ります。欠損部分は、バックライトボードの上に載せ、その上に修復用の和紙を重ねて水をつけた筆でなぞり、欠損部分と同じ形になるようにちぎります。形をそろえて補修するときれいに出来上がることが分かりました。欠損部分もできるだけ同じ厚さになるように補修するのが良いとのことでした。
繕いの実習風景
(3)糸切れした和本の綴じ直し(四つ目綴じ)
当初は、和綴じ本の作成を教えていただく予定でしたが、より実践的に、参加者が持ち寄った糸切れした和本の綴じ直しを行うことになりました。糸の長さは資料の対角線の3.5倍程度。既に4つの穴が開いているので、最初の穴と進む方向を間違えなければ、一筆書きのように穴に沿って針を進めていけば完成します。参加者の習得も早く、すぐにでも業務に生かせるように思いました。
和本の綴じ方を説明する秦講師
最後に参加した方の声を紹介します。
- 「紙資料の修復に適した糊や和紙の種類などを具体的に紹介いただき、大変参考になった」
- 「裏打ち実習を体験し、資材だけでなく不織布やハケなど作業に使用する道具の効果も実感し、とても有意義な研修会だった」
- 「裏打ちなどの資料の修復について、座学だけではなく、実習できたことがとてもよかった」
- 「実際に修復を体験できたことは、本格的な修復でなくとも、応急処置などでも応用できるのではないかと思った」
資料修復の方法について、インターネット上でも色々と見ることはできますが、実際に自分の手を動かして、指導を受けるのとは大違いです。日常業務に生かせる大変有意義な研修になったのではないかと思います。
ご指導いただきました秦博志さんには、厚くお礼申し上げます。
公文書館 2023/03/17
in 会議など,公文書担当,講座などのイベント
2023年3月9日
令和5年3月4日(土)、とりぎん文化会館の第一会議室において、新鳥取県を学ぶ講座『考古学研究による新しい歴史像』(第1回)を開催しました。講師は、鳥取大学地域学部准教授の中原 計先生で、「森と生きた人々-鳥取県の遺跡から-」というテーマでご講演いただきました。参加者は43名でした(本講座は、連続講座の第1回として、昨年9月19日に開催する予定でしたが、台風のため延期となり、この度、開催することとなりました)。
ご講演の中では、青谷上寺地遺跡など鳥取県内の遺跡から出土した木製品の用途、使用された樹種などについてお話いただきました。高坏、椀など複雑な形状の容器にはヤマグワが、大型の桶などの直線的な材を結合させたものはスギが多く用いられるなど、樹木の特性に合わせて製作する器種が選ばれたこと、破損した木製品はすぐに廃棄されるのではなく、修繕が行われるか、あるいは再加工されて別の用途に使われることが多かったこと(例:建築材を田下駄へ加工する)など、弥生時代の人々が木製品をどのように製作、使用していたかをわかりやすく解説していただきました。
また、木材利用は周りの植生に合わせて、それぞれの地で独自に育まれてきたものであり、人々が森に関わっていく中で各地の文化は生み出されたものであること、また杭などの土木用材は、集落近辺に生えていた木を利用したものと考えられることから、周辺の植生を知る手がかりになることなど、興味深いお話も多く、参加された県民の方々は、考古学や鳥取県の歴史に関する関心を一層深めていただいたものと思います。
令和5年度も新鳥取県史を学ぶ講座の開催を予定しています。テーマ・日程等は、後日、ホームページ等でご案内します。ご期待ください。
中原計先生による講演の様子
公文書館 2023/03/09
in 県史活用担当,講座などのイベント
2023年2月20日
令和5年2月12日(日)、倉吉交流プラザ第1研修室(本会場)と上小鴨コミュニティセンター(サテライト会場)において、「新鳥取県史を学ぶ講座(民俗)」をオンライン形式で開催しました。
今回は、神奈川大学日本常民文化研究所・客員研究員の石野律子先生に「国指定重要有形民俗文化財『倉吉の鋳物師(斎江家)用具及び製品』その調査を振り返る」をテーマに、昭和55年から同56年にかけて行われた「倉吉の鋳物師」調査の様子や、倉吉の調査によって全国に鋳物の調査が広まったこと、タタラの仕組みなどについて、わかりやすく解説していただきました。
参加者は両会場合わせて49名で、「原料となった鉄は、地元のものか」「倉吉千歯と鋳物師の関係」などの質問をいただきました。
講座の様子
公文書館 2023/02/20
in 県史活用担当,講座などのイベント
2023年2月7日
令和4年7月17日(日)、「占領期の鳥取を学ぶ会 令和3年度活動報告会(第2部)」をオンラインで実施しました。
