創意工夫が人の輪つなぐ ~頂く食材、無駄なく料理~
料理本『五風十雨』 著者
藤枝 由紀さん
1968(昭和43)年に琴浦町八橋の専證寺に嫁いだ。近隣や檀家から持ち込まれる多くの食材を無駄にせず、おいしく食べられるよう工夫し、集まる人たちに振る舞う。こうして生み出した料理をまとめた本『五風十雨』を地域の女性らと共に出版。
※五風十雨とは、5日に1度風が吹き、10日に1度雨が降る意味で、天候が順当なこと。転じて、世の中が太平なこと。
藤枝さんの作る料理を50から70代の女性らと共にまとめた本
大量の食材が届き、大変では
寺ということもあるのでしょうが、とにかくたくさん頂きます。山菜や旬の野菜はもちろん、イカやイノシシなども。黙って軒先に置かれることもありますが、その食材や置き方で「主」がわかるのが田舎の面白さですね。もともと料理が好きだったので、規格外の大きさも量も楽しいと思えました。
工夫の例をいくつか
成長し過ぎた養殖イワナは、サケ科でマスの近縁種ということをヒントに、身は手製の梅ジャムと煮て、卵はしょうゆ漬けに。また、寺では仏前に供えるご飯が多い。試行錯誤の末、加熱するとのりになる性質を利用し、スープのとろみに。野菜の皮やへたも無駄なく使えるスープはよく作ります。
本のタイトルについて
私が子どもの頃は終戦直後で、食糧のありがたさが身に染みています。工夫で耐え忍んだ時代でした。おいしいものがいただけるのは平和だからこそ、という思いを込めました。
今後、食を通じた輪は
頂いた食材を使い創意工夫を凝らした料理を、集まった人に食べてもらい、食べた人がまた別の食材を持って訪ねられます。こうして、嫁いでから50年余りの間に、つながった人の輪がさまざまに変化。これからも食を通した出会いを楽しみながら、料理に励みます。
タケノコ、玉ネギ、キャベツ、アゴ(トビウオ)などを使った春の膳
藤枝さんの料理をよく知るホストファミリーの要望で、フィンランドからの留学生に日本料理を振る舞う
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