認知症になっても地域で安心して暮らせる まちづくりを目指して
2023年10月12日
【監修】鳥取大学医学部認知症予防学講座(寄附講座)浦上克哉教授 認知症の新しい薬(レカネマブ)が国に承認され、期待が高まっています。この新薬はアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度の認知症の方が投与対象ですが、これらすべての人が使えるわけではありません。 なぜ新薬は一部の人でしか使えないのか、新薬が使えない人はどうすればいいのかを説明します。分かりやすいように具体例(認知症が心配で、物忘れ外来を受診した4人)で説明します
Aさんは近頃、物忘れが多くなってきたような気がして、心配になって自ら受診しました。一方、Bさん・Cさん・Dさんは自分ではあまり気にしていなかったのですが、家族が心配して病院に連れてきました。 認知症を専門とする医師が問診や検査をしたところ、Aさんの物忘れは年相応であり、認知機能は正常と判断されました。BさんとCさんはMCIと診断され、Dさんは軽度の認知症と診断されました。 Bさん・Cさん・Dさんは認知症の新薬(レカネマブ)を使ってみたいと医師に言いましたが、それを使うためには精密検査(脳脊髄液検査やPET検査)を受ける必要があります。精密検査の結果、BさんとDさんの脳にはアミロイドβがたくさん蓄積していましたが、Cさんはそれほど蓄積されていませんでした。 BさんとDさんはレカネマブを投与することで、脳内のアミロイドβを除去して、認知症への進行や認知症の悪化を防ぐことができる可能性があります。 しかし、レカネマブは点滴薬なので2週間に1回の通院が必要です。Bさんは通院可能でしたが、Dさんは頻繁に通院するのが難しいなどの理由があったので、レカネマブ投与を断念することにし、従来の薬(アリセプトなど)で治療することにしました。 Bさんはレカネマブの投与を開始しました。レカネマブの臨床試験では、2週間ごとに1回、18ヶ月間にわたり点滴投与を続けることにより、レカネマブを投与していない人と比べて、記憶、見当識、判断力その他の認知機能低下が27%抑制されたと報告されています。これは、症状の進行をおよそ7.5カ月遅らせる効果に相当します。また、自立して生活する能力の改善も認められています。Bさんは症状の改善を期待しながら、2週間に1回通院しています。
例示した4人のうち、新薬が使えたのは1人だけで、その人も本当に効果が得られるのかは分かりません。3人はさまざまな理由で新薬が使えませんでした。せっかく早めに病院に行ったのに、ガッカリしますよね。 しかし、この4人に共通して取り組めることがあります。それは認知症の発症や進行を予防するための活動(運動・知的活動・コミュニケーション)です! 鳥取県と日本財団が共同で開発した「とっとり方式認知症予防プログラム」は、運動・知的活動・コミュニケーションを効果的に組み合わせた内容を1回あたり2時間(週1回)半年続けて行うことで、MCIの人の認知機能や身体機能を向上できることが科学的に証明されています。 認知機能が心配なAさんも、レカネマブが使えなかったCさん・Dさんも、そしてレカネマブ投与を受けているBさんも、運動・知的活動・コミュニケーションを組み合わせた認知症予防をすることで恩恵が得られます。 新薬で恩恵を受けられる人は一部に限られますが、運動・知的活動・コミュニケーションはすべての人が恩恵を得ることができる可能性が高いものです。この機会に改めて従来の認知症予防の重要性を理解していただけましたら幸いです。 ※レカネマブについてはこちらの記事(認知症の新しい薬を活用するためにも、認知症予防が大切です!) でも解説しています。
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長寿社会課 2023/10/12 | コメント(0)
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