小山富見男さんは『戦後の食糧危機と鳥取県&GHQ』と題し、鳥取県立公文書館所蔵の歴史的公文書『供出関係綴(食糧)』(農政課)や統計資料を調査した成果を発表されました。米の供出、気象災害(冷害と風水害など)による戦後の全国的な不作、海外からの引揚者、ヤミ取引等、戦中戦後の食糧事情についての報告でした。また、同綴りの中で発見された文書(『Letter of Commendation』(昭和22年2月15日発 第46号))は、鳥取軍政隊から県知事に宛てた英文資料で、当時の鳥取県が全国的にみても優秀な供出状況であることを称えるものでしたが、この表彰文の中で鳥取県の事を“this fair prefecture”と表記し、「…供出100%の目的に向ひかくて人口集中地方の食糧不足を救う意味に於て、『この晴朗なる鳥取県』を全国供出第一位たらしめるべく努力すべし」と称賛激励していると紹介されました。
公文書館の担当者(杉内)からは、当時の日本海新聞の記事から県内の米穀検査員の供出四方山話(よもやまばなし)として各地域の苦労話などを披露しあった座談会の記事を紹介しました。
最後に特別報告として、『進駐軍接収住宅のトイレ』の題目で鳥取大学理事・副学長の細井由彦さんに報告していただきました。
鳥取市西町の米軍情報部の事務所兼住宅として接収されていた木村家に当時設置されていた浄化槽(30人槽)跡で、この度、その敷地の改修をすることになったため、鳥取市歴史博物館の横山学芸員、石井学芸員、会員の西村さんとで昨夏、掘り起こし調査を実施しました。
掘り起こしてあらわになった浄化槽の専門的な調査は鳥取大学の細井さんに行っていただき、今回の特別報告の運びとなりました。まだ浄化槽のほとんど普及していなかったと思われる時代に「第一腐敗槽」、「第二腐敗槽」、「予備ろ過槽」、「酸化槽」、「消毒槽」からなる本格的な浄化槽が作られていたこと、またそれぞれの槽の役割等を講義されました。当時、浄化槽を作る必要性に迫られて職人が技術を習得し、その後の鳥取の下水道の発展へとつながる一助になったとも考えられるかもしれないと受講者からも意見が出ました。
一般報告では、行政資料、統計資料、そして当時の新聞記事など、いくつもの資料を重ね合わせることで、戦後間もない頃の鳥取県の姿があらわになりました。
また、特別報告で、現存する貴重な当時の遺構を、今回のように失われる前に調査することで、現在に至るまでの歴史の軌跡をたどることが出来ました。古い町並みにはまだまだ未発掘の発見がある可能性を感じました。
「占領期の鳥取を学ぶ会」では月例会で「鳥取軍政部マンスリーレポート」の翻訳の活動を続けています。ご興味のある方は是非御参加下さい。
問い合わせ先:鳥取県立公文書館県史活用担当
(〒680-0017鳥取市尚徳町101番地 0857-22-4620)
公文書館 2023/02/07
in 県史活用担当,講座などのイベント,調査
2023年2月7日
令和4年6月18日(土)に、「占領期の鳥取を学ぶ会 令和3年度活動報告会(第1部)」をオンラインにより開催しました。会員3名が報告しました。
澤田晶子さんは、『鳥取軍政レポートの翻訳―その特徴と課題-』というテーマで翻訳学の視点から分析した鳥取軍政レポートの翻訳の特徴や、他県の軍政レポートの翻訳状況などを発表されました。軍政レポートでは受動態が多用されており、行為の主体が曖昧であるということの他、当時の日本の固有名詞を英訳されたものの逆翻訳に多大な調査が必要であること、また、他県の軍政レポート翻訳の取り組みでは、県史に掲載がある例に加えて、論文で引用される例も見られることなど、報告をされました。歴史的文書である軍政レポートの翻訳を様々な分野で活用される可能性についても言及されました。
森悟さんは『占領期を生きた人々:山根敏子、足羽喜代子、平川唯一』という題目で発表されました。日本人女性初の外交官試験合格者である山根敏子さんが27歳の時1年間鳥取で働いていたお話、美保基地で通訳・翻訳をして働いていた足羽喜代子さんが、当時基地内での洋装を求められた際に手作りして着ていたアッパッパーという服のエピソード、NHK朝の連続テレビ小説『カムカムエブリバディ』でも紹介されたラジオ英会話の最初の講師である平川唯一さんの様々なエピソードや実際の放送の録音など、貴重なお話や資料を提示されました。
また西村芳将さんは、『各国公文書館の占領期資料の調べ方』というテーマで報告をされました。コロナ禍で今までよりぐんと取り寄せやすくなった各国の図書館や博物館資料、国立国会図書館の蔵書について、求める資料にたどり着くにはどのように検索をかけていくと良いか、請求記号の構成を知って検索を絞っていく方法など、プロジェクターを使って実演さながらに分かりやすく紹介されました。
それぞれが「占領期の鳥取を学ぶ会」の成果に各自の研究・考察を絡めて興味深い報告をされました。
官民連携の取り組みとして鳥取県立公文書館と鳥取市歴史博物館やまびこ館の共催事業で開催している「占領期の鳥取を学ぶ会」ですが、今回の「活動報告会」では、県民の方と「鳥取軍政レポート」という資料を読み解く中で、会員がそれぞれ自身の研究や得意分野、体験を持ち寄る事でとても肉厚な翻訳となるという事を再認識できたように思います。
報告会の様子
次回は7月17日(土)の「令和3年度活動報告会(第2部)」についてご紹介します。
「占領期の鳥取を学ぶ会」では月例会で「鳥取軍政部マンスリーレポート」の翻訳の活動を続けています。ご興味のある方は是非御参加下さい。
問い合わせ先:鳥取県立公文書館県史活用担当
(〒680-0017鳥取市尚徳町101番地 0857-22-4620)
公文書館 2023/02/07
in 県史活用担当,講座などのイベント,調査
2022年11月14日
令和4年11月6日(日)、県立博物館講堂において、新鳥取県史を学ぶ講座『考古学研究による新しい歴史像』(第3回)を開催し、米子市経済部文化観光局文化振興課専門官の中原斉先生に「白鳳・天平文化の華-因幡・伯耆の古代寺院-」というテーマでご講演いただきました。
ご講演の中では、因幡・伯耆の豪族が仏教文化を速やかに受容したこと、寺院の造営にあたっては建築・造像・装飾などに最新技術が用いられていたこと、古代寺院の多くは平安時代中・後期頃に消失したことなど、鳥取県内の古代寺院の歴史や特徴について、わかりやすく解説していただきました。
また、軒丸瓦の蓮華文様のキズによって、同じ笵型(文様の型、粘土を押し当てて同じ文様を大量に制作する)から作られた瓦を判別することができ、そのキズの形状や数から瓦の作成順、さらに同笵瓦の出土する寺院の先後関係を知ることができることや、上淀廃寺の塔跡では、焼けた瓦の層の下に焼けていない瓦の層があることから、伽藍炎上の前にすでに瓦が堆積するほど荒廃していたと考えられることなど、興味深いお話も多く、参加された方々には考古学や鳥取県の歴史に関する関心を一層深めていただいたものと思います。
なお、開催を延期しておりました第1回の講座「森と生きた人々-鳥取県の遺跡から―」(講師:中原計氏〈鳥取大学地域学部准教授〉)を、令和5年3月4日(土)午後1時30分から、とりぎん文化会館の第1会議室にて開催します(定員80名、先着順)。参加希望の方は、専用フォームからお申し込みください。
中原斉先生による講演の様子
公文書館 2022/11/14
in 県史活用担当,講座などのイベント
2022年11月7日
公文書館では破れや虫喰いなど修復を必要とする紙資料について、軽易なものは職員が修復作業を行っています。
そのスキルアップのため、10月26日、27日の両日、南部町在住の修復家・秦博志さん(Hata Studio経営)にお出でいただき、講義と実務指導をしていただきました。
講師・秦博志さん(修復家・修復工房Hata Studio経営)
はじめに、紙の「糸目」と「簀の目」(すのめ)について、それぞれの特徴や、特徴を生かした製本の仕方などのお話を詳しく教えていただきました。紙の厚さについても様々あり、修復をする際に、和紙を使い分けると仕上がりも美しいなどのお話や、欠落部分を先に補修してから裏打ちをするなど一手間かける方法なども伺いました。
さらに、紙のPHを測る方法や、脱酸の方法なども講義していただきました。
続いて、製本の方法のひとつとして、「くさり綴じ」を習いました。「くさり綴じ」は本来、綴じの初心者が習う方法ではないらしいのですが、既に裏打ちをした429丁のバラバラの簿冊はかなり厚みもあり、特別に教えていただける事になりました。7つに分けてそれぞれを仮綴じし、穴を開けてから全部合わせて4本の針で綴じていく方法です。厚みがあるので、ずれないように穴を開けるのが大変でした。
さらに、「三つ目綴じ」の方法を教えていただきました。「三つ目綴じ」は穴も3カ所なので比較的簡単です。解いたりまた綴じたりも容易にできるので、すぐにも使えそうな方法でした。
「くさり綴じ」の完成した資料
最後に参加した職員の感想を紹介します。
- すべて裏打ちをすると厚くなってしまうため、欠落部のみ補修するやり方など、細かい部分まで教えていただき大変勉強になった。今後の業務に少しでもいかせたらと思う。
- 見学時には出来そうだった作業も、実際に行ってみると、非常に繊細で細やかな作業がたくさんあり、簡単ではないことを痛感した。
- 綴じを教えていただくのは初めてで、とても勉強になった。また、元の状態に戻せる補修を心がけることが大切と言われ、自分の作業のやり方を見直したいと思った。
- 資料の状態によって適切な方法が異なるということ、修復するときはあとからでも元の状態に戻せるようにすることなど、保存・修復にあたっての大切な考え方、資料を適切に保存するための技術を教えていただき、学びの多い時間になった。
少人数での研修だったため、細かい部分まで詳しく教えていただけて、大変有意義な研修会となりました。
御指導いただきました秦博志さんには、厚くお礼申し上げます。
公文書館 2022/11/07
in 公文書担当,講座などのイベント